繊維状粒子の自動測定装置の精度の検証及び作業環境における測定手法

文献情報

文献番号
201722017A
報告書区分
総括
研究課題名
繊維状粒子の自動測定装置の精度の検証及び作業環境における測定手法
課題番号
H29-労働-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小野 真理子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、RCFエアロゾルを様々な現場においてばく露評価するために、繊維状物質自動測定装置や他のリアルタイム測定装置を利用する方法を検証する。そのために、繊維状物質のエアロゾルを安定して連続発生して、自動測定装置の応答について情報を得るとともに、ポータブル型の粉じん計や粒子物質測定用オプティカルセンサーの応答を確認し,実際の現場での応用法を確立することを目的とする。RCFは有害であるため、基本的な実験は有害性の低い繊維状物質を用いて実施する。初年度は繊維状物質エアロゾルの安定発生法のプロトコルを、低有害性の繊維状物質であるグラスウールを用いて確立することを目的とする。
研究方法
繊維状物質のエアロゾルを安定して連続発生するための検討用試料として、グラスウール粉体(日本繊維状物質研究協議会)を用いた。エアロゾルの連続発生法として、ボルテックスシェーカー法による乾式発生法を採用し、発生濃度と粒径分布の長時間変動を評価した。コントロール可能なパラメーターは、試験管内の通気流量、封入する粉体試料の量、ボルテックスシェーカーの撹拌回転数、及び粉体試料にビーズを入れることによる撹拌改善措置であるが、本年度は、その内の通気流量、粉体試料量及び撹拌改善措置を変えて、繊維状粒子の発生濃度および粒径分布の時間変動を測定した。
発生粒子の濃度および粒径分布の時間変動の測定には、光散乱式エアロゾル粒子カウンターとエアロダイナミック粒子サイザー(APS)を使用した。なお、測定対象が高濃度である際に生じる測定装置のコインシデントロスの影響を低減するため、必要な場合には希釈した。発生したエアロゾル粒子の形状は走査電子顕微鏡により観察した。
結果と考察
各発生条件における繊維状粒子は、撹拌開始後10~20分後に最大濃度を示し、その後は減少した。数時間経つと、時折散発的な高濃度イベントが見られるものの、安定して発生した。ステンレスビーズを加えると撹拌改善により初期の発生濃度は高い値となったが、1時間後にはビーズなしの条件と同程度まで減少した。
APSの測定による空気力学径にもとづいた発生初期の粒径分布のモードは、条件によらず約1.3~1.6 μmであり、単峰性分布で分布形状もよく似ていた。長時間測定した場合の粒径分布は、モードが1.1~1.3 μmに小さくなり、分布形状も7~8 μmのところで傾きの角度が異なっていたが、時間変化による分布形状への影響は顕著ではなかった。二酸化チタンとは異なり、時間とともに粒径が大きくなるような事象は観察されなかったが,粒径分布はシャープではなかった。
繊維の直径は0.2 μmから10 μmまで広範囲であった。粒子のアスペクト比は、比の大きな細い糸のようなものから1に近いものまでまんべんなく見られた。また、繊維直径が太くなり10 μmに近づくとアスペクト比の大きなものはほとんど見られなかった。製品繊維のサイズ分布に依存して、繊維径や繊維長に分布が見られることが電子顕微鏡観察から明らかであった。本研究で使用したグラスウールは繊維径がサブミクロン以上と太く、また、直線性が高く枝分かれが少なく、絡まるような形状ではないため、長時間撹拌しても粒子の凝集は顕著でなく、単体の粒子として発生するため粒径分布が変わらずに保たれたと考えられる。
結論
繊維状物質の自動測定装置の最大繊維数濃度は1~10個/cm3である。実際の作業環境では管理濃度以下の範囲で測定の正確さが求められる。作業環境の状況を考慮すると、0.1~10 f/cm3程度の範囲で装置の検証を行うことになる。現在のエアロゾル発生方法では100個/cm3以上の濃度で発生可能であるが、今後は低濃度側の供給という点において、適切な希釈方法を検討して、要求される濃度でのエアロゾルにより自動計測装置の評価をする必要がある。特にRCFを用いて実験する場合には、その有害性を考慮して、希釈前でも低い濃度となる発生法を検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201722017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
2,186,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,814,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,266,322円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 920,000円
合計 2,186,322円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-