職種の違いを考慮した医療従事者養成課程におけるB型肝炎に関する教育資材の開発

文献情報

文献番号
201721029A
報告書区分
総括
研究課題名
職種の違いを考慮した医療従事者養成課程におけるB型肝炎に関する教育資材の開発
課題番号
H29-医療-一般-012
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 大(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 田守昭博(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 )
  • 河田則文(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 )
  • 中原寛和(大阪市立大学大学院医学研究科 歯科・口腔外科学)
  • 是永匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
  • 津田泰宏(大阪医科大学看護学部 看護学科)
  • 井上貴子(名古屋市立大学大学院医学研究科 共同研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は医療従事者養成課程において、活用可能なB型肝炎に関する正しい知識教育を行うための教育資材を開発し、教育展開例やその評価指標を提案することを目的として行った。この研究目的を達成するため、多施設共同により医療従事者養成課程における教育に精通した者を複数職種含んだ研究班体制を組織した。医科領域のみでなく、歯科領域においても、歯科医師をはじめとした歯科医療従事者の教育現場における教育内容の充実を、今後より一層図っていくことが求められており、B型肝炎に特化した適切な教材による教育も必要とされている。
研究方法
紙媒体(リーフレット)の他、e-learning用の動画の教育資材作成を行った。作成に先立って医学生向け教科書、国家試験対策本の他、肝炎情報センターのホームページなどを有効に活用し、企業や拠点病院等が作成する患者向け及び医療従事者向けリーフレットまたはウエブサイトなど、参考資料を可能な限り収集した。収集した資料をベースに最新の情報を盛り込んでリーフレット試作版を作成した。作成した試作版に対しては、患者会などを通じて患者・家族の声を聞く機会を確保した。
 作成した資材を用いた教育の展開として、大阪市立大学医学部4年生の講義前の予習教材として活用した。資材は本学の教育研究用情報処理システムにて提供している授業支援システム「Moodle」にアップして学生が視聴できるようにし、学習した後にアンケートを行い、満足度、改善点についての意見を収集した。またセルフアセスメント問題にも解答を求めた。
 また大阪医科大学看護学部1年生と4年生においても学生の講義の一環として活用した。教育資材はリーフレット配布するとともに、プロジェクターを用いてスライドとして投影して使用し、学習した後にアンケートを行い、改善点についての意見を収集した。またセルフアセスメント問題の自己採点結果も回収し、理解度を調べた。
結果と考察
リーフレットは『これだけは知っておきたいB型肝炎ガイド』と題して、「医学生/医師・歯学生/歯科医師向け」(榎本、河田、是永、田守、中原担当)、「看護学生・看護師・歯科衛生士向け」(津田担当)、「臨床検査技師を志す学生・臨床検査技師向け」(井上担当)の3点を作成した。e-learning用の動画は30分で視聴できるようコンパクトにまとめた。教育資材の内容として、①疫学、②自然経過、③診断、④再活性化、⑤感染予防、⑥治療の6項目に分け、各項の後にセルフアセスメント問題を設けた。
 大阪市立大学医学部4年生を対象に行ったアンケートでは、99名のうち67名(68%)から教育資材の評価に関して回答を得た。結果として、図表、説明文、セルフアセスメント問題いずれの項目についても、各質問項目に対して76~96%の学生が「わかりやすい、またはとてもわかりやすい」と評価した。セルフアセスメント問題の得点について49名(73%)の学生が6問全問正解した。問題別の正答率については、問題番号2「自然経過」についてが最も高く(88%)、問題番号3「診断」についてが最も低く(82%)、多少の格差はあったもののいずれも高い値であった。
 大阪医科大学看護学部1年生と4年生を対象に行ったアンケートでは、図表に関しては二学年ともに約70%以上が「わかりやすい」と評価していた一方で、図の説明文に関しては「わかりにくい」と答えていた学生の割合がやや増加した。わかりにくかった理由として「文章の文字の色が単一で重要点がわかりにくかった」、「文字量が多くて読みづらかった」などが挙げられていた。セルフアセスメント問題に関しては、分かりにくいと感じた学生も存在したが、全体的には50%の学生が「わかりやすい」と評価していた。自由記載欄において「イラストが親しみやすかった」、「知識がなかったので学べてよかった」などの好意的な意見が合った反面、「内容が難しかった」、「情報量が多かった」、「ここまでの知識が必要なのか」という意見などもみられた。セルフアセスメント問題の点数は、二学年ともに90%以上の学生が合計6問中の4問以上正解していた。個別の正解率を検討すると特に問題3、4の正答率がやや低い傾向であった。
結論
医療従事者養成課程におけるB型肝炎に関する教育資材『これだけは知っておきたいB型肝炎ガイド』を開発した。職種の違いを考慮し、リーフレットとして「医学生/医師・歯学生/歯科医師向け」(資料1)、「看護学生・看護師・歯科衛生士向け」(資料2)、「臨床検査技師を志す学生・臨床検査技師向け」(資料3)の3点と、e-learning用の動画も作成した。作成した教育資材について実際の教育現場で試用し、アンケートによりその有用性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
2023-07-20

