行政機関や食品企業における食品防御の具体的な対策に関する研究

文献情報

文献番号
201723012A
報告書区分
総括
研究課題名
行政機関や食品企業における食品防御の具体的な対策に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-012
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座 )
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では既存研究を発展させ、大規模食品工場向け食品防御ガイドラインの充実・精緻化、および同ガイドラインの運搬・保管版の試案の検討を目的とする。
また、保健所や地方衛研等で的確に対処していくための対策の検討、食品への意図的な混入に用いられやすい化学物質・生物剤に関する人体(血液・尿等)試料を用いた検査手法の標準化に向けた検討、過去に発生した意図的な食品汚染の事件の分析等を目的としている。
研究方法
今年度は、以下に示す主に4つの項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文・書籍等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。また食品製造施設(1箇所)、物流施設(1箇所)の実地調査を実施し、ガイドラインにおける課題を検討し修正点の有無等について確認を行った。
(1)米国における食品防御対策の体系的把握,
(2)地方衛生研究所での「人体(血液・尿等)試料の検査手法」の標準化
(3)食品防御ガイドラインの改善検討と故意による毒物や異物混入に対する予防的対策の検討
(4)わが国の食品製造業における食品防御対策の現状調査
結果と考察
(1) 米国における食品防御対策の体系的把握
米国FDAにおいて平成29年度に講じられた主な食品テロ対策としては、平成29年(2017年)8月26日に「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」のガイダンス(小規模事業者向け)が公表されたことがあげられる。
(2)地方衛生研究所での「人体(血液・尿等)試料の検査手法」の標準化
昨年度検討した取扱方法に基づいた模擬訓練の実施を受け、(1)白衣や靴の取り扱い、(2)実験操作手順の掲示など8項目の対応を検討し、「理化学試験における人体試料等安全管理要綱(案)」、「人体試料等管理区域運営要領(案)」を修正した。
(3)食品防御ガイドラインの改善検討と故意による毒物や異物混入に対する予防的対策の検討
食事提供施設(1箇所)、物流施設(1箇所)を対象に、実際に施設を訪問し、米国で開発されたCARVER+Shock手法を念頭に置いた脆弱性評価と、製造工場版の「食品防御対策ガイドライン」の改善、及び同ガイドラインの運搬・保管版の試作の検討を行った。さらに今年度は、「食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)―意図的な食品汚染防御のための推奨項目―」を分かり易く改訂するとともに、食品の流通・提供の流れに沿って、運搬・保管施設、調理・提供施設に係る食品防御ガイドラインの試作版(案)を作成した。
(4)わが国の食品製造業における食品防御対策の現状調査
企業を対象としてアンケート調査、聴き取り調査を行った結果、食品防御対策は大手企業が先行しており、中小企業での取組みが遅れていたことが分かった。現地視察結果からは、国内の食品製造現場では、食品防御対策に取組む姿勢はあるものの、工場の建設時期や、当該食品企業が抱える課題等の違いにより、その現状にはばらつきがあることが明らかとなった。
結論
(1)平成29年度における米国の食品テロ対策の概要を整理するとともに、これを体系的に整理できた。
(2)健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研の理化学検査担当における人体試料の取扱いについて参考となるべく、川崎市健康安全研究所における要綱等の案を作成できた。
(3)ガイドライン(製造工場向け)を分かり易く改訂するとともに、食品の流通・提供の流れに沿って、運搬・保管施設、調理・提供施設に係る食品防御ガイドラインの試作版(案)を作成した。
(4)今後は中小企業を中心に食品防御対策の取組みが進んでいない食品企業に対して、より一層の普及・啓発が求められる。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-29
更新日
2018-09-13

