文献情報
文献番号
201721014A
報告書区分
総括
研究課題名
人生の最終段階における医療のあり方に関する調査の手法開発及び分析に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-013
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究分担者(所属機関)
- 阿部 智一(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
- 柏木 聖代(横浜市立大学 医学部 看護学科)
- 堀田 聰子(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
- 浜野 淳(筑波大学 医学医療系)
- Mayers Thomas(メイヤーズ トーマス)(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は平成29年度に厚生労働省が実施した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」に向け、調査に盛り込むべき概念整理及び計測方法(質問項目等)を開発し、当該調査の実施にかかる提言を行うこと、及び本調査のデータを活用した追加的な分析により、今後の人生の最終段階における医療等のあり方の検討に資するデータを得ることを目的とした。
研究方法
1.「人生の最終段階における医療に関する意識調査」調査票案作成に向けての事前調査
1-(1)自治体調査、1-(2)学会調査のデータ解析、1-(3)救急調査の実施及びデータ解析を行い、1-(4)高齢者施設から救命救急センターへ搬送された高齢救急患者の現状も調査した。これらと平成28年度調査結果より、厚生労働省へ「人生の最終段階における医療に関する意識調査(仮)」の調査票案を作成し提示した。その後厚生労働省で検討の末、平成29年12月に意識調査実施となった。
2.「人生の最終段階における医療に関する意識調査」実施後データ分析
意識調査で収集されたデータを用い、2-(1)人生の最終段階における医療について話し合うことに関連する要因、2-(2)人生の最終段階における希望する医療・療養の場所に関連する要因、2-(3)医師と看護師におけるアドバンスケアプランニング(以下、ACP)の実践状況と関連因子、2-(4)医療施設と介護保険施設におけるACPの現状と課題、2-(5)施設長に対する意識調査から見た病院における次の連携先への引継ぎ内容と人生の最終段階に対する支援体制との関連の調査を実施した。
1-(1)自治体調査、1-(2)学会調査のデータ解析、1-(3)救急調査の実施及びデータ解析を行い、1-(4)高齢者施設から救命救急センターへ搬送された高齢救急患者の現状も調査した。これらと平成28年度調査結果より、厚生労働省へ「人生の最終段階における医療に関する意識調査(仮)」の調査票案を作成し提示した。その後厚生労働省で検討の末、平成29年12月に意識調査実施となった。
2.「人生の最終段階における医療に関する意識調査」実施後データ分析
意識調査で収集されたデータを用い、2-(1)人生の最終段階における医療について話し合うことに関連する要因、2-(2)人生の最終段階における希望する医療・療養の場所に関連する要因、2-(3)医師と看護師におけるアドバンスケアプランニング(以下、ACP)の実践状況と関連因子、2-(4)医療施設と介護保険施設におけるACPの現状と課題、2-(5)施設長に対する意識調査から見た病院における次の連携先への引継ぎ内容と人生の最終段階に対する支援体制との関連の調査を実施した。
結果と考察
1.「人生の最終段階における医療に関する意識調査」調査票案作成に向けての事前調査
1-(1)自治体調査:「財政力指数」が高い自治体ほど、有意に普及啓発の取り組みが行なわれていた。1-(2)学会調査:人生の最終段階に関する用語を学会用語集に収載していた学会は7学会であった。1-(3)救急調査:心停止後低酸素性脳症患者には治療制限を考え、悪化時の新たな介入はしない傾向があった。1-(4)高齢者施設から救命救急センターへ搬送された高齢救急患者の現状調査:患者背景のみからの治療制限は、回復可能な患者の医療が過剰に制限される懸念が示唆された。
2.「人生の最終段階における医療に関する意識調査」実施後データ分析
