子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201718020A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究
課題番号
H27-新興行政-指定-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 若葉(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 原 めぐみ(佐賀大学 医学部)
  • 柴田 政彦(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学 医学部)
  • 平田 幸一(獨協医科大学 医学部)
  • 岡 明(東京大学 医学部)
  • 宮本 信也(筑波大学人間系)
  • 喜多村 祐里(津田 祐里)(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 宮岡 等(北里大学 医学部)
  • 端詰 勝敬(東邦大学 大森病院心療内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「研究目的」(1)全国疫学調査:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種歴のない12~18歳の青少年について、「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」を有する患者の人数と有訴率を全国規模で推計する。
(2)症例フォローアップ調査:HPVワクチン接種後に症状を生じ、厚生労働省指定の協力医療機関等を継続受診している症例の特徴を把握し、症状の経時変化の状況等について評価する。
(3)診療実態調査:全国疫学調査の二次調査に回答した医師のうち、「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」を有する患者を報告した者を対象に診療方針や診療実態を全国規模で把握する。
研究方法
(1)全国疫学調査:調査対象期間は2015年7月1日~12月31日である。症例基準は、下記①~④すべてを満たす者とした。①12~18歳、②疼痛および感覚の障害/運動障害/自律神経症状/認知機能の障害が少なくとも1つ以上ある、③上記②の症状が3ヵ月以上持続している、④上記②及び③のため就学・就労に影響がある。一次調査の対象は、全国の病院の診療科(対象:小児科、神経内科、ペインクリニック、産婦人科、整形外科、内科、総合診療科、脳神経外科、精神科・心療内科)および厚生労働省指定83施設の窓口診療科から、病床規模や病院特性に応じて全数(100%)または半数(50%)を抽出した。「調査対象期間中に、症例基準を満たす患者の受診あり」と回答した診療科に二次調査を依頼し、個人票で臨床疫学特性(含:HPVワクチン接種歴)の情報を得た。個人票の内容(記載の傷病名で主治医が症状をおおよそ説明できるか否か、主治医が「症状を最も説明できる」と指定した傷病名)から、報告症例の症状が「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」に相当するか否かを判断した。一次調査と二次調査の情報をあわせて「多様な症状がありHPVワクチン接種歴のない患者数および有訴率」を推計した。
(2)症例フォローアップ調査:厚生労働省において各都道府県に設置している、HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関等を受診中の患者を対象に、平成27年12月から症例登録を開始し、毎月1回の頻度で症状や臨床経過に関する質問紙票調査を実施し、患者本人による症状評価を調べるとともにその推移を継続的に観察した。
(3)診療実態調査:全国疫学調査の二次調査に回答した医師のうち、「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」を有する患者を報告した163診療科184名の医師に対し、平成29年9月に、当該症状を生じた患者に対する診療実態に関するアンケート調査を実施した。
結果と考察
(1)全国疫学調査:一次調査の回答率は60.3%(11,037/18,302診療科)であり、508診療科が「調査対象期間中に、症例基準を満たす患者の受診あり」と回答した。二次調査の回答率は63.8%(324/508診療科)であった。12~18歳における「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」の有訴率は、男子では人口10万人あたり20.2、女子では人口10万人あたり40.3、HPVワクチン接種歴のない女子では人口10万人あたり20.4と推計された。すなわち、「HPVワクチン接種歴のない青少年においても、「多様な症状」を有する者が一定数存在した」ことが明らかになった。
(2)症例フォローアップ調査: 2015〜2017年度末までに、初回調査票56枚、2回目以降調査票804枚の計860枚の回答結果を用いて分析を行った。個人ごとの症状変化をパターン分類し、「A.継続的な就学・就労への支障の程度」および「B.現在の病気の状態(1-10)」における変化のパターンについて評価した。最も多かったのは、「不変または動揺」であり、その傾向は施設別にみてもほぼ変わらない結果を示した。変化のパターンは症状によって必ずしも一致するものではなく、むしろ施設によって異なる治療方針・内容の影響を受け易いことが示唆された。
(3)診療実態調査:医師184名中149名(回収率81.0%、うち9名は同意なし)から回答があった。調査した「受診者数」「通院頻度」「診療時間」「検査の実際と方針」「治療の実際と方針」「病状説明の内容」「改善度の評価指標」について、半数以上の医師が1つの選択肢に集中する項目(例:「通院頻度」)があった。一方で、回答が分散する項目(例:「治療の方針(治療についての考え方)」)も複数見られた。「多様な症状」に対する診療方針は、医師によって異なっている場合が多い実態がうかがわれた。
結論
平成29年度は、全国疫学調査、症例フォローアップ調査に加えて、診療実態調査を実施した。さらに、米国予防接種諮問委員会を視察した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
2018-12-06