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201723012B
報告書区分
総合
研究課題名
行政機関や食品企業における食品防御の具体的な対策に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-012
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座 )
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 高谷 幸(公益社団法人日本食品衛生協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品テロによる被害から国民を守る視点は、テロの未然防止と円滑な事件処理でありフードチェーンを構成する食品工場や物流施設における食品防御が必要不可欠となる。既存研究を発展させ平成24年度に作成した大規模食品工場向け食品防御ガイドラインの充実・精緻化を図るとともに、中小食品工場向けおよび物流施設向けのガイドラインを作成することを目的とする。また、食品への意図的な異物混入により健康被害が発生した場合は、人(患者)に対する検査も迅速に行う必要があり保健所や地方衛生研究所での対応が不可欠であるが検査のための実験手法が確立されていないと思われるため、それらの機関における状況の現状把握を行う。
研究方法
以下に示す主に5項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文・書籍等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。
(1)海外(主に米国)における食品防御対策に関連した法制度等状況調査
(2)食品への毒物等混入事件時における保健所や行政機関における円滑な事件処理に向けての検討
(3)食品への毒物等混入事件時における衛生研究所での「人体(血液・尿等)試料の検査手法」の標準化
(4)食品防御ガイドラインの改善検討と故意による毒物や異物混入に対する予防的対策の検討
(5)食品の市販後調査(PMM)手法の検証
結果と考察
(1)米国の食品テロ対策において、「食品に対する意図的な混入に対する緩和戦略の最終規則」が公表され、食品関連事業者が作成する食品防御計画の具体的な内容や規則の遵守日が決定したこと、また「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」ガイダンス(小規模事業者向け)が公表されたことが重要事項として挙げられる。
(2)食品防御対策の発生後の対応については、食中毒の発生時対応と大きな差はなく、食中毒マニュアル・食中毒処理要領に基づき、既に各自治体での体制整備が進められている一方で、未然防止に係る対応については、事業者の自主的な取組に係る事項であると考えられるため、今後、事業者の自主的な取組を進めるにあたっては、具体的な業種(製造、加工、調理等)や取り扱う食品の種類、さらに国際大会など食品の提供するイベントの規模等に応じた対策モデルを提示し、具体的な対応方法をわかりやすく提示していくことが必要であると考えられる。
(3)過年度研究において実施した全国の地衛研へのアンケート調査結果より人体試料の検査実施に対する問題点が次の2点 1.感染性試料としての取扱いを要する可能性 2.食品試料や環境試料とは異なる成分組成や標準品(代謝物を含む)の入手について が挙げられた。
後者は、検査目的物質のヒト体内挙動や検査方法の調査及び検討を要する点で早期対応が困難となっているが、前者について平成27年度から取扱手法についての確立を検討し地衛研モデルの一つとして、川崎健康安全研究所における対応を検討し、要綱等の案を作成した。本対応は、健康危機管理事象時の人体試料の取扱いに加えて、未知物質の取扱いにも応用できると考えられる。
(4)3年間に渡り現地調査を重ねた結果、今後「食品防御対策ガイドライン」に反映できる可能性のある内容として21項目が考えられた。引き続き現地調査を継続していく中で、以上の課題が共通的に見られるようであれば、適宜ガイドラインに反映していく。わが国の食品製造業における食品防御対策の現状調査については、食品防御対策は大手企業が先行しており、中小企業での取組みが遅れていたこと、国内の食品製造現場では、食品防御対策に取組む姿勢はあるものの、その現状にはばらつきがあることが明らかとなった。
(5)春季を対象期間とし、下痢と嘔吐の症例数予測に焦点を当てて検討した。将来的な有症状者数の予測モデルを開発するためには、自己相関以外のモデルを用いて予測モデルを作成する必要がある。今後は、気温や湿度といった別のパラメータを組み込んだ将来予測モデルを検討していく必要がある。
結論
平成27・28年度に発生した調理・加工施設等における異物混入について、保健所や行政機関における対応状況をとりまとめるとともに、当該事例を踏まえた課題と自治体での対応を整理することができた。健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研の理化学検査担当における人体試料の取扱いについて参考となるべく、川崎市健康安全研究所における要綱等の案を作成できた。また今後は中小企業を中心に食品防御対策の取組みが進んでいない食品企業に対して、より一層の普及・啓発が必要であることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-29
更新日
2018-09-13

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201723012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
いわゆる「性善説」を前提としている食品安全の基準に故意による毒物混入を踏まえた基準を提案しており、斬新な成果と言える。また対応の難しい問題点を「製造」「流通」「提供」の3つに分けて分析整理した点も大きな成果と言える。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
『食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)』の改訂
『食品防御対策ガイドライン(運搬・保管施設向け)』、『食品防御対策ガイドライン(調理・提供施設向け)』の試作版(案)

その他行政的観点からの成果
2020年東京オリンピックパラリンピックへの対策に向けて現在作成されているガイドラインが引用されている。
その他のインパクト
伊勢志摩サミットのテロ対策の一環としてこのガイドラインが使用された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akie Maeyashiki, Manabu Akahane, Hiroaki Sugiura et al.
Development and Application of an Alert System to Detect Cases of Food Poisoning in Japan
PLOS ONE , 2016 (11(5)) , e0156395-  (2016)

公開日・更新日

公開日
2018-05-25
更新日
2022-06-10

収支報告書

文献番号
201723012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 905,287円
人件費・謝金 3,647,353円
旅費 227,611円
その他 5,219,758円
間接経費 0円
合計 10,000,009円

備考

備考
支出の「合計」には 自己資金9円を含む

公開日・更新日

公開日
2019-03-18
更新日
-