2-(1)人生の最終段階における医療について話し合うことに関連する要因: 65歳以上の対象者では、かかりつけ医がある、5年以内に病院での介護経験があることが話し合うことに有意に関連していた。2-(2)人生の最終段階における希望する医療・療養の場所に関連する要因:希望する療養場所として最多であったのは、想定疾病が末期がんの場合は自宅、慢性の重い心臓病の場合は医療機関、認知症の場合は介護施設とそれぞれ異なっていた。2-(3)医師と看護師におけるACPの実践状況と関連因子:医師・看護師のACP実践に関連する因子として、死が近い患者と関わりが多いこと、関連する研修の受講があることが示された。2-(4)医療施設と介護保険施設におけるACPの現状と課題:病院ではACPの実践を行っていると答えた施設長は24.7%で、介護保険施設36.3%より少なかった。2-(5)施設長に対する意識調査から見た病院における次の連携先への引継ぎ内容と人生の最終段階に対する支援体制との関連:治療方針だけでなく療養の希望も引き継いでいる病院は、人生の最終段階の話し合いが十分に行われている、複数の専門家からなる委員会がある、ACPの実践を検討している、職員を意思決定支援の研修へ参加させている、話し合った内容を日々のミーティングで共有している割合が有意に高かった。
以上より得られた提言を示す。国民に対しては、人生の最終段階における医療の話し合いの促進と関連があるかかりつけ医を持つことを推進し、人生の最終段階における医療や療養を受けたい場所を話し合う際には、想定される疾患をいくつか定めて行うことがよいと考えられる。医療介護提供者に対しては、介護を担う家族は、その実体験が自身の人生の最終段階の医療を考えることと関連していることを念頭におき、家族のケアにも配慮が必要であると考える。また、医師や看護師がACPを実践するための研修の拡充が重要と考えられる。病院や介護保険施設においては、患者が望む医療を積極的に支援できるような取り組みを検討する必要があり、特に病院においては整備が重要である。
1-(1)自治体調査:「財政力指数」が高い自治体ほど、有意に普及啓発の取り組みが行なわれていた。1-(2)学会調査:人生の最終段階に関する用語を学会用語集に収載していた学会は7学会であった。1-(3)救急調査:心停止後低酸素性脳症患者には治療制限を考え、悪化時の新たな介入はしない傾向があった。1-(4)高齢者施設から救命救急センターへ搬送された高齢救急患者の現状調査:患者背景のみからの治療制限は、回復可能な患者の医療が過剰に制限される懸念が示唆された。
2.「人生の最終段階における医療に関する意識調査」実施後データ分析
2-(1)人生の最終段階における医療について話し合うことに関連する要因: 65歳以上の対象者では、かかりつけ医がある、5年以内に病院での介護経験があることが話し合うことに有意に関連していた。2-(2)人生の最終段階における希望する医療・療養の場所に関連する要因:希望する療養場所として最多であったのは、想定疾病が末期がんの場合は自宅、慢性の重い心臓病の場合は医療機関、認知症の場合は介護施設とそれぞれ異なっていた。2-(3)医師と看護師におけるACPの実践状況と関連因子:医師・看護師のACP実践に関連する因子として、死が近い患者と関わりが多いこと、関連する研修の受講があることが示された。2-(4)医療施設と介護保険施設におけるACPの現状と課題:病院ではACPの実践を行っていると答えた施設長は24.7%で、介護保険施設36.3%より少なかった。2-(5)施設長に対する意識調査から見た病院における次の連携先への引継ぎ内容と人生の最終段階に対する支援体制との関連:治療方針だけでなく療養の希望も引き継いでいる病院は、人生の最終段階の話し合いが十分に行われている、複数の専門家からなる委員会がある、ACPの実践を検討している、職員を意思決定支援の研修へ参加させている、話し合った内容を日々のミーティングで共有している割合が有意に高かった。
以上より得られた提言を示す。国民に対しては、人生の最終段階における医療の話し合いの促進と関連があるかかりつけ医を持つことを推進し、人生の最終段階における医療や療養を受けたい場所を話し合う際には、想定される疾患をいくつか定めて行うことがよいと考えられる。医療介護提供者に対しては、介護を担う家族は、その実体験が自身の人生の最終段階の医療を考えることと関連していることを念頭におき、家族のケアにも配慮が必要であると考える。また、医師や看護師がACPを実践するための研修の拡充が重要と考えられる。病院や介護保険施設においては、患者が望む医療を積極的に支援できるような取り組みを検討する必要があり、特に病院においては整備が重要である。
結論
本研究により人生の最終段階における医療に対する多側面の実態を明らかにすることができた。また、国民がより質の高い人生の最終段階の医療を受けるための具体的な政策提言につながる結果が得られたことに加え、今後取り組むべき課題の示唆につながった。
公開日・更新日
公開日
2020-03-11
更新日
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