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
看護職は患者に最も身近に接する医療従事者であるために、そのような患者を、適切な治療に結びつけるためにはB型肝炎の正しい知識を持つことが必要である。今回の教育資材はそのような点を考慮し、看護学生向けの教材においてもB型肝炎の疫学から自然経過、そして診断のための抗原・抗体検査の知識、感染予防の知識、そして治療までを含めている。さらに、B型肝炎患者がいわれもない差別を受けることを避けるために、実際の患者さんの声や体験も盛り込んでいる。今回の教育資材は医療従事者の養成課程から介入することになる。
臨床的観点からの成果
臨床検査は診断・治療に不可欠な情報であり、それに携わる臨床検査技師の業務内容は多岐にわたる。臨床検査を通じてB型肝炎患者と関わる機会は多く、多様である。臨床検査技師養成課程でのB型肝炎教育、および臨床検査技師のB型肝炎に関する知識の現状を把握し、B型肝炎に関する最新知識の充実を目指して資材を作成した。臨床検査技師養成課程において詳細に教育が行われているB型肝炎の自然経過(臨床検査成績)や診断に関しては、さらに専門的内容を加えることで、臨床検査技師の特性に配慮した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
井上貴子他 電子カルテのアラート・オーダリング機能を用いた肝炎ウイルス検査支援~B型肝炎ウイルス再活性化予防と早期発見~ JJCLA(日本臨床検査自動化学会雑誌)(in press)他
原著論文(英文等)
5件
Enomoto M, Nishiguchi S, Tamori A, et al. Hepatol Res. 2018; 48(6): 459-468他
その他論文(和文)
4件
是永匡紹 抗ウイルス療法の実施率向上を目指して: 厚労省研究班の取り組み 「消化器・肝臓内科」3(3) 286-294.2018他
その他論文(英文等)
2件
Okada M, Enomoto M, Kawada N, et al. Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2017; 11(12): 1095-1104他
学会発表(国内学会)
14件
榎本大、田守昭博、河田則文. B 型慢性肝疾患に対するラミブジンまたはエンテカビルからテノホビルへの切り替えの成績第42回日本肝臓学会西部会(福岡) 2017.11.30-12.1他
学会発表(国際学会等)
2件
Inoue T, Goto T, Kusumoto S, et al. AASLD The Liver Meeting, Oct. 20-24, 2017. Washington DC, USA他
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
大阪市立大・肝胆膵内科HPで公開した。http://www.med.osaka-cu.ac.jp/liver/education/hepatitis-b-guide.shtml

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-05-31
更新日
2023-07-20

収支報告書

文献番号
201721029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,850,000円
(2)補助金確定額
3,850,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,393,732円
人件費・謝金 0円
旅費 212,974円
その他 1,665,487円
間接経費 1,150,000円
合計 4,422,193円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
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