ワクチンの有効性・安全性の臨床評価とVPDの疾病負荷に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201718023A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの有効性・安全性の臨床評価とVPDの疾病負荷に関する疫学研究
課題番号
H29-新興行政-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(医療法人相生会 臨床疫学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 若葉(大阪市立大学大学院・医学研究科公衆衛生学)
  • 大藤 さとこ(大阪市立大学大学院・医学研究科公衆衛生学)
  • 原 めぐみ(佐賀大学医学部・社会医学講座予防医学分野)
  • 森川 佐依子(大阪健康安全基盤研究所 森ノ宮センター)
  • 岡田 賢司(福岡看護大学 基礎・基礎看護部門 基礎・専門基礎分野)
  • 中野 貴司(川崎医科大学小児科学)
  • 近藤 正英(筑波大学医学医療系)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 織田 慶子(保健医療経営大学保健医療経営学部)
  • 齋藤 智也(国立保健医療科学院健康危機管理研究部)
  • 鈴木 幹三(名古屋市立大学看護学部)
  • 入江 伸(医療法人相生会)
  • 都留 智巳(医療法人相生会ピーエスクリニック)
  • 浦江 明憲((株)メディサイエンスプラニング)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
50,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. 厚労省意向による特定研究
① 埼玉株と香港株単価ワクチンの、埼玉株、香港株、及び流行株に対する免疫原性を評価。
② インフルワクの有効性をtest-negative症例対照研究により継続モニタリング。
③ ポリオ生・不活化ワクチン混合接種後の抗体持続を評価。
2. インフルワク、百日咳ワク、肺炎球菌ワク等の有効性を分析疫学手法で評価。
3. 上記のため、微生物学者と共同して、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
研究方法
疫学、小児科、臨床薬理学、微生物学等の専門家が8分科会で共同研究を実施。
結果と考察
1. 埼玉株/香港株ワクチン免疫原性分科会
香港株ワクは、香港株のみならず埼玉株に対しても良好な免疫原性。埼玉株に対する抗体応答(中和抗体)は:香港株ワクで平均上昇倍数5.3倍、抗体応答割合50%;埼玉株ワクでは4.2倍と46%。
2. 定点モニタリング分科会
6歳未満児では、PCR陽性インフルに対するワクチン接種の調整オッズ比(OR)は、1回0.58(0.32-1.06)、2回0.59(0.40-0.86)(2016/17)。
3. ポリオ感受性分科会
接種後4年間に中和抗体価1:8未満まで低下した者は、A群(sOPV→sIPV→sIPV→sIPV)7人のうち2人(Wild株Ⅰ型に対し)、B群(sOPV→wIPV→wIPV→wIPV)33人のうち1人(Sabin株Ⅰ型とWild株Ⅰ型に対し)。接種10年後に抗体保有割合が83%以下に低下すると推計。
4. インフルエンザ分科会
① PCR陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは1~12歳児で0.23(0.13-0.41)、13~64歳で0.37(0.17-0.83)。
② 6歳未満児では、迅速診断陽性インフルに対するワクチン接種の調整ORは0.61(0.50-0.75)。型別では、A型で0.64(0.52-0.79)、B型で0.41(0.24-0.73)。
③ 小学生では、A型インフル(迅速診断)に対するワクチン接種の調整ORは0.71(0.48-1.04)。
④ 3シーズン連続してA/H1N1pdm09株含有ワクチンを接種した健康成人では、シーズンを経るに従って、接種前・後の幾何平均抗体価と平均上昇倍数が低下(接種後GMTは61→53→51、平均上昇倍数は1.49→1.30→1.25)。
5. 百日咳分科会
① 現行DTaPワクの有効性および接種後経過年数の影響をみるため、第2期症例対照研究を開始。
② LAMP陽性百日咳症例、LAMP陰性対照患者、他疾患の対照患者における症例対照研究で、4回接種のORは、test-negative controlとの比較で0.24(0.00-3.61)、他疾患対照患者との比較で0.08(0.00-0.45)。
6. 高齢者肺炎分科会
高齢者肺炎(65~90歳)の第2期多施設共同・症例対照研究を開始。症例(肺炎新患)48人と病院対照216人を収集。30年度まで症例100、対照400に増やし総合解析。
7. 新規ワクチン検討分科会
① 6歳未満児におけるロタウイルスワクの有効性検討のためtest-negative症例対照研究に着手。また、1歳半検診受診児を対象に、接種行動の関連要因、及び児・保護者のロタウイルス胃腸炎の疾病負荷を調査中。
② 妊婦に対する百日咳ワク接種の費用効果は、児の百日咳発症率および接種費用に大きく影響を受けるが、費用効率的なシナリオが複数存在。
8. 広報啓発分科会
米国ACIPのインフルエンザワクチンに関する勧告(2017/18)を翻訳し、日本公衆衛生協会より出版。
9. 高齢者における感染性胃腸炎
高齢者(60歳以上)におけるノロウイルス胃腸炎入院例の全国疫学調査を実施。2012~14年のノロウイルス胃腸炎年間入院数(死亡数)は、31,800(650)、21,600(580)、15,700(580)。人口10万対年間入院率(年間死亡率)は、77.5(1.58)、52.0(1.40)、37.4(1.38)。
結論
主要な結論
1. インフルエンザワクチン株と流行株の合致度はワクチン有効性と相関しない。
2. 6歳未満児でのインフルエンザワクチン有効率は約40%(2016/17)。
3. ポリオワクチン接種10年後の抗体保有割合は83%以下と推計。
4. A/H1pdm09株含有ワクチンの3シーズン連続接種で、接種前後のGMTが低下。
5. 高齢者ノロウイルス胃腸炎の年間入院率(死亡率)は、10万対37.4(1.38)~77.5(1.58)。

公開日・更新日

公開日
2018-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201718023Z