ドクターヘリの適正配置・利用に関する研究

文献情報

文献番号
201721037A
報告書区分
総括
研究課題名
ドクターヘリの適正配置・利用に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-028
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
猪口 貞樹(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高山 隼人(長崎大学病院 地域医療支援センター)
  • 荻野 隆光(川崎医科大学 医学部)
  • 中川雄公(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター)
  • 辻 友篤(東海大学 医学部)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 鵜飼 孝盛(防衛大学校 電気情報学群)
  • 田中 健一(慶應義塾大学 理工学部)
  • 高嶋 隆太(東京理科大学 理工学部)
  • 早川 達也(聖隷三方原病院 高度救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,108,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ドクターヘリの効率的かつ効果的な配備・利用について提言することである。
併せて、ドクターヘリの安全管理基準を作成する。
研究方法
本年度は、以下の4課題についてそれぞれ研究を実施した。
(1)ドクターヘリ配置の数理モデルの作成に関する研究:①日本外傷データバンク(JTDB)に登録された重症成人外傷のデータを用い、搬送時間区分ごとにロジスティック回帰モデルを用いてドクターヘリの生存退院に対する効果を検討。さらにドクター・ヘリレジストリ(JHEMS)のデータから救急車搬送時間と距離の関係について検討。②ドクターヘリ配置の数理モデルを作成した。搬送距離7km~50km人口および50~75km人口に、それぞれ1および0.5の重みを付け加算したものを評価指標に用い、様々な条件下で配置の最適化を行った。
(2)ドクターヘリレジストリによるドクターヘリの分析に関する研究:JHEMS登録症例の概要を集計し、重症成人外傷の転帰に対するドクターヘリの有効性を検討した。
(3)ドクターヘリの費用便益分析に関する研究:ドクターヘリに対する便益を算出するため、アンケート調査により支払意志額(WTP)を推定した。今年度は、特に県内の地域差について検討した。
(4)ドクターヘリ安全管理基準の作成に関する研究:①熟練したドクターヘリ医療クルーの意見を集約のうえ、医療クルーとして必要な要件や医療クルーに求められる教育について検討した。②医療クルーおよび運航関係者の意見を集約し、各基地病院で収集されたインシデント・アクシデントを全基地病院で共有するシステムを構築するため、共通のインシデント・アクシデント分類表と報告フォーマットについて検討。③ドクターヘリの運航要領・運用手順書について検討。以上①~③を踏まえて、「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を作成した。
結果と考察
(1)ドクターヘリ配置の数理モデルの作成に関する研究:①ドクターヘリでは傷病発生現場から収容先医療機関までの搬送時間10~40分で生存退院が有意に増加する。搬送時間10分は救急車搬送距離7kmに相当した。②数理モデルを用いて検討した結果、各県において自県内を出動対象として配置する場合、ドクターヘリの現行配置は概ね妥当と考えられた。また非カバー地域は県境付近に多く、地域連携が重要と思われた。
(2) ドクターヘリレジストリの分析に関する研究:ドクターヘリ搬送によって重症成人外傷の1か月脳機能カテゴリー良好例が有意に増加することが判明した。
(3) ドクターヘリの費用便益分析に関する研究:調査の結果、地域内の人口密度によって、WTPそのものやWTPに影響する因子が異なることが明らかになった。
(4)ドクターヘリの安全管理基準の作成に関する研究:「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を作成した。
結論
(1)数理モデルを用いてドクターヘリの最適配置を検討したところ、各県が自県内を出動対象としてドクターヘリを配置する場合、現状の配置は概ね妥当と考えられた。また非カバー地域は県境付近に多く、地域連携が重要と思われた。今後は本数理モデルを用い、様々な状況をシミュレートして研究できる。
(2)JHEMSのデータで重症成人外傷に対するドクターヘリの有効性を検討したところ、1か月脳機能カテゴリー良好例が有意に増加することが判明した。この結果は、さらに精緻化した検討が必要である。
(3)ドクターヘリに対する支払意思額(WTP)やこれに影響する因子は、地域内の人口密度によって異なることが判明した。
(4)医療クルーの教育、インシデント・アクシデント分類表と報告フォーマット、ドクターヘリの運航要領・運用手順書などについて検討のうえ、「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を作成した。今後は、これを全国基地病院に提供して安全管理の標準化をはかりたい。

