振動工具作業者における労働災害防止対策等に関わる研究

文献情報

文献番号
201722010A
報告書区分
総括
研究課題名
振動工具作業者における労働災害防止対策等に関わる研究
課題番号
H28-労働-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 池上和範(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
  • 安藤 肇(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
  • 足立弘明(産業医科大学 産業生態科学研究所 神経内科学)
  • 大成圭子(業医科大学 産業生態科学研究所 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、振動工具取扱い者における振動障害の早期スクリーニングに対する神経伝導速度(NCV)検査の有用性を提供することを調査目的の一つとした。また、従来の調査票に加え、1秒間の作業回数や連続作業時間、総延作業時間といった情報を追加することで振動障害の病態に強く関与する因子を見つけ出すこととする。上記の調査を3年間に渡って継続し症例を収集し、振動工具取扱いに対する評価とともにNCV検査等の他覚的検査を併用することで振動ばく露量と振動障害の病態の相関を解明し、特殊健康診断での早期発見・早期治療に活用することを検討した。
研究方法
平成29年度はのべ68名(曝露群40名対照群28名)の調査対象者に対して第3回と第4回の調査を行った。質問紙に関しては過去の振動工具の取扱いについて本人に記入を依頼し、調査当日に医師が以下の内容を本人に聴取し確認を行った。1)職歴;事業所規模、職種、産業保健体制、2)取り扱い機械の状況:使用している工具の種類・使用年数、振動ばく露時間(連続使用時間・1日合計使用時間等)、保護具使用、作業環境、使用工具の整備状況、3)病歴:手指のレイノー現象などの自覚症状についての発症時期や経過。4)生活歴:喫煙歴、飲酒量、趣味(日曜大工での工具取り扱いやオートバイなどの乗用車による振動ばく露の有無)、家族歴など。神経学的な所見は、具体的に筋力、筋萎縮、深部腱反射、感覚障害、運動失調症状等に関し所見を取った。神経伝導検査は産業医科大学病院内で日本光電社のニューロパック X1 を用いて、両側の正中神経及び尺骨神経をそれぞれ運動神経伝導速度と感覚神経伝導速度について神経線維に沿って2箇所以上で皮膚上に電極を設置し電気的刺激を行い、画面上で活動電位を確認し活動電位の波形の潜時から、それぞれの神経伝導速度を計算した。末梢循環障害の病態を把握するためにレーザー血流画像化装置Laser Speckle Flowgraphy (以下LSFG、ソフトケア社製)を用いた冷水浸漬負荷検査にて血流変化の評価を行った。大学内の人工気候室を用いて室温を22±1℃に設定し,部屋で10分以上安静にさせた後,15℃に調整した水の中に手関節まで浸漬させ5分間の冷水刺激を与えた(15℃5分法)。また、平成29年度冬季の検査からは、より室温への馴化を確実にするため、安静時間を30分以上とした。末梢血流への影響を可能な限り避けるため,検査12 時間前以降は禁酒,検査前3 時間以降は禁煙,カフェインなどの刺激物の摂取も避けるよう調査前に指示した。冷水浸漬により気分不良や耐え難い疼痛を認めるなど被験者自身が検査の継続が不可能だと判断した際には即時中止できることを説明した。各対象者の基準値を算出するために安静後に室温で3回の連続測定を行った。その後は冷水浸漬検査開始のタイミングを0分とし,冷水浸漬中の5 分間と冷水浸漬を終了し室温に戻した状態の10 分間の計15分間に亘り,1 分ごとに4秒間の撮像時間で計15回測定した。血流測定後は専用の解析ソフト(LSFG Analyzer ver.3)を用いて,各指のから遠位の皮膚面(末節部領域とする)および各指全体の皮膚面(全体部領域とする)を選択し,選択範囲内の各測定点の値を平均した血流パラメータを算出した。LSFGで得られた血流パラメータはMean Blur Rate(MBR)として単位のない相対値として表示され,個人間比較は難しいとされているため,安静後に3回連続で測定した結果の平均値を基準値とし,基準値からの減少割合を下記のように血流量(%)として求め,個人間の評価として使用した。
結果と考察
質問票による自覚症状では、振動障害に特徴的な手腕自覚症状の有無(レイノー現象、手のしびれ、冷え、痛み)4項目のうち2項目以上を訴える割合は、曝露群に多い傾向を認めた。神経伝導検査における振動工具曝露群と対照群との比較では、左右正中神経の感覚神経活動電位(SNAP)は3回の検査にていずれも曝露群で有意に低下していた。また、右手の正中神経の感覚神経伝導速度(SCV)は曝露群で有意に低下し、遠位潜時は遅延する傾向が見られた。利き手による有意差は認めなかった。喫煙による各パラメータへの影響は有意差が認められなかった。LSFG検査では、取扱い群と対照群の増減率の推移を比較したところ有意差を認め、いずれの末節部領域でも多重比較で増減率に有意差を認めた。
結論
LSFG検査と神経伝導検査を組み合わせることにより、より詳細な振動工具による障害の程度を評価することが出来ることが示唆された。また、これらの検査のスクリーニングへの応用について有用性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201722010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,040,000円
(2)補助金確定額
2,991,000円
差引額 [(1)-(2)]
49,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 831,013円
人件費・謝金 151,774円
旅費 294,740円
その他 1,014,027円
間接経費 700,000円
合計 2,991,554円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-06-14
更新日
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