NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201721048A
報告書区分
総括
研究課題名
NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-008
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 裕章(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
  • 後藤 満一(大阪府立急性期 総合医療センター)
  • 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学 医学部)
  • 掛地 吉弘(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 上田 裕一(奈良県立病院機構 奈良県総合医療センター)
  • 高本 眞一(三井記念病院)
  • 本村 昇(東邦大学 医療センター佐倉病院)
  • 徳田 裕(東海大学 医学部)
  • 遠藤 俊輔(自治医科大学 医学部)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学 医学部)
  • 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院)
  • 一原 直昭(東京大学 医学部附属病院)
  • 高橋 新(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の医療提供は,専門医の配置や診療科や地域における医療提供体制など,偏在問題で多くの課題が示されており,これらを解決するための取り組みが重要視されている.医師の配置数で考えると,人口10万人あたりの医師数は都道府県間で最大2倍の格差があるとされている.しかし実際には,需供ニーズの視点から考えた場合に,その地域における対象疾患数での評価が重要となってくる.これまでにも同様な課題は存在していたが,各診療分野においてどのような品質の医療が提供されているのか具体的に把握されていなかった.本研究はNational Clinical Dartabase(NCD)の活用によって,日本における地域毎の医療提供体制の実態を実臨床データを用いて把握し,よりよい医療提供が可能となる指標を確立し,地域課題の要因分析をするものである.
研究方法
本研究は,NCDデータから都道府県(医療圏)単位での一般外科(消化器,心臓,呼吸器など)における手術手技や疾患別などの症例数を記述統計や地理情報等を用いて可視化する.既に一部の領域では同様に地域毎の実態把握に関する解析経験があるため,これまでの経験を一般外科全体へ応用する形で実施する.本研究によって,現状では具体的に把握されていない地域毎の受入症例数や疾患分布ついて可視化することが可能となり,今後の適切な医療の機能分化に資する指標を確立する事が可能となるものである.
本研究では2017年度の分析として,2016年1月~12月に手術を受けた症例について,外科専門医制度に基づき,外科専門医制度上で認められる術式に関する全体の手術症例数,外科専門医制度上の7つ各領域(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,および,各領域の主な術式の手術件数の検討を実施する.また,2011年から2016年の手術症例データを連結し,経年変化が評価可能となるデータセットの構築を行い,都道府県毎の医療提供について,地域毎の手術数や症例数,疾患別の症例分布などを分析し実態把握を行う.
結果と考察
本研究により,NCDにおける2016年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,7 つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.また,これまでNCDに蓄積された症例数を連結したことで,2011年から2016年の約800万症例という大規模な臨床データを活用することが可能となった.年間130万症例以上の悉皆性の高い臨床データを有する例は国内外でも他になく,NCDデータを活用することで日本の実態を表すことが可能となるものであると考える.
機能連携を評価する方法では,症例の集約と治療成績について影響を評価した.指標として検討した機能連携の割合が高い都道府県では,機能連携の指標と都道府県の標準化死亡比には一定程度の相関が認められた.当該手術の経験が少ない施設で無理に手術をするのではなく,経験がある施設を紹介すること(その施設を無くすのではなく,機能連携を行うこと)は地域全体の治療成績向上につながることが示唆された.また,機能連携が不良な都道府県において,治療成績が優良なケースはほとんど見られない結果であった.一方で,良好な地域においても治療成績が不良なケースは存在していた.上記を踏まえると地域連携は医療の質向上の必要条件ではあるが,十分条件では無いことが示唆される.地域医療という視点においては,地域で医療資源がどのように配置されているかといったストラクチャー指標や,医療資源の連携活用も含めたプロセス指標での評価,またそれらによる影響(治療成績や地域における再編統合など)についても検討する事が重要となる.
結論
本研究により,NCDにおける2016年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,領域別の手術症例数が明らかとなった.また,2011年から2016年までの約800万例という大規模な臨床データを活用することが可能となった.地域における集約や再編統合による影響を経年で評価することが可能と考えられ,地域医療体制の検討に資するデータ提供が可能となるものである.機能連携について検討する中で,各都道府県の地域医療構想の達成に向けた取組状況を参考に,次年度以降は,医療の質向上に繋がるモデルケースを洗い出し,NCDデータを活用した体制構築前後における医療の質の変化について取りまとめることを予定している.本研究はNCDデータの活用によって,日本における都道府県などの地域毎に医療提供体制の実態について臨床データを用いて把握し,よりよい医療提供が可能となる指標を確立するものである.

公開日・更新日

公開日
2019-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201721048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,164,750円
人件費・謝金 2,074,875円
旅費 141,120円
その他 184,685円
間接経費 1,038,000円
合計 4,603,430円

備考

備考
分析に必要なソフトウエアを購入する必要があり、物品費が予算を超えてしまった

公開日・更新日

公開日
2020-04-22
更新日
-