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
2018-12-06

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201718020B
報告書区分
総合
研究課題名
子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究
課題番号
H27-新興行政-指定-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 若葉(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 原 めぐみ(佐賀大学 医学部)
  • 柴田 政彦(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学 医学部)
  • 平田 幸一(獨協医科大学 医学部)
  • 岡 明(東京大学 医学部)
  • 宮本 信也(筑波大学 人間系)
  • 喜多村 祐里(津田 祐里)(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 宮岡 等(北里大学 医学部)
  • 端詰 勝敬(東邦大学 大森病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)全国疫学調査:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種歴のない12~18歳の青少年について、「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」を有する患者の人数と有訴率を全国規模で推計する。
(2)症例フォローアップ調査:HPVワクチン接種後に症状を生じ、厚生労働省指定の協力医療機関等を継続受診している症例の特徴を把握し、症状の経時変化の状況等について評価する。
(3)診療実態調査:全国疫学調査の二次調査に回答した医師のうち、「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」を有する患者を報告した者を対象に診療方針や診療実態を全国規模で把握する。
(4)HPVワクチンの有効性に関する研究:子宮頸がん検診受診歴とHPVワクチン接種歴の既存資料を利用した症例対照研究により、接種者と非接種者間での有効性について疫学的に比較分析する。
研究方法
(1)全国疫学調査:調査対象期間は2015年7月1日~12月31日とし、症例基準は、下記①~④すべてを満たす者とした。①12~18歳、②疼痛および感覚の障害/運動障害/自律神経症状/認知機能の障害が少なくとも1つ以上ある、③上記②の症状が3ヵ月以上持続している、④上記②及び③のため就学・就労に影響がある。一次調査の対象は、全国の病院の診療科(対象:小児科、神経内科、ペインクリニック、産婦人科、整形外科、内科、総合診療科、脳神経外科、精神科・心療内科)および厚生労働省指定83施設の窓口診療科から、病床規模や病院特性に応じて全数(100%)または半数(50%)を抽出した。「調査対象期間中に、症例基準を満たす患者の受診あり」と回答した診療科に二次調査を依頼した。一次調査と二次調査の情報をあわせて「多様な症状がありHPVワクチン接種歴のない患者数および有訴率」を推計した。
(2)症例フォローアップ調査:HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関等を受診中の患者を対象に、平成27年12月から症例登録を開始し、毎月1回の頻度で症状や臨床経過に関する質問紙票調査を実施し、患者本人による症状評価を調べるとともにその推移を継続的に観察した。
(3)診療実態調査:全国疫学調査の二次調査に回答した医師のうち、「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」を有する患者を報告した163診療科184名の医師に対し、平成29年9月に、当該症状を生じた患者に対する診療実態に関するアンケート調査を実施した。
(4) HPVワクチンの有効性に関する研究:HPVワクチン接種開始後、平成25年度から平成29年度の5年間における20~24歳の子宮頸がん検診受診者の細胞診の結果をもとに、異常ありを「症例」、生年と市町村をマッチした者を「対照」とし、HPVワクチン接種記録と照合して接種歴を調べ、HPVワクチン接種と子宮頸部前癌病変との関連を検討する。
結果と考察
(1)全国疫学調査:一次調査の回答率は60.3%(11,037/18,302診療科)であり、508診療科が「調査対象期間中に、症例基準を満たす患者の受診あり」と回答した。二次調査の回答率は63.8%(324/508診療科)であった。12~18歳における有訴率は、男子では人口10万人あたり20.2、女子では人口10万人あたり40.3、HPVワクチン接種歴のない女子では人口10万人あたり20.4と推計された。すなわち、「HPVワクチン接種歴のない青少年においても、「多様な症状」を有する者が一定数存在した」ことが明らかになった。
(2)症例フォローアップ調査: 2015〜2017年度末までに、初回調査票56枚、2回目以降調査票804枚の計860枚の回答結果を用いて分析を行った。個人ごとの症状変化をパターン分類し、「A.継続的な就学・就労への支障の程度」および「B.現在の病気の状態(1-10)」における変化のパターンについて評価した。最も多かったのは、「不変または動揺」であり、その傾向は施設別にみてもほぼ変わらない結果を示した。
(3)診療実態調査:医師184名中149名(回収率81.0%、うち9名は同意なし)から回答があった。「多様な症状」に対する診療方針は、医師によって異なっている場合が多い実態がうかがわれた。
(4) HPVワクチンの有効性に関する研究:平成28年8月末時点で本研究班においての実施は終了した。平成28年9月より日本医療研究開発機構研究費「HPVワクチンの有効性と安全性の評価のため の大規模疫学研究(研究代表者:榎本隆之)」において実施している。
結論
全国疫学調査、症例フォローアップ調査、診療実態調査、HPVワクチンの有効性に関する研究を実施した。また、オーストラリアのHPVワクチン関連施設を訪問し、米国予防接種諮問委員会を視察した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201718020C

収支報告書

文献番号
201718020Z