職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査手法開発研究

文献情報

文献番号
201719013A
報告書区分
総括
研究課題名
職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査手法開発研究
課題番号
H29-エイズ-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
川畑 拓也(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
研究分担者(所属機関)
  • 森 治代(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
  • 駒野 淳(国立病院機構 名古屋医療センター 統括診療部 臨床検査科)
  • 本村 和嗣(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
  • 小島 洋子(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 微生物部 ウイルス課)
  • 渡邊 大(国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部 HIV感染制御研究室)
  • 大森 亮介(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HIV感染症は早期発見・治療による感染拡大と発症の防止が必要であるが、近年、我が国では症状が出て初めて感染が判明するHIV症例が約3割を占め、そのうち就労世代(30~59歳)は7割以上を占める。保健所での無料匿名HIV検査は就労世代にとって利用しにくく、そのため発症する前に感染に気づく機会が失われている恐れがある。そこで本研究では、労働安全衛生法第66条に基づき事業者が労働者に対して実施する定期健康診断(規則第44 条)において、労働者が事業者に結果を知られること無くHIV検査を受けられる環境を、健診センターあるいは人間ドック施設(以下、健診施設)に整備する方法の確立と、健診受診者に最新のHIV治療の情報や陽性者向け支援制度等を紹介することによるHIV/エイズの啓発と、健診機会のHIV検査を通じて潜在的な感染者を発見するための費用対効果の評価を行う。
研究方法
研究(1)健診施設におけるHIV検査の提供状況等の調査に関する研究
 研究(1)では、HIV検査の受容性の観点から、出張型の健診ではなく施設型の健診を対象とすることとし、HIV検査の提供状況と受容性を把握し、また匿名HIV検査を試行可能な協力健診施設を獲得するため、アンケート調査を実施する。方法としては、web上に公開された日本総合健診医学会から優良総合健診施設と認定を受けている施設および日本人間ドック学会の会員施設のうち重複を除いた日本全国の1,784ヶ所を対象とし、受診者が自ら希望して受けるオプション項目も含め健診でHIV検査を実施しているかどうか等、自記式アンケート用紙を郵送し、回収した回答を解析する。
研究(2)ICT(Information and Communication Technology)を活用した健診施設向け匿名HIV検査結果返却システム(以下、匿名HIV検査システム)の開発に関する研究
 研究(2)では、健診の依頼元である事業所の厚生担当者等に検査結果を知られてしまう恐れがあることが、職域健診におけるHIV検査の利用を阻害する主な要因と考え、受検者のみが検査結果を知る秘匿性の高い仕組みを開発する。
結果と考察
研究(1)459ヶ所からアンケートの回答を得た (回収率25.7%)。回答施設のうちHIV検査を提供しているのは140ケ所(30.5%)であり、H28のHIV検査受検者数の合計は4,536名(HIV検査受検機会があった内の0.16%)とわずかであったが、健診受診者にHIV検査のニーズが有ることを明らかにした。検査結果の通知方法は、本人のみに通知が多く、中には方法を受診者に選択させるなど、受診者のニーズに配慮している施設もみられた。
 検査はスクリーニング検査のみ実施が最も多かったが、結果が陽性の場合、医師による説明・告知や拠点病院等の紹介を行う施設も多くみられた。また、確認検査を受けたかどうかをフォローしている施設もあり、陽性の結果をうけて医療に繋げようと配慮している。文書による検査の説明や結果通知の施設が多く、今後は検査前カウンセリングのあり方についての検討が望まれる。新たなHIV検査の提供は容易な印象であったが、陽性時の対応が困難だと感じたり、検査前後のカウンセリングの準備やプライバシー保護に不安を感じたりして提供に踏み切れない施設も存在し、施設の不安を軽減する方策や、施設への啓発が必要である。
研究(2)健診機会におけるHIV検査の情報と検体の流れを整理し、匿名検査システムの原案を作成した。今年度は期間が短く、開発の委託を断念した。また、臨床検査会社と健診システム開発会社にヒアリングを行い、外部委託で検査を行っている施設では匿名化が難しいこと、健診システムが導入されている施設ではシステムの改修が難しいことを明らかにした。さらに健診施設の責任者2名に施設全般についてインタビュー調査を行い、健診機会を利用してHIV検査を提供することについての賛同を得た。
結論
研究(1)健診施設における健診受診者にHIV検査のニーズがあり、受診者からの要望によりHIV検査の提供を行い、実際にHIVスクリーニング検査で陽性の場合は、その後にHIV確認検査受検の有無を確認したり、医師による結果説明・告知、専門医療機関の紹介などを行ったりしている施設が存在することを明らかにした。健診機会を利用したHIV検査の提供を推進するのであれば、健診の現状に即したHIV検査の流れや方法を提示する必要がある。
研究(2)ICTを活用した匿名HIV検査システムの開発に着手した。次年度以降、システム開発を継続し、HIV 検査を提供している健診施設における無料HIV検査の試行、受検者向け啓発資材の開発を行う。システム完成後は健診施設において匿名HIV検査を試行したい。さらに、陽性率や費用対効果の推計も実施する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201719013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,164,031円
人件費・謝金 810,300円
旅費 182,830円
その他 642,839円
間接経費 1,200,000円
合計 8,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-02-28
更新日
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