公開日・更新日

公開日
2019-11-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201721037B
報告書区分
総合
研究課題名
ドクターヘリの適正配置・利用に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-028
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
猪口 貞樹(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高山 隼人(長崎大学病院 地域医療支援センター)
  • 荻野 隆光(川崎医科大学医学部 医学部)
  • 中川 雄公(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター)
  • 辻 友篤(東海大学 医学部 )
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 鵜飼 孝盛(防衛大学校 電気情報学群 情報工学科)
  • 高嶋 隆太(東京理科大学理工学部 経営工学科)
  • 田中 健一(慶應義塾大学理工学部 管理工学科 )
  • 早川 達也(聖隷三方原病院 高度救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ドクターヘリの効率的かつ効果的な配備について提言することが本研究の目的である。併せてドクターヘリおよびそれ以外の医療関連のヘリの安全管理基準についても検討する。
研究方法
(1) ドクターヘリ配置の数理モデルの作成に関する研究:ドクターヘリの搬送時間と生存退院に対する効果を分析した。これと先行研究に基づきドクターヘリ配置の数理モデルの評価指標を作成し、様々な条件下で最適配置の検討を行った。
(2) ドクターヘリレジストリの分析に関する研究:ドクターヘリレジストリ(JHEMS)のデータを集計し、さらに重症成人外傷の受傷1か月後の転帰に対するドクターヘリの有効性を検証した。
(3)ドクターヘリの費用便益分析に関する研究:ドクターヘリに対する支払意思額(WTP)を調査した。まず日本全国を対象とし、さらに同一県内の地域差について検討した。
(4) ドクターヘリの安全管理基準の作成に関する研究:専門家の意見を集約のうえ、医療クルーの教育方針、インシデント・アクシデント分類表と報告フォーマット、ドクターヘリの運航要領・運用手順書、についてそれぞれ検討した。
(5)ドクターヘリ以外の医療関連ヘリ安全管理基準の作成に関する研究:ドクターヘリ以外の医療関連ヘリの安全管理を検討するため、離島への医師派遣システムである長崎県のNagasaki Islands Medical Air System(NIMAS)事業の訪問調査を行った。
(6)患者搬送に用いるヘリコプターの機体に関する検討:単発エンジンの機体の活用について調査を行った。
結果と考察
(1)ドクターヘリ配置の数理モデルの作成に関する研究:ドクターヘリでは傷病発生現場から収容先医療機関までの搬送時間10~40分で生存退院が有意に増加する。搬送時間10分は救急車搬送距離7kmに相当した。ドクターヘリの対象人口は、全国で3,336万人と推定された。数理モデルを用いて検討した結果、各県において自県内を出動対象として配置する場合、現行配置の評価指標は評価指標最大化配置の95%以上であることから、ドクターヘリの現行配置は概ね妥当と考えられた。また非カバー地域は県境付近に多かった。
(2) ドクターヘリレジストリの分析に関する研究:ドクターヘリによって重症成人外傷の1か月脳機能カテゴリー良好例が有意に増加することが判明した。
(3) ドクターヘリの費用便益分析に関する研究:多くの地域でドクターヘリによる便益が費用を上回っていることが確認された。また地域内の人口密度によって、WTPそのものやWTPに影響する因子が異なることが明らかになった。
(4)ドクターヘリの安全管理基準の作成に関する研究:「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を作成した。
(5)ドクターヘリ以外の医療関連ヘリ安全管理基準の作成に関する研究:NIMAS事業では、洋上飛行を前提にした安全装備がなされていたが、悪天候への対応についてさらに検討が必要と思われた。
(6)患者搬送に用いるヘリコプターの機体に関する検討:重症患者を搬送する本邦ドクターヘリでは、現行通りに双発エンジンの機体を使用すべきと考えられた。一方、緊急性を要さない医師派遣や全身状態の安定した患者の搬送に対しては、単発エンジン機の活用も検討対象になると思われた。
結論
(1)ドクターヘリの対象人口は、全国3,336万人と推定された。数理モデルを用いた検討で、各県が自県内を出動対象としてドクターヘリを配置する場合、現行の配置は概ね妥当と考えられた。また非カバー地域は県境付近に多く、地域連携が重要である。今後、本数理モデルを用いて様々な状況をシミュレートして研究ができる。
(2)JHEMSの分析から、ドクターヘリでは重症成人外傷の1か月脳機能カテゴリーが良好となりやすいことが判明した。さらに精緻な検討が必要と考えている。
(3)多くの地域でドクターヘリによる便益が費用を上回っていることが確認された。ドクターヘリに対するWTPは人口密度の低い地域で高いが、人口が極めて少ないと総便益が低くなるため、一部の僻地・離島では便益が費用を下回った。本邦全体では便益が費用を上回っていると考えられる。
(4)専門家の意見を集約して「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」を作成した。今後は、これを全国基地病院に提供して安全管理の普及をはかりたい。
(5)離島への医師派遣システムでは、洋上飛行に加え、悪天候への対応の拡充が必要と思われた。
(6)重症患者を搬送するドクターヘリでは、双発エンジンの機体を使用すべきであるが、緊急性を要さない医師派遣や安定した患者の搬送には、単発エンジン機の活用も検討対象になると思われた。

公開日・更新日

公開日
2019-11-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721037C

収支報告書

文献番号
201721037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,040,000円
(2)補助金確定額
4,040,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 547,929円
人件費・謝金 0円
旅費 1,191,068円
その他 1,369,003円
間接経費 932,000円
合計 4,040,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-17
更新日
-