職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査体制の研究

文献情報

文献番号
201719014A
報告書区分
総括
研究課題名
職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査体制の研究
課題番号
H29-エイズ-一般-008
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科、エイズ治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 生島  嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 伊藤 公人(社会医療法人宏潤会大同病院・血液化学療法内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」に従い、企業及びその被保険者に対し普及啓発を行った上で、企業等の健診対象者(以下被保険者)のうち希望する者(以下受検者)に対し近年罹患者数の増加が著しい梅毒とエイズ(以下エイズ等)の検査機会を提供し、その結果からエイズ等の正しい知識の普及啓発の機会や保健所検査を補完する事業となり得るか検討する。
研究方法
a.健診検査でのエイズ等検査機会提供の方法検討
エイズが 1)雇用、2)プライバシー及び 3)健康に与える影響を「エイズリスク」と定義する。職場、健診現場及び医療現場でエイズリスクの知識確認とその普及啓発の方法を検討する。
b.エイズ等検査機会提供先の対象者数設定
健診におけるエイズ等検査実施の方法を決定した上で、先行研究を参考に、統計的に普及啓発等の効果判定が可能な対象者数の設定を行う。
c.エイズ等検査機会提供先の検討
対象者数の設定を受けて、研究を実施する実施地域、対象企業及び健診センターの候補を検討する。
d.啓発内容の検討
これまでの先行調査の結果から、職場及び健診現場において就労者のエイズリスクの知識を高めるための啓発項目を検討する。
結果と考察
a.健診検査でのエイズ等検査機会提供の方法検討
【研究デザイン】モデル地区で、「エイズ等健診実施」の前後での差異を明らかにする介入研究(健診実施前後比較)として行うこととした。
【研究方法】エイズリスクに関する意識調査、その調査に基づいて作成された啓発及び被保険者のうち希望者に対するエイズ等検査とした。
【実施(評価)項目の設定と結果解析】主要評価項目はエイズリスクの知識の獲得(普及啓発効果)とし、副次的評価項目を被保険者の受検動向の改善、企業、健診センター及び医療機関における相談支援内容の変化とする。
【研究の流れ】健診実施期間前に企業においてエイズリスクに関する意識調査とその結果に基づいて作成された資材による啓発(紙媒体の配布、pdfのメール配信等による)を行い、健診時に再度同じ調査を行う。エイズ等検査で医療機関受診を要する受検者には適切な医療機関の紹介を行う。プライバシーの保護のため、エイズ等検査で陽性となった受験者数等及びその後の経過については本研究においてその評価を実施しない。
b.エイズ等検査機会提供先の対象者数設定
受検者への質問項目において、主要評価項目に対し、先行研究(Ishimaru T et al. Ind Health. 2016;54(2):116-22)においてエイズリスク啓発の知識の獲得を「HIV検査の希望」と読み替え、そのような希望を持っている人の半数が「HIV検査を受診した」と仮定することにより、介入前「リスク啓発の知識の獲得」28%、介入後41%となる。この差を有意水準5% 検出力80%で検出するためには、脱落が10%発生することを見込み、130例必要と算定した。主要評価項目は1標本の割合の差の検定を実施する。
c.エイズ等検査機会提供先の検討
要医療(精査)者への適切な対応を可能とするための医療機関の協力が得られることを最優先の条件とし、モデル地区を検討した。
d.啓発内容の検討
本研究に参加する企業を募るために、企業及びその従業員に向けて、①受検はレ(チェック)をつけるだけ、②検査は無料、結果はあなただけのもの、③検査後も安心サポート、みんな働ける、仕事は続けられる、④通院は3ヶ月に1度、治療はのみ薬、治療費心配無用という4つのメインメッセージを含む啓発資材を作成した。
我が国では、就労成人男性への性感染症の検査機会増の取り組みは、成人女性に比して十分ではない。本研究により梅毒とHIV感染症/エイズの検査機会の増加や、就労成人の性感染症の検査の生涯受検率向上が期待される。
本研究の研究及び検査実施に先立つ種々の啓発プログラムにより、梅毒、HIV感染症/エイズ等は全て成人が罹患の蓋然性がある性感染症の一つであると認識されることにより、保健所検査を含めてHIV検査の受検率が向上することが期待される。
現在は「HIVのような特殊な疾病には関わらないのが常識」とされる企業や健診センターがHIV検査の機会を提供することが社会の疾病認識変容の契機となり、HIV検査への抵抗感減による生涯受検率向上が期待される。
結論
初年度は職場健診におけるエイズ等健診の研究デザイン決定、研究対象者数の設定及び研究実施候補地の選定を行った。また、啓発効果及びエイズ等検査実施効果の検証のための調査票の質問事項の検討を行った。
本研究で実施するエイズ等検診でエイズリスクを検討することは、雇用、プライバシー及び健康に対する企業及び被保険者の認識を再検討するよい機会となる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201719014Z