HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制に対する研究

文献情報

文献番号
201719015A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制に対する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(千葉大学 医学部付属病院)
  • 生島 嗣(ぷれいす東京)
  • 照屋 勝治( 国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. HIV感染症の曝露前予防(PrEP:pre-exposure prophylaxis)の提供体制に関して、我が国での妥当性、実現可能性の評価を目的とし、当院に設立された男性間性交渉者(MSM:men who have sex with men)コホートで、単群介入試験による小規模のpilot studyを施行する。2. pilot studyで明らかになる国内でのPrEPの課題と問題点の参考とするため、海外で先行するPrEPの取り組み事例を調査し、国内でのPrEPの妥当性、実現可能性を評価する。
3. 日本におけるPrEPおよび非職業従事者の曝露後予防内服(nPEP:non occupational post-exposure prophylaxis)に関する認知度、ニーズを明らかにするために、MSMを対象にインターネットを介した大規模調査を実施する。これによりPrEPおよびnPEPの効果的な提供体制を検討する。
4.HIV患者の診療の均てん化のためには、針刺し等のHIV曝露後の予防内服(PEP)体制が、HIV拠点病院以外の一般医療機関においても整備される必要がある。現時点におけるPEP体制の全国の整備状況を把握して問題点を抽出し、これらの解決法の模索・提言を行うことで、日本でのHIV診療の均てん化を目指す。
研究方法
1. PrEPのpilot studyでは、対象者に抗HIV薬ツルバダ一日一回一錠のdaily PrEPを実施し、PrEP開始前後のHIV/STI罹患率を評価するために、一群介入試験を実施する。対象者のリクルートのためMSMコホートを設立し、PrEP開始前のHIV/STI罹患率を評価しており、平成30年度は、同コホートにおいてPrEPのpilot studyの組入数を増やし、最低2年間フォローしPrEPの日本での実現可能性の評価につなげる。
2. PrEPの海外先行事例の予備調査として、初年度はPrEP実施国48カ国を概観するとともに、導入段階にあるハノイ医科大学を調査対象とした。平成30年度には医療制度・経済規模が類似した先進国の事例を対象とし、PrEP提供体制の制度的側面も含めた調査を行う。
3. 日本におけるPrEPの認知度・PrEPの広報活動の成果評価のために、大規模なインターネット調査をMSMに対して実施する。平成29年度にはPrEPに対する認知度、許容可能なコスト及びアクセス等に関する質問票の検討を行った。平成30年度にインターネット調査を実施する。
4. アンケート結果を踏まえ、PEP実施体制の現状についてHIV医療体制班および厚労省へ情報を提供し意見交換を行う。HIV医療の全国均てん化を目指したPEP体制に関する具体的提言を行う。
結果と考察
1. PrEPの臨床研究の組入に向けて、約300名のMSMコホートの確立を完了しており、120名の臨床研究参加者組入に向けた評価を実施している。その結果として、本邦のMSMのHIV感染リスクがPrEPの適応となる程度に高いことが示されたとともに、他のSTIの罹患率も明らかになりつつある。同データはPrEPを実施することによるHIV・STI罹患率への影響を評価する基礎データとなり、PrEPの臨床研究を進めていく上で重要である。
2. 海外でのPrEPの先行事例の予備調査として、臨床試験も含めたPrEP実施国48カ国の状況を概観し、ほとんどの国ではMSMコホートをターゲットにしていることが明らかになった。
3. PrEPの知見として、先進国におけるPrEPのガイドラインや文献等を基にPrEPの認知度、利用意向等に関する情報収集を行い、30年度実施予定の大規模インターネット調査に向けての質問紙の作成準備を行った。
4. 現行のPEP体制はHIV患者の診療を一般化するには十分とは言いがたい。マニュアルを公開している自治体は半数のみであり、2時間以内にアクセス可能なPEP対応機関を指定しているのも半数に過ぎなかった。費用面が問題となるPEP薬の準備体制も自治体により異なっていた。
結論
1. 日本でのPrEPの妥当性、実現可能性の評価目的に、PrEPの単試験pilot studyの準備調査を開始した。
2. PrEPは海外で加速的に導入されており、高リスク群をターゲットにすれば有効にHIVを予防できると認識されている。日本においても早期導入およびガイドラインの整備が必要である。
3. わが国のMSMコミュニティを対象としたニーズ調査を実施することは、PrEPの実現可能性、利用可能性、費用負担可能性等を検討するために極めて重要であり、今後わが国へのPrEPプログラムの導入を検討するために必要不可欠である。
4.PEP体制は現状では不十分である。研究班から改善のための提言を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201719015Z