ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定

文献情報

文献番号
201722015A
報告書区分
総括
研究課題名
ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定
課題番号
H29-労働-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山口 佳宏(熊本大学 環境安全センター)
研究分担者(所属機関)
  • 林 瑠美子(名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
  • 喜多 敏博(熊本大学 教授システム学研究センター)
  • 富田 賢吾(名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の危険有害性情報(以下、「リスク情報」とする。)を知ることは、化学物質を安全に使用する上で必須である。しかし、リスク情報の入手には手間がかかり、実際に化学物質による事故が発生している。そのため、化学物質ユーザーが頻繁に見る薬品ラベルに着目して、さらにIT技術を使って、この課題を解決することを本研究の目的としている。
本研究は、(1)メーカーへの薬品ラベルに関する意向調査、(2)伝達すべきリスク情報の検討、(3)二次元コード変換および表示ツールプログラムの開発、(4)リスク情報の教育効果の評価、(5)リスク情報提供の効果測定という5つのサブテーマを設定している。
平成29年度は、意向調査、伝達すべきリスク情報の検討およびプログラム開発を行った。
研究方法
化学物質メーカーに対して、化学物質の危険有害性情報(以下、「リスク情報」とする。)の製品ラベルへの付加についてヒアリング調査を行った。製品ラベルには、二次元コードを付加することを提案し、その二次元コードの内容は、本研究で得られる「伝達すべきリスク情報」を付加するものとした。さらに「二次元コード変換ツール」の開発も言及し、化学物質メーカーが所有する法令情報やリスク情報のデジタルデータの提供と製品ラベルへのリスク情報(二次元コードとして)に関する課題点を抽出した。
まずは、大学で使われる化学物質を主に提供している化学物質メーカー(試薬メーカー)4社をヒアリング対象とした。
どこまでのリスク情報をどのレベルまで伝えるべきかを検討した。具体的には、化学物質に関する法令の種類とリスク情報の内容、それらにレベル・区分がある場合は、その幅を調査した。最終的にはデータテーブルの「行」に法令の種類など(例えば、GHS分類、毒物、劇物など)、「列」にレベル・区分(例えばGHSの場合、「急性毒性-区分1」など)を整理したデータを作ることとした。
試薬メーカーが収集して整理している製品マスタ(リスク情報、インプットデータに該当)を二次元コードに変換する(圧縮する)ツールを開発した。さらに二次元コードをモバイル機器等で読み取り文字情報を表示するツールも開発した。主なプログラミングは委託業者が行った。
結果と考察
試薬メーカーは薬品ラベルに掲載するための情報、さらに薬品ラベルへの印字などについて多数の人員と労力をかけており、ユーザーにとって有益な情報(リスク情報などを含む)を伝えたいという意向であった。しかし、試薬メーカーにおいて、薬品ラベルで表示すべき情報量が多く、英語表記などの追加記載の必要性も増していることから、さらなる情報(リスク情報などを含む)の追加については現状では実現が厳しいという意見が多かった。二次元コードなどを使って、さらなる情報(リスク情報などを含む)の追加は大変興味深い考え方であるが、やはり現状の課題である薬品ラベルの情報量の減少と、それに伴ってユーザーに有益な情報の増加など、薬品ラベル表示に関する規制の見直しを強く望んでいた。試薬メーカーはリスク情報の公開は積極的であり、特にインターネットを利用した公開を今後の方向性として検討していることが分かった。伝達すべきリスク情報については、法令対象の情報による危険有害性の推測よりも、具体性が高いリスク情報を取りまとめたGHS分類を利用することが望ましいと考えている。このことについては、今後も継続して検討を行う。開発したプログラムは、化学物質に対する法令対象、さらにリスク情報がデータ化されている場合、二次元コードとして、それら情報を圧縮して出力できるものを作成した。また二次元コードをモバイル機器で読み取ることで、圧縮した情報を表示するプログラムも開発した。この利用方法は、試薬メーカーのヒアリング調査によって、プログラムの更新は誰がするのかなどの課題が増えたが、化学物質のリスク情報を伝達する一つのツールとして、今後も開発を行う。
結論
本研究は3カ年で行い、その1年目が終了した。得られた結果として、試薬メーカーの薬品ラベルに対する見解と、本研究の構想である二次元コードの付加の課題について知ることができた。また伝えるべき化学物質の危険有害性情報について、今後の検討も必要となったが、GHSに落ち着きそうである。本研究で開発したプログラムについては、試薬メーカーによる二次元コードの発生および薬品ラベルへの付加については現状では難色を示したが、例えば化学物質管理支援システムとの連携や化学物質管理関連のインターネットサイトの連携によって有効に利用できると考えている。

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201722015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 194,339円
人件費・謝金 0円
旅費 1,381,053円
その他 1,504,610円
間接経費 920,000円
合計 4,000,002円

備考

備考
預金利息が2円付いた。

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-