ポリオウイルスの病原体バイオリスク管理の標準化等を推進するための研究

文献情報

文献番号
201718016A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリオウイルスの病原体バイオリスク管理の標準化等を推進するための研究
課題番号
H29-新興行政-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 棚林 清(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 小池 智(公益財団法人東京都医学総合研究所 ゲノム医科学研究分野)
  • 西村 秀一(仙台医療センター 臨床研究部)
  • 佐野 大輔(東北大学大学院 環境科学研究科)
  • 飯田 哲也(大阪大学 微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 世界ポリオ根絶最終段階では、ポリオウイルス取扱い施設から地域社会へのポリオウイルス再侵入のリスクを最小限とするためのポリオウイルスの安全な取扱いと封じ込め(バイオリスク管理)の徹底が求められている。そのため、WHOは、ポリオウイルス病原体バイオリスク管理に関する世界的行動計画(Global Action Plan)改訂第三版であるGAPIIIを公開し、ワクチン株を含む2型ポリオウイルス感染性材料管理の厳格化を求めている。ポリオウイルス取扱い施設(認証施設; PEF)では、GAPIIIに示されたバイオリスク管理標準に準じてポリオウイルスを取扱う必要がある。認証施設以外では、ワクチン株を含む2型ポリオウイルス感染性材料の廃棄が必要とされる。臨床検体および環境検体もバイオリスク管理の対象となることから、ポリオウイルス以外の腸管感染症の検査・研究施設、インフルエンザ等呼吸器感染症の検査・研究施設でもリスク評価に基づいた検体等の廃棄・管理が必要となる。本研究では、GAPIIIで求められているポリオウイルス病原体バイオリスク管理体制整備に資する研究を行う。
研究方法
1. 不活化ポリオワクチン製造および品質管理を実施している施設では、GAPIIIに対応したPEFとしてバイオリスク管理体制の整備を進めている。国内PEF予定施設におけるバイオリスク管理標準について技術的な評価・検討を進める。
2. 2型ポリオウイルスを保管・使用するPEFは、WHOによる封じ込め認証計画(GAPIII-CCS)に基づいて国家機関(National Authority of Containment; NAC)による認証を受ける必要がある。査察員研修等のPEF認証活動に対して、資料の提供等の技術的支援を行う。
3. sIPV抗原量測定のためのD抗原ELISA試験について、不活化抗原を用いる方法の技術的検討を進める。
4. 従来、地衛研で実施してきた、感染症流行予測調査事業におけるポリオ血清疫学解析のうち、2型ポリオウイルス抗体価測定について、感染研で実施する方向で担当地衛研・事務局と調整を進める。
5. 糞便、咽頭拭い等の臨床検体、環境検体もバイオリスク管理の対象となることから、広範な施設における検体保有の実態とバイオリスク評価手法について検討を行う。
結果と考察
本研究では、今後も2型ポリオウイルスを使用するPEF候補施設を対象として、GAPIIIに準じたバイオリスク管理体制の標準化、リスク低減に向けた取り組みを進めた。一方、糞便、咽頭拭い等の臨床検体、下水等の環境検体もポリオウイルス・バイオリスク管理の対象となることから、ポリオウイルス実験室以外の検査・研究施設における、リスク評価に基づいた検体等の廃棄・管理のための検討を開始した。2012年以前に採取した呼吸器検体は、2型感染性ポリオウイルスを含む可能性があることが明らかとなった。環境水ウイルスモニタリングを行なっている研究所で保管している環境水検体のリスクアセスメントによると、Risk Group Levelは高くてもLevel 2 Lowであった。一方、不活化ポリオワクチン品質管理において、できるかぎり感染性ウイルスを用いない手法の開発を進め、感染性ポリオウイルスの替わりに不活化抗原を使用するD抗原測定試験のバリデーションを行った。不活化抗原を用いたD抗原測定試験により、従来法と同様、D抗原量を測定できることが明らかとなった。
結論
2型ポリオウイルスを使用するPEFでは、GAPIIIに示されたバイオリスク管理標準に準じてポリオウイルスを取扱う必要がある。本研究では、PEF候補施設を対象として、GAPIIIに準じたポリオウイルス・バイオリスク管理体制の標準化、不活化抗原を用いたD抗原価測定や感染性ポリオウイルスを用いない中和抗体測定法の開発等、リスク低減に向けた取り組みを進めた。また、PEF施設認証にむけた体制整備を進めた。糞便、咽頭拭い等の臨床検体、下水等の環境検体もポリオウイルス感染の可能性のある材料(PIM)として、バイオリスク管理の対象となることから、ポリオ以外の検査・研究施設における、環境水検体、呼吸器検体、病原体検出あるいは腸内微生物叢解析を目的とした糞便検体等のリスク評価を開始した。2018年4月に、WHO-PIMガイダンス最終版が公開されたことから、保有検体のリスク評価に基づいたリスク低減策の導入が必要とされる。WHO-PIMガイダンスに基づいた国内施設調査・報告が求められており、ガイダンスの内容を国内で周知することが重要となる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201718016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,887,340円
人件費・謝金 0円
旅費 99,784円
その他 14,536円
間接経費 0円
合計 5,001,660円

備考

備考
差額は自己負担

公開日・更新日

公開日
2019-08-01
更新日
-