大規模データを用いた、地域の医療従事者確保対策に関する研究

文献情報

文献番号
201721026A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模データを用いた、地域の医療従事者確保対策に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 靖志(愛知医科大学 医学部地域医療教育学寄附講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科 医療システム学分野 医療経済・病院経営学部門)
  • 山下 暁士(名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター)
  • 林田 賢史(産業医科大学病院 医療情報部)
  • 村上 玄樹(産業医科大学病院 医療情報部)
  • 石川 ベンジャミン光一(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 臨床経済研究室長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 小林大介 名古屋大学(平成29年6月1日~29年11月30日)→神戸大学(平成29年12月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模な診療データから医療需要や供給状況を分析し、医療従事者確保に対しての評価指標を提案し、また、医学教育や卒後研修等におけるへき地等に関わる経験等とその後のキャリアの関係を検討することにより、医療従事者確保の具体策を考える際の基礎データや好事例の提供、それに基づいた医療従事者確保に向けた有効な策を提案することを目的としている。そこで3年計画の1年目である今年度は対象として研究班員の所属機関がある愛知県、福岡県を中心とし、研究目的は以下の2つとした。
1.医学生における地域医療へ興味を感じてもらうための教育と効果の好事例を収集する
2.DPC公開データを用いて、地域の医療提供状況を解析する
研究方法
1.医学生における地域医療へ興味を感じてもらうための教育と効果の好事例を収集する
愛知医科大学の地域医療実習の際に、学生にはポートフォリオの作成をさせている状況があるとのことで、そのポートフォリオの作成や評価の際に、学生が地域医療に好意的に捉える事例を収集することとした。
2.DPC公開データを用いて、地域の医療提供状況を解析する
福岡県内のデータを取得し、各医療機関の症例数(全体、がん、急性心筋梗塞、脳梗塞)を手術有無に分けて分析し、県内各医療圏での医療実績の状況を把握した。また愛知県内のデータを取得し、各医療圏における医療機関ベースの症例数と患者居住地ベースの症例数から、充足率を算出、また手術有無ごとに主要診断群分類(MDC)別病床100床あたり件数や人口千人あたり件数も分析し、県内各医療圏での医療実績の状況を把握した。
なお、研究に使用するDPC公開データは、厚生労働省「DPC導入の影響評価に関する調査」の集計結果ページから取得し、各研究機関においてデータベース化を行い保存・使用した。
結果と考察
地域医療教育の好事例として愛知医科大学の地域医療実習の際にポートフォリオとして明確な目標・目的を明記させて振り返りを行い、経験の共有と協同学修と評価により、地域医療実習での体験を好意的にとらえる学生が多く、教育段階からの介入が地域医療従事者確保に影響することが示唆された。
また、DPC公開データの分析からは、愛知県の場合、充足率においては県全体に比べ有意に高いMDCがみられた医療圏は、名古屋(MDC08, 16, 17以外)、尾張東部(MDC17以外)、知多半島(MDC17)、西三河南部西(MDC04, 05, 06, 11, 16)、東三河南部(MDC05, 16)であり、大学病院がある医療圏で多くのMDCにおいて充足率が高くなっていた。逆に、充足率が低いMDCが見られた医療圏は名古屋、尾張東部以外のすべての医療圏であるが、特に尾張中部、東三河北部ではすべてのMDCにおいて充足率が有意に低くなった。
福岡県においての分析では、朝倉、有明、直方・鞍手、田川、京築では出現していないMDCがみられた。なお、症例数を見ると九州大学病院(福岡・糸島医療圏)が一番多く、次いで久留米大学病院(久留米医療圏)、独立行政法人国立病院機構九州医療センター(福岡・糸島医療圏)、飯塚病院(飯塚医療圏)、福岡大学病院(福岡・糸島医療圏)、財団法人平成紫川会小倉記念病院(北九州医療圏)と、計6施設が1万症例を超えていた。しかしながら県内ではすべてのMDCに対する診療実績が確認され、疾患別にみても、がん、急性心筋梗塞、脳梗塞において、しっかりと県内で実績の多い医療施設があり、医療計画的にも対応ができていることが確認された。
ただし、DPC公開データで各地域で実績がみられなかった理由としては、1.個人情報保護でマスクされた、2.DPC対象病院以外で診療が行われた、3.その地域に対象となる疾患の患者が存在していなかった、4.その地域の医療施設ではその疾患に対する診療が行えず他の地域に流出していた、の4通りが考えられるが、DPC公開データからでは判断ができない状況であった。こうした点も踏まえ、各地域での診療実績を精緻に検討するために、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用することが望ましいと考える。
結論
将来の医療提供体制を整えるために実施されている地域医療構想や医療計画策定の1要素である医療従事者の確保に対する対策を検討することが本研究班の目的である。そこで、まずはDPC公開データを使って、福岡県内および愛知県内の診療実績を確認した結果、一定の現状の把握はできたが、今後より精緻な分析のためには、NDBなどの全数での実績確認が必要である。また、こうした診療実績の経時変化と、実際に実施された医療従事者確保の方策、医師や学生の地域医療への従事に対する意識調査結果との比較を行うことで、医療従事者確保の方策とその効果の検討を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2019-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201721026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,940,000円
(2)補助金確定額
4,940,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,873,680円
人件費・謝金 0円
旅費 588,840円
その他 337,480円
間接経費 1,140,000円
合計 4,940,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
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