文献情報
文献番号
201721022A
報告書区分
総括
研究課題名
医療従事者らの医療安全スキル向上に向けたe-learningシステム開発に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 英夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生体集中管理学分野)
研究分担者(所属機関)
- 藤原 正樹(宮城大学・事業構想学群)
- 平林 直樹(広島市立安佐市民病院)
- 相馬 孝博(千葉大学医学部附属病院)
- 池田 哲夫(静岡県立大学・経営情報学部)
- 金澤 寛明(静岡県立大学・看護学部)
- 兼児 敏浩(三重大学・医学部附属病院)
- 木下 淳博(東京医科歯科大学大学院・統合教育機構)
- 後藤 康志(新潟大学・教育・学生支援機構)
- 浦松 雅史(東京医科大学・医療の質・安全管理学講座)
- 水野 信也(静岡理工科大学・総合情報学部)
- 小野寺 良二(鶴岡工業高等専門学校・創造工学科)
- 藤澤 由和(宮城大学・事業構想学群)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,487,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療安全に関しては,医療安全管理者養成向けなど既に多くのe-learningシステムが提供されているが,それらに共通する特徴は,受講者がWeb上の動画等のコンテンツをオンディマンドで視聴し,その理解度をクイズなどにより評価するというもので,学習形態そのものは,いわゆる座学的な学習形態の延長線上にあるといえる.
その一方で,近年,座学中心の教授法が受動的であることから生じる課題を克服するために,アクティブ・ラーニングや反転授業などの教授法が示されてきている.これらの教授法は,受動的な学習から,より能動的な学習への転換に焦点があり,この受講者の能動性こそが,学習内容の習熟に関して高い効果があることが示唆されてきている.
そこで本研究はe-learningシステムという情報通信機器環境の特性を活かした能動的な学習システムの具体的な教授法の精緻化およびその内容に関する検証と,これらを組合せたe-learningシステムの実装レベルにおける評価,検証を行うことを目的とした.
その一方で,近年,座学中心の教授法が受動的であることから生じる課題を克服するために,アクティブ・ラーニングや反転授業などの教授法が示されてきている.これらの教授法は,受動的な学習から,より能動的な学習への転換に焦点があり,この受講者の能動性こそが,学習内容の習熟に関して高い効果があることが示唆されてきている.
そこで本研究はe-learningシステムという情報通信機器環境の特性を活かした能動的な学習システムの具体的な教授法の精緻化およびその内容に関する検証と,これらを組合せたe-learningシステムの実装レベルにおける評価,検証を行うことを目的とした.
研究方法
本研究は,医療従事者が医療安全に関するスキルを向上させうる効果的なe-learningシステムの構築を目指すなかで,e-learningという情報通信機器環境の特性を活かした能動的な学習システムを構築するために「動画認識の把握」等の精緻化を進め,さらに個々の受講者の学習記録データを効率的かつ低廉な形で保持しうるLearning Management System(LMS)の構築を試みた.
また医療安全に関わる既存のe-learningシステムに関する具体的かつ実践的な導入の実状把握に関する,基礎的な知見を収集するために,当該システムに関する提供側の情報に関して一般に公開された情報を可能な限り網羅的に収集し,その分析と検討を実施した.また実際の利用に関しても,国立大学病院等を中心に調査を実施し,情報の収集を行った.
また医療安全に関わる既存のe-learningシステムに関する具体的かつ実践的な導入の実状把握に関する,基礎的な知見を収集するために,当該システムに関する提供側の情報に関して一般に公開された情報を可能な限り網羅的に収集し,その分析と検討を実施した.また実際の利用に関しても,国立大学病院等を中心に調査を実施し,情報の収集を行った.
結果と考察
医療安全を現場レベルで向上させるためには,たんに知識を習得するだけでは十分ではなく,能動的にそれらを実際に活用しうる環境が必要であると考えられる.そうした意味で,本研究において開発を試みた当該システムは,こうした能動性を技術的には担保しうるものである可能性が高い.さらに医療安全をその主要内容とする既存のe-learningシステムは多数存在する一方で,今後必要とされる,医療安全管理体制整備に向けた,効果のある職員研修のあり方,事故調査への対応能力向上に向けた方策,より機能分化した医療環境における医療安全対応スキルの取得などに関わるより細やかな支援などに対しては,適切に対応するものとなっていない可能性が高いと考えられ,より抜本的な方策が求められているといえる.
本研究において開発を試みたLMSを用いることにより,ヒューマンファクターに関する要素が複雑に絡み合い,たんなる知識だけでは具体的な状況での適応が難しいと考えられる医療安全に関する知見を,より受動的な形で学びうる可能性が高いと考えられる.
こうしたシステムは,我が国においては一般的な座学の延長線上に位置する既存の医療安全に関するe-learningシステムとは一線を画するものであると考えられる.
本研究において開発を試みたLMSを用いることにより,ヒューマンファクターに関する要素が複雑に絡み合い,たんなる知識だけでは具体的な状況での適応が難しいと考えられる医療安全に関する知見を,より受動的な形で学びうる可能性が高いと考えられる.
こうしたシステムは,我が国においては一般的な座学の延長線上に位置する既存の医療安全に関するe-learningシステムとは一線を画するものであると考えられる.
結論
医療安全を現場レベルで向上させるためには,たんに知識を習得するだけでは十分ではなく,能動的にそれらを実際に活用しうる環境が必要であると考えられる.そうした意味で,本研究において開発を試みた当該システムは,こうした能動性を技術的には担保しうるものであることが判明した.
また医療安全をその主要内容とする既存のe-learningシステムは多数存在する一方で,今後必要とされる,医療安全管理体制整備に向けた,効果のある職員研修のあり方,事故調査への対応能力向上に向けた方策,より機能分化した医療環境における医療安全対応スキルの取得などに関わるより細やかな支援などに対しては,適切に対応するものとなっていない可能性が高いといえた.
また医療安全をその主要内容とする既存のe-learningシステムは多数存在する一方で,今後必要とされる,医療安全管理体制整備に向けた,効果のある職員研修のあり方,事故調査への対応能力向上に向けた方策,より機能分化した医療環境における医療安全対応スキルの取得などに関わるより細やかな支援などに対しては,適切に対応するものとなっていない可能性が高いといえた.
公開日・更新日
公開日
2018-08-20
更新日
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