じん肺エックス線写真による診断精度向上に関する研究

文献情報

文献番号
201722016A
報告書区分
総括
研究課題名
じん肺エックス線写真による診断精度向上に関する研究
課題番号
H29-労働-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
芦澤 和人(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 岸本 卓巳(岡山労災病院 呼吸器内科学)
  • 荒川 浩明(獨協医科大学 放射線診断学講座)
  • 大塚 義紀(北海道中央労災病院 呼吸器内科学)
  • 加藤 勝也(川崎医科大学 放射線医学(画像診断2))
  • 高橋 雅士(医療法人友仁会 友仁山崎病院)
  • 仁木 登(徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 理工学域)
  • 野間 恵之(天理よろづ相談所病院 放射線部 診断部門)
  • 本田 純久(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 五十嵐 中(東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学)
  • 林 秀行(諫早総合病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は現在じん肺診査に用いられている「じん肺標準エックス線写真集」(平成23年3月)フィルム版及び電子媒体版の評価を行い、新たな症例を追加することで標準写真の取りまとめを行うこと、同時にデジタル画像における適切なモニター診断を提示することにある。また、平成26年〜28年度の厚生労働科研究費芦澤班を継続し、じん肺健診における胸部CTの課題を整理し、今後の施策を検討するうえで重要な基礎資料を提示する。他方、粉じん患者の新規発生を抑えるため、粉じん労働者の防じんマスク効率やじん肺規制の諸外国の動向を調査・検討する。
研究方法
「じん肺標準エックス線写真集」における症例の偏りなどを検討する。また、単純X線デジタル画像を種々のビューワで読影しモニター診断の最適化を行う。地方じん肺診査の現状把握のためアンケート調査を行う。また、低線量CT画像を前向きに収集し、じん肺のPR0/ 1と1/ 0の鑑別に焦点をおき、CTにおける粒状影の定量化、CAD(コンピューター支援診断)の応用を試みる。一次予防に関しては、より効率の良いマスク施行の調査を行う。さらに介入予防による費用対効果の解析を行う。
結果と考察
「じん肺標準エックス線写真集」が作成される過程で確認された基本的合意事項・課題を議事録を用いて検証し、電子媒体版の必要要件や画像掲載の基本方針などが確認できた。アナログ版と電子媒体版で、0型、2型、3型では視覚的にほぼ整合性が保たれているが、1型ではやや整合性に乱れが認められた。
モニター診断に関しては、2社× 2種(1M、3M)のモニターで4名の読影者がじん肺45症例の型分類を行った。メーカー間およびモニターサイズの比較において両者の読影結果に有意差は認められなかった。
低線量CT画像に関しては、36例の症例を収集した。2例の評価困難例を除いたCTでの病型評価は、0/ 1 12例、1/ 0 5例、1/ 1 8例、2以上9例であった。
芦澤班第1回小班会議(平成21年8月21日)で病型を再決定した25例を用い、じん肺の粒状影の定量的評価を行った。PR0/ 1と1/ 0の症例において、CADによる単純X線写真上の粒状影の個数では有意差はなかったが、CT画像の定量評価による分類では有意差がみられた。
欧米先進国6カ国を対象に粉じん職場におけるスクリーニングのガイドラインを比較検討した。結果、CTをスクリーニングに使用している国はなく、単純X線写真の使用が推奨されていた。
防じんマスクに関しては、男性作業者13名に対して電動ファン付き防じんマスク(PAPR)と通常防じんマスクのクロスオーバーによる装着感・精神的ストレスの調査を行った。PAPRの方がマスク内の暑さで有意に良好であり、一方マスクの重さに関しては有意に不良であった。精神的ストレスに関する指標では、憂鬱、集中力低下、仕事中断の3項目で有意に防じんマスクの方が良好な結果を示した。
結論
「じん肺標準エックス線写真集」の症例の偏りや不足に関しては、改めて作成当時の残された課題や新たな症例収集の必要性を再確認することができた。アナログ版と電子媒体版の整合性に関しては、地方じん肺診査医への電子媒体版に関するアンケートを行っているところであり、その調査結果が待たれる。
モニター診断に関してはメーカーおよびモニターサイズが異なっても、じん肺の型分類に差は認められないと考えられる。今回の結果からは日本医学放射線学会電子情報委員会のデジタル画像の取り扱いに関するガイドラインと同様に、1Mモニターもフィルムの代替えとして使用できると考えられる。地方じん肺診査医へのアンケートの現段階の結果では、モニターで診査が行われている局は極めて少数であり、今後のモニター診断導入の参考資料となると考えられる。
低線量CT画像の収集が終了した時点で、CADでの定量的な評価と併せてPR0/ 1、PR1/ 0症例を含めた適切な胸部CTの病型基準となる症例提示を試みる。現時点ではCADを用いた粒状影の個数による定量的な評価は、じん肺のPR0/ 1、PR1/ 0を含めた病型の判断に有用であることが示された。今後、症例群を追加しデータベースの構築とCADの精度向上をはかっていく。
マスク装着感に関する今回の調査では、マスクの重さや慣れによる影響が強く影響した可能性が考えられた。今後マスクの軽量化が進めば軽減される可能性がある。
溶接作業に従事する作業員に対するPAPRと従来型の防じんマスクの比較を行う調査研究については、平成30年1月に調査を開始したところであり、来年度は対象を拡大する予定である。また、費用対効果研究の方法論の検討では、漏れ率や粉じん吸入量などの客観的評価項目は、PAPRにより大きな改善がある可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-11-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201722016Z