文献情報
文献番号
201722003A
報告書区分
総括
研究課題名
飲食店の労働災害防止のための自主対応を促進するサポート技術の開発とその展開方法に関する研究
課題番号
H27-労働-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 一博(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 北島 洋樹(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 佐々木 司(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 鈴木 一弥(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 余村 朋樹(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 松田 文子(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 佐野 友美(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 石井 賢治(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
- 工藤 大介(公益財団法人 大原記念労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,138,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
外食産業特有の働き方に対応するため,幅広い労働現場で実施されている参加型職場環境改善活動を基に,飲食店版アクションチェックリストを含めた外食産業事業所の参加型職場環境改善をサポートするツール・手法を開発する。開発されたツール・手法をモデル職場において試用し,効果や課題,改善点等の評価を行う。飲食店向け簡易版安全文化評価ツールを作成・実施し,飲食店で実施する際の効果的な方法を検討する。ICTを用いた支援ツールを開発し,飲食店版アクションチェックリストの活用を推進する。
研究方法
飲食店版アクションチェックリストを中心とした一連の改善ツールについて,ヒアリング結果を踏まえ,現場の状況に合致することや,その必要性の観点からチェック項目を見直すとともに,飲食業に対応した職場環境改善をサポートする手法を討議・開発した。開発したツールを用いて,小規模外食店舗および民間保育園での実践を行った。実践前,改善実施直前,改善実施後の3回にわたり,改善についての意識,自職場の安全衛生の状況,実施方法・ツールに関する感想などについてアンケート調査およびヒアリング調査を実施した。安全文化評価ツールの基本概念,評価構造,項目をベースとして作成した試行版を基に,面接調査と研究者によるディスカッションを行い,飲食店向け簡易版安全文化評価ツールを作成した。小規模外食店舗従業員を対象にツールを実施した。ヒアリングから得た労働現場の実態を踏まえ,飲食店版アクションチェックリストを含む職場環境改善を支援するWebツールを開発し,シンポジウムの出席者を対象としたアンケート調査にて評価を得た。
結果と考察
外食産業事業所の参加型職場環境改善をサポートするツール・手法として,参加型職場環境改善過程を5つのSTEPに細分化し,各STEPに要する時間を15分~20分程度と短時間化した。5つのSTEPを踏むことで,参加メンバーが入れ替わっても全体像を把握することができた。ツール・手法の現場活用を行った結果,現場での具体例を多く活用することで,学生アルバイト等の労働経験の比較的少ない従業員であっても現場の安全や健康についてイメージしやすく意識の向上につながる可能性が示唆された。チェックリスト項目が職場の現状とかけ離れている場合は,実施しやすいものから改善し,最終的な目標として項目をとらえてもらうよう説明する必要性があった。説明の工夫に関する評価から,学生・高齢者・外国人労働者等多様な従業員にわかりやすい説明文を追加する必要性が認められた。介入期間後においても自主的改善活動が実施された。参加型職場環境改善の実施により,店舗で働く人の安全性や健康については,経時的にネガティブな評価が増加した。また,STEPを重ねるごとに職場環境改善への関心が高まった。働く人の安全・衛生・健康面や店舗内の設備等へ能動的に目が向けられたと考えられる。各STEPに対する評価は,総じて役に立つとの回答比率が高かった。職場環境改善への取り組みを実施したことで,コミュニケーションがとりやすくなったとの評価や,自身の職場への興味・関心が高まったとの評価が得られた。決定した具体的改善内容を,従業員に対してどう説明するか,合意形成をどうするかについて,課題があった。外食企業へのヒアリング調査ならびに研究メンバーでのディスカッションを行い,飲食店向け簡易版安全文化評価ツールを作成した。簡易版は元の36項目から10の評価分野から1項目ずつ選択し,10項目で構成した。評価方法は8件法で応答を求め,評価構造は,自己評価のみ行い職層で分けずに集計する方法を選択した。改善実施直前と改善実施後で職場の作業条件を改善する姿勢に有意差が見られた。職場環境改善活動に取り組んだ効果だと言え,本ツールの項目が妥当であることが示唆された。開発したwebツールの試用結果から利便性を評価された。飲食店向けの参加型職場環境改善ツールを現場に展開・推進する手法として,ICTを用いた自主対応支援ツールの有用性が示唆された。「飲食業の安全で健康的な働き方を支援するシンポジウム」を開催し,これらのツールの有効性を確認するとともに,業界内外に展開を図った。
結論
飲食店版アクションチェックリストを中心とした飲食店向けの参加型職場環境改善ツールは外食産業の現場へ適用できることを確認した。ツールが従業員自身の安全・健康に関する意識の醸成に寄与する可能性が示唆された。ツールが自主対応型の側面を持つことが確認できた。飲食店向けの簡易版安全文化評価ツールの開発を行い,ツールの有効性と可能性が示唆された。Webツールを用いることで手軽に参加型職場環境改善活動を実施できる可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2018-06-18
更新日
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