文献情報
文献番号
201718012A
報告書区分
総括
研究課題名
小児における感染症対策に係る地域ネットワークの標準モデルを検証し全国に普及するための研究
課題番号
H29-新興行政-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮入 烈(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 感染防御対策室)
研究分担者(所属機関)
- 堀越 裕歩(東京都立小児総合医療センター 感染症科)
- 笠井 正志(兵庫県立こども病院 感染症内科 科長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、小児における薬剤耐性菌対策のために、地域における抗菌薬適正使用を推進するためのモデルを構築する事である。主として外来における経口抗菌薬の適正使用を推進するための方策を検討し、最終的には「小児の地域における薬剤耐性菌対策のためのガイダンス」を作成する。
研究方法
初年度は以下の3つの研究計画に則り、これを実施した。
(1)本邦の小児抗菌薬処方実態を明らかにするためのナショナルデータベースを用いた疫学調査
Japan Medical Data Center(JMDC)およびレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のデーターベースを用いた。
(2)小児を対象に「抗微生物薬適正使用の手引き」に順じた診療を行うことの妥当性の検討
3つの小児病院における内服広域抗菌薬事前承認性、許可制の効果について検証した。また厚生労働省から発刊された抗微生物薬適正使用の手引きの質的評価を、場面想定型アンケート調査を用いて行った。
(3)小児における抗菌薬適正使用を地域で推進するためのモデル作り
東京都府中地区をモデル地区に設定し、1次医療機関と調剤薬局を軸としたネットワークを保健所、医師会、薬剤師会の協力を得て構築した。調剤薬局からのデータを統合し、各医療機関の処方量をフィードバックするための方策を検討し実施を開始した。
(1)本邦の小児抗菌薬処方実態を明らかにするためのナショナルデータベースを用いた疫学調査
Japan Medical Data Center(JMDC)およびレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のデーターベースを用いた。
(2)小児を対象に「抗微生物薬適正使用の手引き」に順じた診療を行うことの妥当性の検討
3つの小児病院における内服広域抗菌薬事前承認性、許可制の効果について検証した。また厚生労働省から発刊された抗微生物薬適正使用の手引きの質的評価を、場面想定型アンケート調査を用いて行った。
(3)小児における抗菌薬適正使用を地域で推進するためのモデル作り
東京都府中地区をモデル地区に設定し、1次医療機関と調剤薬局を軸としたネットワークを保健所、医師会、薬剤師会の協力を得て構築した。調剤薬局からのデータを統合し、各医療機関の処方量をフィードバックするための方策を検討し実施を開始した。
結果と考察
2013-2016年におけるNDBを用いた小児内服抗菌薬使用量の検討では、国内で使用されている抗菌薬の系統は第3世代セフェム、マクロライド、ペニシリン系抗菌薬、キノロン系抗菌薬の順に多く、1-5歳未満、特に1歳台に多い事が明らかになった。期間中の抗菌薬使用量には変化が見られず、アクションプラン実現のための具体的介入手段を講じる必要が明らかになった。疾患別の抗菌薬処方に関する実態として、溶連菌感染症に対する抗菌薬処方の6割が第3世代セフェムであり、胃腸炎に対する抗菌薬処方が3割で認められ、マイコプラズマに対する抗菌薬処方として1-2割にクリンダマイシンが処方されていた。
小児の一次診療の現場で、抗微生物薬適正使用の手引きに順じた診療の実現可能性を評価するために、診療体制が整備された3次医療機関における経口抗菌薬の処方制限の影響を調査した。軽症の感染症に対する内服抗菌薬の処方制限は、診療に支障をきたすことなく、内服抗菌薬処方量についてはアクションプランの目標を達成できる可能性が確認された。また、東京都世田谷区の開業小児科医を中心にアンケート調査を行った。多くの小児科医に適正使用の概念が浸透していることが確認された。その一方で、培養検査結果を診療に反映させることが困難な事、処方に対する患者・家族の期待など、社会的な側面での対応が必要であることが確認された。
