HIV検査の受検勧奨のための性産業の事業者及び従事者に関する研究

文献情報

文献番号
201719012A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査の受検勧奨のための性産業の事業者及び従事者に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡會 睦子(東京医療保険大学 医療保健学部)
  • 土屋 菜歩(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門)
  • 川名 敬(日本大学 医学部 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性が従事する性産業の形態は、時代とともに急速に複雑化・多様化してきている。また、MSMやトランスジェンダーの性産業との関わりについても、これまで十分に調査が行われていなかったというのが現状である。現在は、若い女性における梅毒の増加、MSMにおけるA型肝炎の流行なども深刻な状況となっている。したがって、潜在するハイリスク層の実態調査を行い、より感染リスクの高い対象者への受検勧奨と予防啓発をすすめることが、HIV感染症を含む性感染症対策における喫緊の課題であると考えらる。本研究では、性産業に関わる事業者と従事者の調査によって、多様化・複雑化している性産業の実態を明らかにする。更に、地域一般住民の調査も加えることで、現代の性産業における現状を、より多角的な実態調査によって把握する。そして、その多様性・複雑性に合った新たな啓発・受検勧奨法の立案を目指す。


研究方法
本研究においては、性産業に従事する女性や事業者に加えて、より感染リスクの高いMSM・トランスジェンダーの従業者の調査も行われる。さらに、企業健診や成人式でのアンケート等による地域一般住民の調査、性感染症クリニックや風俗街を有する自治体の保健所と連携した性感染症の実態調査など、より多角的な調査によって現代の性産業の現状を把握する。従業者への調査では、プライバシーや人権についての十分な配慮、得られた情報の慎重な扱いが必要とされる。そのため、性産業従事者に直接関わる分担研究では、従業者をサポートする当事者グループ、セクシャルマイノリティーに関わるNPOの代表者、文化人類学者、行政の担当者などを協力者とする研究体制を整えた。


結果と考察
本研究班においては以下の分担研究が計画・実行されている。【研究1】性産業に従事する事業者と女性従業者の実態調査と受検勧奨 →初年度は、(1)性産業における性感染症対策等の文献検討、(2)各都道府県公安委員会への届け出数・風俗マガジン・ウェブサイト等からの性風俗業種・稼働状況等の推測、(3)性産業に関わるNPOの研究協力者との情報交換によって、現在の事業者と従業者の状況把握などの調査を行った。今後は、これらの調査結果をもとに、性産業に従事する事業者・従事者のインタビュー調査を行い、検査や教育等の性感染症対策、性感染症に対する意識の違い、性感染症検査の受検状況、予防対策の実態調査などを行うことを計画している。【研究2】性産業に従事するMSMとトランスジェンダーの実態調査と受検勧奨→初年度は、今後の調査や提言を進めていくための予備調査として、MSMセックスワーカーを対象に、1.先行研究レビュー(それらの層について明らかにされてきたことの確認)、2. 形態の把握と分類を行なった。また、東京のMSMを中心に流行がはじまっているA型肝炎の予防啓発を通じて、現代における性感染症の流行への効果的な啓発方法も検討した。今回の対策によって確立された啓発方法は、MSMにおける今後の性感染流行においても、ハイリスク層へ集中的に、かつ迅速に啓発情報を提供するための対策として役立つものとなると考えられた。【研究3】性感染症クリニックの実態調査と啓発→性感染症クリニックおよび風俗街を有する自治体の保健所と連携して性感染症の実態調査の体制を確立し、クリニック、保健所への調査を実施し、課題を抽出するための準備を開始した。H30年度には、現在流行している梅毒を中心として、クリニック受診者の実態把握のために、Case report form(CRF)を用いた詳細な症例調査研究を組み立て、受診者における梅毒などの治療内容とその効果判定の有無などを調べて、蔓延の原因検索を行う計画である。【研究4】地域一般住民の性サービスに関わる実態調査と受検勧奨→看護系大学生を対象とした自記式・無記名のアンケート調査をパイロットで実施した。さらに、少人数を対象とした個別インタビューとグループディスカッションも実施し、設問・回答に関連する性行動・意識の詳細な情報を収集した。このパイロット調査によって、選択肢を選ぶ際の回答者の思考の過程、説明文の解釈や回答の背景などの情報を得ることができた。今後は、本年度の調査をもとにアンケート項目を調整し、対象をさらに広げた本調査を実施する予定である。
結論
初年度は、性産業の従事者に対する質的調査を行うために必要な、基礎的な情報収集、インタビューにおける質問内容の検討、そしてパイロット的な聞き取り調査などを開始した。さらに、性感染症クリニックでの実態調査、企業健診や成人式におけるアンケートなどの計画を実行するための検討も行っている。本研究によって、時代とともに変化してきている性産業の実態を明らかにし、その多様性・複雑性に合った新たな啓発・受検勧奨法の立案につながっていくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201719012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,133,844円
人件費・謝金 2,324,469円
旅費 418,122円
その他 5,722,565円
間接経費 400,000円
合計 9,999,000円

備考

備考
その他の1,000円は返還予定

公開日・更新日

公開日
2019-02-21
更新日
-