文献情報
文献番号
201721054A
報告書区分
総括
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-014
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
伊達 洋至(京都大学大学院医学研究科 器官外科学講座呼吸器外科学)
研究分担者(所属機関)
- 松居 喜郎(北海道大学大学院医学研究科 循環器・呼吸器外科)
- 伊澤 祥光(自治医科大学救急医学・外科)
- 小林 英司(慶応義塾大学医学部 ブリヂストン臓器再生医学寄附講座・移植、再生医学、バイオエシックス 臓器再生医学講座実験室)
- 七戸 俊明(北海道大学大学院医学研究科 消化器外科)
- 白川 靖博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学教室・食道外科)
- 野原 裕(獨協医科大学)
- 吉田 一成(慶應義塾大学医学部 脳神経外科)
- 内山 安男(順天堂大学)
- 渡辺 雅彦(北海道大学大学院医学研究科 神経解剖学)
- 平野 聡(北海道大学大学院医学研究科 消化器外科)
- 倉島 庸(北海道大学大学院医学研究科)
- 弦本 敏行(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 平松 昌子(大阪医科大学臨床教育学)
- 高橋 晴雄(長崎大学大学院医師薬学総合研究科、耳鼻咽喉化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
死体を用いた手術手技修練(cadaver training)は、諸外国では教育手法の一つとして確立しているが、我が国でも2012年に「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」が公表され実施する体制が整備された。ガイドライン公表から数年を経過した現在、複数の大学で取り組まれているが、医療技術の高度化に対応するためには、更なる普及・定着が必要と考えられる。そこで本研究では、cadaver trainingをより定着させることを目的とした。
研究方法
1.実施例の調査による運営の実態調査
Cadaver trainingでは手術手技を習得するために、医療機器や手術材料を使用して模擬手術を実施する。医療機器や手術材料は高額であり、献体の登録、保存、管理等の業務にも経費と人的資源が必要となる。それらの必要な経費を受講者からの参加費のみで賄うことは不可能であり、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくては実施できない現状がある。
実施例における参加者負担と外部資金の導入ならびに企業支援などの運営状況を、全国のcadaver trainingの実施施設からガイドラインに従って日本外科学会CSTガイドライン委員会に送られた「遺体による手術手技研修等の実施報告書」、「経理報告書」、ならびに「利益相反に関する報告書」の集計により調査し、分析した。
2.外部資金の導入や企業の協力に関する指針の提言
効率的・効果的な運営を行っている実施施設を抽出し、海外のcadaver training course における運営状況の実態調査、ならびにアニマルトレーニング等の他の手法の調査を通じて、トレーニングコースを自立し、継続して実施可能とするための資金面での工夫や運営形態などについて検討した。さらに、献体制度の無償の精神を保ちつつ企業などからの外部資金の導入する際の利益相反マネジメントに関する指針を提言した。
3.ガイドラインの見直し
2012年公表の「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」の内容が、現状に合致しているかを精査し、見直しが必要であれば改定を検討した。
4.期待される効果
本研究は、国民が安心して質の高い医療を受けられるために必要なcadaver training を我が国において円滑に実施可能にすることを目的としており、手術手技研修の充実によって、医療水準の向上と均てん化が図られ、医療安全の向上が期待できる。
5.倫理面面への配慮
遺体を用いた手術手技研修の調査に際しては、献体者の尊厳とプライバシー保護を遵守する。
Cadaver trainingでは手術手技を習得するために、医療機器や手術材料を使用して模擬手術を実施する。医療機器や手術材料は高額であり、献体の登録、保存、管理等の業務にも経費と人的資源が必要となる。それらの必要な経費を受講者からの参加費のみで賄うことは不可能であり、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくては実施できない現状がある。
