文献情報
文献番号
201723007A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国で優先すべき生物学的ハザードの特定と管理措置に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 紺野 勝弘(富山大学・和漢医薬学総合研究所)
- 豊福 肇(山口大学・共同獣医学部)
- 泉谷 秀昌(国立感染症研究所・細菌第一部)
- 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
- 菅野 陽平(北海道立衛生研究所 食品科学分析)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、輸入食品の増加に伴う検査品目数の急激な増加に対応して、食品や輸出国リスクの程度に応じた検査体制の構築を行うための研究である。微生物の調査研究から食品と諸外国のリスク管理体制のランク付け、食中毒アウトブレイクに対応するための菌株情報収集と解析を、また、植物性自然毒の国民への情報発信のためのデータベース更新、遺伝子鑑定法の開発改良を行った。
研究方法
微生物関連では、Hazardの特性、米国及びEUでの輸入時の違反データ、国のNFCSのperformance、喫食、曝露データ等を網羅した半定量モデルを構築した。Salmonella、Listeria monocytogenesについてモデルを適用した、赤痢菌Shigella sonneiの分子疫学解析を重点的に進めた。本菌はmutilocus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)による解析が有用であることが本研究で示された。輸入例および国内例関連株のデータ収集および蓄積を行った。リステリアについて、研究室保有食品株データの蓄積と、国内発生散発事例由来株の解析を行った。自然毒関連では、有毒植物の簡易遺伝子鑑別法PCR-RFLP法を実際の中毒原因植物試料に適用し、本鑑別法が有効であることを確認した。またPCR-RFLP法で確定できない場合をのために、有毒植物5種の確定検査用に感度と特異性を有したリアルタイムPCR法の確立を行った。きのこに関して、LAMP法を利用したツキヨタケおよびクサウラベニタケの迅速かつ簡便な検査法の構築について検討した。
結果と考察
リスクに応じた輸入食品のモニタリングを可能にするために、ランク付けを行った。食品由来疾患とハザードに関する論文サーチを行い、国ごとのデータの重み付けや第三者認証であるGlobal GAP、Canada GAP及びISO 22000の認証数データ等を追加した。赤痢菌の系統分析について、MLVA-minimum spanning treeにあてはめるとMST上で各系統に合わせて分布することが明らかとなった。MLVAデータから系統を推測することが可能であることが示唆された。リステリアの菌株をPFGEによる解析を実施した結果、患者由来株は特定のクラスターに高い相関をもって分類されることが示された。患者の喫食歴と食品由来株の型別が一致したものが見られ、散発事例の原因の推定が可能となった。中毒事例が多い有毒植物5種について、特異性が高いリアルタイムPCR法を開発した。本方法は、有毒植物に高い特異性を示し、十分な感度を有していることから、毒植物の食中毒発生時に迅速かつ簡便に有毒植物を同定できると考えられた。ツキヨタケについてループプライマーを用いたLAMP法により、食用キノコに交差性を示さず特異性の高い方法を構築できた。
結論
リスクが高い国から輸入される食品の検査を強化することにより、食品や輸出国リスクの程度に応じた検査体制の構築が可能になる。赤痢菌やリステリアについて、グローバル化により、食中毒菌により汚染された食品が入ってくる機会も増加していると考えられる。今後も海外の発生状況の情報収集が必要である。また、国内の監視体制の整備のため、分離菌株の解析手法の検討ならびにデータベースの拡充を図る必要がある。中毒事例が多い有毒植物5種について、特異性が高いリアルタイムPCR法を開発した。ポータブルLAMP装置の利用により、DNA抽出からLAMP法によるツキヨタケの判定まで屋外で実施可能であることを示した。
公開日・更新日
公開日
2018-04-26
更新日
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