死因究明等の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201721053A
報告書区分
総括
研究課題名
死因究明等の推進に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-013
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今村 聡(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 純一(公益社団法人 日本医師会)
  • 澤 倫太郎(公益社団法人 日本医師会(日本医師会総合政策研究機構))
  • 上野 智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社)
  • 水谷 渉(公益社団法人 日本医師会(日本医師会総合政策研究機構))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会の高齢化が進展するにつれ、在宅における孤独死等や大規模災害の発生時の検案等、死因を究明することが困難な事例も増加していくものと考えられる。こうした背景のもと政府は「死因究明等推進計画」を策定し(平成26年6月)、今後は死因究明の充実に向けた取り組みを進めることとされている。平成26年度より、本研究班において「死因究明等推進計画」の諸課題について研究に取り組んでおり、平成28年度までに一定の成果を収め、その中で特に、死亡診断書等の電子的提出及び公衆衛生の観点からの利用方法も踏まえた死亡診断書等の在り方についてさらに検討する必要性を認めた。平成29年度は、平成26~28年度の研究成果を踏まえつつ、死亡診断書(死体検案書)の制度全体に係る課題の整理及び課題解決に向けて研究班として議論を深めることにより、今後の死因究明体制の充実に向けた行政施策に資するような成果を得ることを目的とする。
研究方法
今年度の本研究では、死亡診断書(死体検案書)における様式を含めた死亡診断書等の在り方について前年度に引き続き検討を重ねるとともに、平成28年度に基礎的な研究を進めた監察医制度の在り方を含む公衆衛生の観点からの死因究明について、さらなる検討に重点を置くこととした。様式を含めた死亡診断書等の在り方については、将来、死亡診断書等の電子的申請を行うことも視野に入れ、技術的、法的課題を整理し、死亡診断書(死体検案書)の制度全体に係る課題について検討を行った。また、平成26~28年度に引き続き、死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトの追加機能の検討と開発を行った。監察医制度の在り方については、制度運用における主要関係者を招聘し現状について聴き取りを行い、今後の制度の在り方について検討を行った。死亡時画像診断に特化したe-learningを含めた自己学習用の教材については、平成26~28年度に引き続き、症例の追加等により開発を継続した。
結果と考察
死亡診断書等の様式については、将来の電子的交付の可能性も踏まえつつ、その際に技術的、法的な障害となり得るものについて検討を行ったところ、死亡診断書上の死亡者情報と各市区町村における戸籍情報との結び付け方や、人口動態調査への情報の集約等の課題が明らかとなった。電子化による書類提出を介しての書類作成と、書類上の情報と、市区町村における戸籍情報とをどう関連付けるか等の手続きを視野に入れたうえで、法的、技術的な側面において更なる検討が必要と考えられた。また、死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトにおいては、平成30年度からの介護医療院の創設に伴って改訂された死亡診断書(死体検案書)の様式に対応し、様式テンプレートや入力画面においての注意喚起に機能追加を行った。監察医制度の在り方については、東京、大阪、兵庫の各々の監察医務機関の代表者から現状について聴き取りを行った結果、制度の充実を図るうえでは、すべての解剖が実施できるサンプリング地域を定め、死因比較が可能としたうえで全国に展開してはどうかという意見があった一方、全例を解剖することは困難であるため、より軽量化した仕組みを作ったうえで全国に拡げていくことが重要なのではないかという議論があった。制度を通じて得られた有用な知見・情報を社会に対して数多く発信していくことができれば、国民一般の監察医務制度、ひいては死因究明施策全般の重要度に対する認識も飛躍的に高まることから、情報の整理と発信のあり方などについて、来年度以降も引き続き検討を深める必要があると考えられた。e-learningを含めた自己学習用の教材については、前年度までと同様、厚生労働省が日本医師会を委託先として実施している小児死亡例に対する死亡時画像診断のモデル事業で収集した症例を含む5例を、e-learningシステムに追加し専用サイトの充実を図った。検案を担う医師が死亡時画像診断に習熟しやすい環境を整えるためにも、さらに読影の学習効果が高まる内容へと進化させる仕組みを模索する必要があると思われた。
結論
死亡診断書(死体検案書)作成支援ソフトの開発を進めることによって、現時点での問題点やデータ集積による利点等が明かになるため、引き続き、書類を交付する医師や医療機関、市区町村窓口の意見を活かし機能の追加を行うことによって、最終的にはあるべき死亡診断書(死体検案書)の様式を明らかにし、制度の構築のための具体的提言を目指したい。監察医制度の在り方については、29年度の考察結果をもとに死因分析を公衆衛生に結び付け、施策に反映させるためにも、来年度以降はさらなる応用的、政策的な検討を進める必要があると考えられた。本年度の成果を踏まえ、わが国の死因究明制度をより精緻なものとするため、政策の提言を試みたい。
 

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721053C

収支報告書

文献番号
201721053Z