臨海コンビナート設備のねじ接合部の腐食減肉に関する供用適性評価技術の開発

文献情報

文献番号
201722013A
報告書区分
総括
研究課題名
臨海コンビナート設備のねじ接合部の腐食減肉に関する供用適性評価技術の開発
課題番号
H29-労働-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
辻 裕一(東京電機大学 工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 博之(東京電機大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 臨海コンビナートのプラントでの腐食減肉では、フランジ継手等に使用されるねじ部品の減肉が現実に発生しているにも拘わらず、定量的評価は行われていない。フランジ継手の締結状態は漏洩に直接影響するが、ねじ部品の減肉に関する合否判定基準が国内のみならず海外にも無い。ねじ部品の減肉は、デッキ、プラットホーム、サポートなどの屋外鋼構造物にも多く見られる。ねじ部品は部材同士の接合に用いられ、その破壊は直ちに重大な災害に結びつく。
 本研究では、コンビナートにおけるねじ部品の減肉に着目し、減肉の実態の把握、減肉速度の予測モデル、減肉の許容基準・余寿命評価方法の開発を行う。成果を踏まえ、供用適性評価を行う減肉評価ガイドライン作成を最終目標とする。ガイドラインは、計測から評価まで、すなわち減肉形状計測、供用適性評価、余寿命予測をカバーする。
研究方法
 本研究は3年計画で、計画の初年度である平成29年度においては、ねじ部品の減肉許容基準の検討、電気化学的な腐食解析技術の検討、ねじ部品の実態調査のための計測技術の検討、及び減肉の実態調査を実施した。
 ねじ部品減肉許容基準の検討として、減肉モデルの非線形有限要素解析より、ボルト・ナット系の破壊モードを明らかにし、減肉の許容範囲を提案した。減肉の計測技術の検討として、ボルトを採り上げる。ボルトの強度は軸部の最小断面積に支配されるため、デジタルノギスにより減肉部外径を測定することとし、減肉ボルトの実態調査を実施した。減肉ナットの実態調査は次年度に計画している。
 腐食解析技術については、減肉が発生する主要因となる腐食の発端および進展を明確にすることを目指して、腐食生成物の分析、腐食反応の計測を行う。腐食生成物の結晶構造から物質同定が可能なX 線回折法XRD、微小部分での腐食反応を酸化反応により生じる金属の電位変化から微小領域について計測できる走査型電気化学顕微鏡SECMを分析手段として用いる。
結果と考察
 ねじ部品減肉許容基準の検討として、減肉モデルの非線形有限要素解析より、ボルト・ナット系の3 通りの破壊モードを明らかにし、ナット高さとナット外径に関する減肉の許容範囲を破壊モードの変化に基づき提案し、またナット減肉によるボルト・ナット系の剛性低下率を示した。
 減肉の計測技術の検討として、経年保温タンクの保温材下のスタッドボルトの腐食に関する実態調査を実施し、減肉データを多数収集した。スタッドボルトの減肉測定では、ねじ部の外径を直交する2方向を測定し、それぞれ楕円の短軸と長軸として、残存の断面積を計算し評価に用いた。スタッドボルト600本の減肉データを収集、分析を実施した。実態調査を行ったタンクのスタッドボルトに付着していた腐食生成物を採取し、XRD による分析を行った。腐食生成物はマグネタイト(Fe3O4)であった。マグネタイトは熱力学的にはさらに酸化が進行しうるが、SECMを用いたモデル試験によれば、マグネタイトの再度の酸化を腐食速度の中に考慮する必要はないと考えられる。
結論
平成29年度の研究により、以下の結論を得た。
 ねじ部品の減肉許容基準の提案については、ボルト・ナット系の破壊モードは3種類あること、破壊モードの変化を基準とするとナット高さ60%、ナット外径93.65%までがナットの減肉の許容範囲であること、この範囲では、ナット減肉によるボルト・ナット系の剛性低下率はたかだか10%未満であることを明らかにした。今後は、ボルト頭部の減肉の許容限界、及びボルト・ナット系の剛性低下が締結性能に及ぼす影響について検討を進める。
 ねじ部品の減肉の実態調査については、漏えいが発生した経年保温タンクの保温材下のスタッドボルトの腐食の事例を取り上げた。XRD、SECMによる分析は腐食生成物に適用可能であり、腐食で生成しているのはマグネタイトであった。マグネタイトの再度の酸化を腐食速度の中に考慮する必要はないと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201722013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,500,000円
(2)補助金確定額
8,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,144,168円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,355,832円
間接経費 0円
合計 8,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
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