文献情報
文献番号
201721010A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期搬送に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター総合周産期母子医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 楠田 聡(東京女子医科大学)
- 岩田 欧介(名古屋市立大学 新生児小児医学分野)
- 長 和俊(北海道大学病院周産母子センター)
- 池田 智明(三重大学産婦人科学)
- 大田えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院看護研究科国際看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
【広域搬送の適切なあり方に関する研究】総合・地域周産期センター、中核病院の役割分担を含め広域搬送システムを提言する。【動画通話による一次施設からの情報収集・トリアージ・搬送システム確立に関する研究】地域の周産期センターと一次産科施設との間で、既存のビデオ通話ネットワークを利用した周産期医療資源の機能的集約可能性を検証する。【広域におけるバックトランスファーの問題点と解決策に関する研究】広域におけるBTの問題点と解決策を提案する。【周産期母子医療センターの施設基準と評価に関する研究】総合・地域周産期母子医療センターの評価法を提言する。【全国の妊産婦重症搬送事例や妊産褥婦死亡事例のデータ収集できる体制整備と適切な母体救命に必要な知識の普及手段の開発に関する研究】全国の妊産褥婦重症搬送事例のデータ収集の一元化と母体救命システム確立を目指す。
研究方法
【広域搬送の適切なあり方に関する研究】全国の総合周産期母子医療センターと小児総合医療施設に対し、自施設および周辺における新生児搬送に関連した資源や新生児搬送コーディネーターシステムの現状とに関して調査を行う。【通話による一次施設からの情報収集・トリアージ・搬送システム確立】中核施設に設置した動画専用端末を利用し、一次産科施設からの動画通信で呼吸器疾患などのトリアージや搬送手段の決定を試行する。【周産期母子医療センターの施設基準と評価に関する研究】既存データの解析と新たに作成した評価用紙を用いて、総合及び地域周産期母子医療センターの評価を試み、質問項目の妥当性を検証する。【広域におけるバックトランスファーの問題点と解決策に関する研究】北大学病院周産母子センターの入退院情報を解析し、BTの実施状況と必要な費用を明らかにする。【全国の妊産婦重症搬送事例や妊産褥婦死亡事例のデータ収集できる体制整備と適切な母体救命に必要な知識の普及手段の開発に関する研究】妊産褥婦重症搬送事例、死亡事例のデータを一元的に収集する日本母体救命システムに蓄積されたデータの解析を行う。
結果と考察
【新生児搬送車両の運用】新生児搬送は搬送に関係する施設間で完結するのではなく、少なくとも隣接した自治体間で周産期医療センターのネットワークを作る必要があり、加えて平時のみならず災害発生時にも「機能する広域搬送ネットワーク」を作るためにも日頃から地域医療ネットワークの中に新生児の広域搬送を協力して運用するシステムを作り込むことが急務である。【災害発生時の新生児搬送】既存の新生児用救急車は、災害発生時に低体温など環境変化に弱い新生児の搬送に新生児救急車を活用できる具体策が必要である。【広域におけるバックトランスファーの問題点と解決策】札幌医療圏において新生児のBTは定着しておらず、その背景には、搬送の費用に対する確立した補助がないこと、搬送に人手がかかること、および家族が退院まで高次施設で医療を受けることを希望する傾向がある。【全国の妊産婦重症搬送事例や妊産褥婦死亡事例のデータ収集できる体制整備】妊産婦死亡例の検討に地域メディカルコントロール協議会なども参画させ、死亡例のさらなる抑制、生存例のQOLの向上を目指した協働関係の構築が求められる。
結論
【広域搬送の適切なあり方】都道府県単位で完結している現在のシステムでは広域搬送に柔軟に対応することができない。高齢化など人口動態や人的資源の確保と規模災害発生を念頭に、より現実的な地域の実情を反映した「周産期医療圏」へと見直す必要がある。新生児搬送用救急車・ドクターカーは重症新生児の転院搬送に極めて有用な手段であり、DMATなど既存の体制との調整や、車両運用体制の整備など全国的な体制の構築を急ぐ必要がある。【遠隔診断システムの構築と利用】既存通信手段を有効に活用する遠隔診断システムの構築により広域搬送の安全とリソースの節減に貢献する可能性が強く示唆され、同時に遠隔診断に欠かせない客観的診断アルゴリズムを確立できた。【周産期母子医療センターの施設基準と評価】現行の総合・地域周産期母子医療センター NICU の機能評価方法では、施設を全体として評価することは困難で、各センターがその地域 で求められている役割に合わせた施設評価項目および加点数の精緻化が必要である。【広域におけるバックトランスファーの問題点と解決策】北海道でBTが定着していなかった現状を考慮すると、今後全国でも意図的にBTを推進する方策が必要になる可能性が高い。【全国の妊産婦重症搬送事例や妊産褥婦死亡事例のデータ収集できる体制整備と適切な母体救命に必要な知識の普及手段の開発】構築された救急隊を含む総合的な妊産婦急変初期診療コース(プログラム)を全国展開するシステムを推進する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2019-05-16
更新日
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