調剤薬局からのデータを統合し、各医療機関の処方量をフィードバックするための方策を行なった東京都府中地区では、処方量やパターンは診療所ごとに大きく異なる事が明らかになった。4回処方件数をfeedbackできた15つの医療機関のうち、Feedback後に処方の減少が見られたクリニックは、10医療機関、処方内容、処方量に減少が見られない医療機関は5医療機関であった。
患者・家族に対する普及啓発については、府中地域住民にリーフレットの配布を行った。また患者家族を対象とした普及啓発のイベントでは、充分な説明により感冒に対して抗菌薬が不要であることに理解が得られることが確認できた。
小児における抗菌薬使用量評価として、ナショナルデータベース、三次医療機関、クリニック等いずれの規模でもDOT(抗菌薬投与日数)法で評価することが可能であることを明らかにした。今後、取り組み(プロセス)の指標としての抗菌薬の使用量やガイドラインの遵守率が、耐性菌の検出率、感染症の予後などのアウトカムにどのような影響を与えるかを検討する。継続的な評価を行う事で最も効率の良い介入方法についての示唆を得る。
各医療機関におけるAMUは重要であるが、多大な労力が必要であり、抗菌薬使用量調査のシステム開発の必要性が示唆された。モデル地区事業で行っているAMU調査のノウハウを生かし、AMRCRCと共同で抗菌薬使用量調査のシステム開発を行なっていく方針とした。
小児の一次診療の現場で、抗微生物薬適正使用の手引きに順じた診療の実現可能性を評価するために、診療体制が整備された3次医療機関における経口抗菌薬の処方制限の影響を調査した。軽症の感染症に対する内服抗菌薬の処方制限は、診療に支障をきたすことなく、内服抗菌薬処方量についてはアクションプランの目標を達成できる可能性が確認された。また、東京都世田谷区の開業小児科医を中心にアンケート調査を行った。多くの小児科医に適正使用の概念が浸透していることが確認された。その一方で、培養検査結果を診療に反映させることが困難な事、処方に対する患者・家族の期待など、社会的な側面での対応が必要であることが確認された。
調剤薬局からのデータを統合し、各医療機関の処方量をフィードバックするための方策を行なった東京都府中地区では、処方量やパターンは診療所ごとに大きく異なる事が明らかになった。4回処方件数をfeedbackできた15つの医療機関のうち、Feedback後に処方の減少が見られたクリニックは、10医療機関、処方内容、処方量に減少が見られない医療機関は5医療機関であった。
患者・家族に対する普及啓発については、府中地域住民にリーフレットの配布を行った。また患者家族を対象とした普及啓発のイベントでは、充分な説明により感冒に対して抗菌薬が不要であることに理解が得られることが確認できた。
小児における抗菌薬使用量評価として、ナショナルデータベース、三次医療機関、クリニック等いずれの規模でもDOT(抗菌薬投与日数)法で評価することが可能であることを明らかにした。今後、取り組み(プロセス)の指標としての抗菌薬の使用量やガイドラインの遵守率が、耐性菌の検出率、感染症の予後などのアウトカムにどのような影響を与えるかを検討する。継続的な評価を行う事で最も効率の良い介入方法についての示唆を得る。
各医療機関におけるAMUは重要であるが、多大な労力が必要であり、抗菌薬使用量調査のシステム開発の必要性が示唆された。モデル地区事業で行っているAMU調査のノウハウを生かし、AMRCRCと共同で抗菌薬使用量調査のシステム開発を行なっていく方針とした。
結論
小児における抗菌薬処方に不適正使用が多い事が確認された。「抗微生物薬適正使用の手引き」に則った診療は3次医療機関の外来で安全に実施する事が可能で、一部の開業小児科医でも実施可能と考えられた。調剤薬局による処方量把握とフィードバックが可能であることが確認された。
公開日・更新日
公開日
2018-06-05
更新日
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