文献情報
文献番号
201719020A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の医療体制の整備に関する研究
課題番号
H29-エイズ-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科、エイズ治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター長)
- 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター・HIV/AIDS包括医療センター室長)
- 山本 政弘(国立病院機構九州医療センター・AIDS/HIV総合治療センター部長)
- 内藤 俊夫(順天堂大学医学部・総合診療科研究室・教授)
- 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科(北海道大学病院)・教授)
- 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院・感染管理部・准教授)
- 渡邉 珠代(石川県立中央病院・免疫感染症科・診療部医長)
- 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター・臨床研究センター・エイズ先端医療研究部長)
- 藤井 輝久(広島大学病院・輸血部・准教授)
- 宇佐美 雄司(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター・歯科 口腔外科・医長)
- 池田 和子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター・看護支援調整職)
- 吉野 宗宏(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター・薬剤科・副薬剤部長)
- 本田 美和子(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター政策医療企画研究部・高齢者ケア研究室室長)
- 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院・技術専門職員)
- 三木 浩司(平成紫川会小倉記念病院・緩和ケア・精神科 部長)
- 四柳 宏(東京大学医科学研究所・先端医療研究センター感染症分野 教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
100,600,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の交代
旧研究者(新潟大学医歯学総合病院 准教授:田邊 嘉也)が異動となったため、新研究者(新潟大学医歯学総合病院 准教授:茂呂 寛)と平成29年7月1日付けで交代した。
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国のHIV感染症診療に関するケアカスケードの論文が発表されたが、外国籍患者等の把握が十分でないことやHIV感染者及びエイズ患者(以下HIV陽性者)数の推計の多面的検討など課題が残る。また、血友病薬害被害者(以下被害者)の現況及び医療・福祉依存度の把握は未だ十分ではない。
そこで、ケアカスケード作成に資する、より精度の高い疫学情報の継続的収集、被害者を含むHIV陽性者の状況把握と課題抽出を試みる。また、次代の救済医療及びHIV感染症/エイズ(以下エイズ)診療に必要な施策及び診療体制を検討する。
そこで、ケアカスケード作成に資する、より精度の高い疫学情報の継続的収集、被害者を含むHIV陽性者の状況把握と課題抽出を試みる。また、次代の救済医療及びHIV感染症/エイズ(以下エイズ)診療に必要な施策及び診療体制を検討する。
研究方法
a.疫学情報の収集と解析
全国のブロック拠点病院の診療責任医師らからなる医療ネットワークを構成し、拠点病院診療案内の掲載情報収集を通じて全国の拠点病院の診療状況を把握する。今年度調査より外国籍定期通院者数及び HCV重複感染被害者の状況把握を調査項目として加えた。
b.救済医療の重点対応項目の課題抽出
重点課題であるHCV感染症、歯科、長期療養について現状の把握を行なった。医療ネットワークに加えてチーム医療に関わる職種の代表者から構成される包括医療ネットワークでも専門職種の観点から課題抽出を行う。
c.エイズ診療体制の解析(「いまできること調査」)
全国のブロック拠点病院に対し、拠点病院診療案内の掲載情報収集時に現在対応可能な医療の内容を、チェックシートを用いて回答を得る。
全国のブロック拠点病院の診療責任医師らからなる医療ネットワークを構成し、拠点病院診療案内の掲載情報収集を通じて全国の拠点病院の診療状況を把握する。今年度調査より外国籍定期通院者数及び HCV重複感染被害者の状況把握を調査項目として加えた。
b.救済医療の重点対応項目の課題抽出
重点課題であるHCV感染症、歯科、長期療養について現状の把握を行なった。医療ネットワークに加えてチーム医療に関わる職種の代表者から構成される包括医療ネットワークでも専門職種の観点から課題抽出を行う。
c.エイズ診療体制の解析(「いまできること調査」)
全国のブロック拠点病院に対し、拠点病院診療案内の掲載情報収集時に現在対応可能な医療の内容を、チェックシートを用いて回答を得る。
結果と考察
a.我が国のエイズ診療の状況
都道府県担当者の協力により、全383施設から調査票の返却を得た。定期通院者数、治療中患者数及び治療成功者数の全て記載があった329施設では、定期通院者22,382人に占める治療継続者の割合は91.9%(20,559人/22,382人)、そのうち治療成功患者の割合は99.2%(20,400人/20,559人)であった。把握できた2016年1年間の死亡者数は134人。拠点病院で把握できている外国籍定期通院者数は1,230人であった。