実施例における参加者負担と外部資金の導入ならびに企業支援などの運営状況を、全国のcadaver trainingの実施施設からガイドラインに従って日本外科学会CSTガイドライン委員会に送られた「遺体による手術手技研修等の実施報告書」、「経理報告書」、ならびに「利益相反に関する報告書」の集計により調査し、分析した。
2.外部資金の導入や企業の協力に関する指針の提言
効率的・効果的な運営を行っている実施施設を抽出し、海外のcadaver training course における運営状況の実態調査、ならびにアニマルトレーニング等の他の手法の調査を通じて、トレーニングコースを自立し、継続して実施可能とするための資金面での工夫や運営形態などについて検討した。さらに、献体制度の無償の精神を保ちつつ企業などからの外部資金の導入する際の利益相反マネジメントに関する指針を提言した。
3.ガイドラインの見直し
2012年公表の「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」の内容が、現状に合致しているかを精査し、見直しが必要であれば改定を検討した。
4.期待される効果
本研究は、国民が安心して質の高い医療を受けられるために必要なcadaver training を我が国において円滑に実施可能にすることを目的としており、手術手技研修の充実によって、医療水準の向上と均てん化が図られ、医療安全の向上が期待できる。
5.倫理面面への配慮
遺体を用いた手術手技研修の調査に際しては、献体者の尊厳とプライバシー保護を遵守する。
結果と考察
本研究では、実施例における参加者負担と外部資金の導入ならびに企業支援などの運営状況を、全国のcadaver trainingの実施施設の実施状況を調査・分析した。実施施設は、ガイドラインに従い日本外科学会CST推進委員会へ実施内容を報告する必要があるが、2018年1月現在までの5年間に報告された研修等は15大学、300回の実施であった。
文献検索による海外の cadaver training の現状をまとめた。米国、英国、フランスでの現状と問題点をまとめ、これを2018年4月の日本外科学会総会で報告した。
医療機器や手術材料は高額であり、献体の登録、保存、管理等の業務にも経費と人的資源が必要となる。それらの必要な経費を受講者からの参加費のみで賄うことは不可能であり、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくては実施できない現状がある。そこで、日本外科学会と日本解剖学会と協力してCOIを明確にするガイドラインの改定を行い、公表した。
さらに、厚生労働省と協力して「実践的な手術手技向上研修事業」の補助金をこれまでの年間約4500万円から、平成30年度は約3億円への増額がみとめられたことは、本研究の成果として特筆すべきことである。
献体を用いた手術手技研修の普及に際しては、大学内での組織の立ち上げやその維持のための人的・資金的問題が大きく立ちはだかっており、これをいかに解決していくかが大きな課題であることがあらためて浮き彫りになった。今後は海外の事例なども参考にし、カダバートレーニングの普及に向けて参加費徴収による受益者負担の仕組みの確立と普及ならびに外部資金の導入を可能とする体制を早急に検討し確立する必要性があると思われた。
文献検索による海外の cadaver training の現状をまとめた。米国、英国、フランスでの現状と問題点をまとめ、これを2018年4月の日本外科学会総会で報告した。
医療機器や手術材料は高額であり、献体の登録、保存、管理等の業務にも経費と人的資源が必要となる。それらの必要な経費を受講者からの参加費のみで賄うことは不可能であり、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくては実施できない現状がある。そこで、日本外科学会と日本解剖学会と協力してCOIを明確にするガイドラインの改定を行い、公表した。
さらに、厚生労働省と協力して「実践的な手術手技向上研修事業」の補助金をこれまでの年間約4500万円から、平成30年度は約3億円への増額がみとめられたことは、本研究の成果として特筆すべきことである。
献体を用いた手術手技研修の普及に際しては、大学内での組織の立ち上げやその維持のための人的・資金的問題が大きく立ちはだかっており、これをいかに解決していくかが大きな課題であることがあらためて浮き彫りになった。今後は海外の事例なども参考にし、カダバートレーニングの普及に向けて参加費徴収による受益者負担の仕組みの確立と普及ならびに外部資金の導入を可能とする体制を早急に検討し確立する必要性があると思われた。
結論
国民に対して、高度な医療を安全に提供するためには、カダバートレーニングの実施体制の充実が必須である。今後は、実践的な手術手技向上研修事業」の補助金の増額を有効に利用して、社会にサポートされるカダバートレーニングの実施体制の確立を目指したい。
公開日・更新日
公開日
2019-05-23
更新日
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