文献情報
文献番号
201721015A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな治療手法に対応する医療放射線防護に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-014
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
細野 眞(近畿大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 高橋 健夫(埼玉医科大学 医学部)
- 赤羽 正章(国際医療福祉大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、放射線医療において目覚ましく進歩し続けている高度な放射線治療機器や治療用放射性薬剤による治療(RI内用療法)に対応するための法令や指針を検討して、国民の生命を守り健康を向上することに繋がる放射線利用の推進と放射線防護体制の確立に寄与することを目的とする。そのため、国内の放射線医療の実態とニーズを調査して資料を蓄積し、国際放射線防護委員会(ICRP)や国際原子力機関(IAEA)などから示される国際的な指針に対する国内法令のハーモナイゼーションを図り、さらに医療法およびその関連法令と他の法令のハーモナイゼーションにも留意して、わかりやすい規制のあり方を検討し、放射線治療の開発を促進し国民がその恩恵を受けることのできるような環境の整備を目指す。また放射線治療だけではなく、放射線医療全般における放射線防護の課題についても検討に含める。
研究方法
分担課題ごとに医療放射線防護について国際動向や国内の現状などに関する資料を収集し、国際動向について情報をまた実測や計算によってデータを取得して、それらの分析・取りまとめを行い、求められる指針やマニュアル等の案を作成した。検討した課題は以下の通りである。1-1 臨床研究におけるMRI室での可搬型PET装置の適正使用に関する検討、1-2 甲状腺癌の放射性ヨウ素(131I)内用療法:甲状腺全摘術後の残存甲状腺の破壊(アブレーション)(1)―131I 1,110MBq(30mCi)を超える線量による外来治療における安全管理に関する研究―、1-3 診療用放射線照射器具における放射線安全確保に関する検討、2 医療放射線防護の国内実態に関する研究、3 放射線治療における放射線防護に関する研究、4 放射線診断・IVRにおける放射線防護に関する研究(IVR術者の水晶体等価線量)。
結果と考察
1-1 「臨床研究におけるMRI室での可搬型PET装置の適正使用マニュアル(案)」を作成した。このマニュアルでは、MRI室で可搬型PET装置を使用するに際して、患者等の安全確保を旨とし、撮像にあたる診療従事者に対してPET検査に係る放射線安全及びMRI装置の基本性能の両方面に精通することを求めている。 1-2 I-131投与を受けた患者において、体表面から検出器中心まで1メートルの点において1cm線量当量率、頚部の集積率を測定した。いずれの患者の頚部の集積率も、医薬安発第70号通知で用いている集積率(5%)よりも低い値であることが示された。1-3 退出基準は、ヨウ素-125シード(前立腺に適用した場合)について、適用量あるいは減衰を考慮した残存放射能に基づく基準(MBq)1,300を2,000へ、患者の体表面から1メートル離れた地点における1センチメートル線量当量率(μSv/h)1.8を2.8へ、金-198グレインについて、適用量あるいは減衰を考慮した残存放射能に基づく基準(MBq)700のまま、患者の体表面から1メートル離れた地点における1センチメートル線量当量率(μSv/h)40.3を48.0へとする。2 医療現場での放射線管理の課題に対して、関係者の理解が得られる具体的な規制整備の方向性や管理手法を提示した。3 放射線治療の関連学会等と協議して、線量計校正ならびに外部放射線治療装置の線量校正の普及のための法制化を検討し、高精度な放射線治療の普及・均てん化に向けて整備を行っていくこととした。4 防護グラスと顔面の距離を縮めることは遮蔽効果を高める傾向にあり、特にグラス下縁と顔面との距離の重要性が示唆された。
結論
本研究において、放射線防護の観点から放射線治療機器や放射性薬剤による放射線治療を中心に、国際的指針とのハーモナイゼーションを図りながら、放射線医療を安全に有効に実施するための環境整備に向けた資料を示すことができたと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2021-11-16
更新日
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