b.救済医療の重点課題への対応の現況
•肝疾患
通院中の被害者数は609人中、対する治療介入が必要であった、もしくは必要な被害者は410人でほぼ全症例で良好な経過であった。
•歯科
「HIV感染者の歯科治療ガイドブック」が作成され、その内容をもとに大学歯学部及び全国の歯科医師会等で研修が実施されたことにより、歯科診療ネットワークの構築が進んだ。
•健(検)診
頭部MRI T2*条件による検討では微小脳出血が指摘された被害者はいなかった。全国のレセプト情報をもとにした解析では、HIV陽性者が非HIV陽性者に対して明らかに罹患率の高い疾患があることが示された。
•長期療養
長期毒性が問題となっている抗HIV薬の変更を行った。ポリファーマシーの状態にある被害者が多いことが示された。個別多様なライフイベントがあり、継続的な面接による課題抽出の重要性が示された。
c.拠点病院の診療状況(「いまできること調査」)
•拠点病院毎の定期通院者数
今回、「いまできること調査」には316施設から回答を得た。以後、定期通院者等今回の解析に必要な情報が揃っていた309施設で解析を行なった。これから解析する309施設について、定期通院者なしは64施設(20.7%)、1人〜9人が84施設(27.2%)、10人〜99人が122施設(39.5%)、100人以上が39施設(12.6%)であった。
•定期通院者数との関連
定期通院者数なしの拠点病院は、第15条指定医師不在もしくは自立支援医療機関の認定を受けていない施設が多い。在宅療養中や施設入所中のHIV陽性者の急変時等の入転院受け入れは定期通院者数に依存せず一定の施設で困難であった。
•定期通院者と対応可能な診療の関連
定期通院者の有無は抗HIV療法の変更、定期通院者が10人以上か否かは抗HIV療法の変更、定期通院者100人以上か否かは曝露時対応と関連があることが示された。
都道府県担当者の協力により、全383施設から調査票の返却を得た。定期通院者数、治療中患者数及び治療成功者数の全て記載があった329施設では、定期通院者22,382人に占める治療継続者の割合は91.9%(20,559人/22,382人)、そのうち治療成功患者の割合は99.2%(20,400人/20,559人)であった。把握できた2016年1年間の死亡者数は134人。拠点病院で把握できている外国籍定期通院者数は1,230人であった。
b.救済医療の重点課題への対応の現況
•肝疾患
通院中の被害者数は609人中、対する治療介入が必要であった、もしくは必要な被害者は410人でほぼ全症例で良好な経過であった。
•歯科
「HIV感染者の歯科治療ガイドブック」が作成され、その内容をもとに大学歯学部及び全国の歯科医師会等で研修が実施されたことにより、歯科診療ネットワークの構築が進んだ。
•健(検)診
頭部MRI T2*条件による検討では微小脳出血が指摘された被害者はいなかった。全国のレセプト情報をもとにした解析では、HIV陽性者が非HIV陽性者に対して明らかに罹患率の高い疾患があることが示された。
•長期療養
長期毒性が問題となっている抗HIV薬の変更を行った。ポリファーマシーの状態にある被害者が多いことが示された。個別多様なライフイベントがあり、継続的な面接による課題抽出の重要性が示された。
c.拠点病院の診療状況(「いまできること調査」)
•拠点病院毎の定期通院者数
今回、「いまできること調査」には316施設から回答を得た。以後、定期通院者等今回の解析に必要な情報が揃っていた309施設で解析を行なった。これから解析する309施設について、定期通院者なしは64施設(20.7%)、1人〜9人が84施設(27.2%)、10人〜99人が122施設(39.5%)、100人以上が39施設(12.6%)であった。
•定期通院者数との関連
定期通院者数なしの拠点病院は、第15条指定医師不在もしくは自立支援医療機関の認定を受けていない施設が多い。在宅療養中や施設入所中のHIV陽性者の急変時等の入転院受け入れは定期通院者数に依存せず一定の施設で困難であった。
•定期通院者と対応可能な診療の関連
定期通院者の有無は抗HIV療法の変更、定期通院者が10人以上か否かは抗HIV療法の変更、定期通院者100人以上か否かは曝露時対応と関連があることが示された。
結論
拠点病院の診療状況を継続的に収集する仕組みが機能し、定期通院者数等の実数を得ることができた。我が国のエイズ診療のケアカスケードに関する先行研究で課題とされた外国籍HIV陽性者の実数も把握可能である。
被害者の救済医療については、HIV感染症、血友病及びC型肝炎の医療度が大きく変わったことから、今後の救済医療の評価指標の再設定を行う必要がある。
拠点病院は我が国では他の医療機関に比べてHIV陽性者、エイズ、薬害被害者への理解が高い施設ともいうことができ、地域の貴重な医療資源である。
エイズ予防指針の改正を契機に、地域の実情に応じて、連携して負担のない持続可能がHIV感染症/エイズの診療体制を再構築すべきである。
被害者の救済医療については、HIV感染症、血友病及びC型肝炎の医療度が大きく変わったことから、今後の救済医療の評価指標の再設定を行う必要がある。
拠点病院は我が国では他の医療機関に比べてHIV陽性者、エイズ、薬害被害者への理解が高い施設ともいうことができ、地域の貴重な医療資源である。
エイズ予防指針の改正を契機に、地域の実情に応じて、連携して負担のない持続可能がHIV感染症/エイズの診療体制を再構築すべきである。
公開日・更新日
公開日
2018-06-11
更新日
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