文献情報
文献番号
201721007A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科ユニット給水システム純水化装置の開発に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
江草 宏(東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野)
研究分担者(所属機関)
- 高橋信博(東北大学大学院歯学研究科 口腔生化学分野)
- 山田将博(東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,347,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、歯科用ユニット給水系の水質について現状を調査し、その水質が水道法や水質基準に関する省令の基準を満たさない場合には、経済性、実効性および実現性の高い方策を考案し、新たな技術開発および歯科用ユニット給水系における院内感染対策ガイドラインの提案に繋げることである。
研究方法
歯科用ユニットの水質管理方策を検討するために、東北大学病院で使用されている歯科用ユニットを用い、『市販の外付け洗浄装置』および『高濃度薬液(1%水酸化ナトリウム)を用いた一回の集中的な化学洗浄』が歯科用ユニットの水質改善に及ぼす影響を評価した。また、感染管理機能が搭載されていない歯科用ユニットの水質管理に対して有効な方法を検討するため、フラッシング時間や歯科用ユニット給水タンク内の貯留水に対する中等度の加温がハンドピースの水質改善に及ぼす影響を検討した。一方、身の回りにある生活水にどの程度の従属栄養細菌が存在するかについて、水質管理目標値を指標に検討した。
結果と考察
薬液を供給する外付け洗浄装置とフラッシングを併用した結果、ハンドピース排出水の水質は測定した1か月の間、適切に保たれていた。一方、一回の集中的な化学洗浄とフラッシングの併用では、ハンドピース排出水中の従属栄養細菌数を水質管理目標値(2,000 CFU/ml)以下に保ち続けることは困難であった。フラッシングを1分間行った結果、遊離残留塩素濃度は基準値の約2倍に増加し、従属栄養細菌数は著明に減少した。ただし、フラッシングを続けて4分間行っても、従属栄養細菌数は水質管理目標値以下には至らなかった。また、ハンドピース排出水中の従属栄養細菌は、50℃以上で水質管理目標値以下に殺菌されることが明らかとなった。さらに、歯科用ユニット給水タンク内の貯留水を65℃程度に加温した上でフラッシングを行うと、ハンドピース排出水の遊離残留塩素濃度および従属栄養細菌数ともに基準値および目標値に適合した。一方、東北大学歯学研究科建物内において、朝使用直後の水道および市販のウォーターサーバー(給水器)から採取した常温水における従属栄養細菌を検出した結果、菌数は必ずしも目標値以下にはならないことが示された。また、洗剤で洗浄したガラスビーカーに入れて室温で1日置いた水道水には、目標値を超える従属栄養細菌が存在した。従属栄養細菌数の目標値は病原微生物の存在と直接結びつくわけではなく、あくまでも水質の指標として達成することが望ましいと設定されたものである。したがって、今回の実験結果をもってこれら日常生活水や歯科用ユニット排出水が体内に入ったからと言って、直ちに健康被害が出るということではないと思われる。
結論
歯科用ユニットハンドピースの水質を優れた水準に長期間維持する方策として、外付け洗浄装置の装備とフラッシングの併用が有効であることが示された。また、外付け洗浄装置が装備されていない一般ユニットでは、使用前のフラッシングを徹底することで、水道法の遊離残留塩素濃度を保った水質管理が可能であることが示された。さらに、ハンドピース排出水の水質をより優れた水準に改善するためには、歯科用ユニット給水タンク内の貯留水を中等度に加温するとともにフラッシングを行うことが有効である可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2018-10-24
更新日
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