文献情報
文献番号
201718007A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの構築に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 池辺忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 大島謙吾(東北大学病院総合感染症科・感染症内科)
- 笠原 敬(奈良県立医科大学感染症センター)
- 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 木村 博一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 金城 雄樹(国立感染症研究所真菌部)
- 窪田 哲也(高知大学教育研究部医療学系・内科学・呼吸器内科)
- 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 高橋 英之 (国立感染症研究所 細菌第一部)
- 高橋 弘毅(札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座・呼吸器内科)
- 武田 博明(済生会山形済生病院Total Quality Managementセンター)
- 田邊 嘉也(新潟県立新発田病院呼吸器内科)
- 常 彬(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 西 順一郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野・微生物学、感染症学)
- 福住 宗久(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 藤田 次郎(琉球大学大学院 医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学)
- 丸山 貴也(国立病院機構三重病院・呼吸器内科)
- 村上 光一(国立感染症研究所感染症疫学センター)
- 山崎 一美(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
- 渡邊 浩(久留米大学医学部感染制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
14,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD), 侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD), 侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD),劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の感染症法上の発生動向を解析し、10道県における届出症例の患者情報と原因菌を医療機関と自治体の協力のもとに収集し、各疾患の感染症発生動向と原因菌の血清型や遺伝子型等の関連性を明らかにすることにある。
研究方法
研究デザインは前向き観察研究で、IPD, IHD, STSSについては、国内10道県で感染症発生動向調査(NESID)に報告された症例を後述の研究対象者基準に従って登録し、その基本情報を各自治体から研究分担者に連絡する。一方、年間症例数が少ないIMD については全県で同様の調査を実施した。
結果と考察
国内10道県で実施している成人IPDサーベイランスにおいて、20015年度に12F血清型によるIPDが初めて検出され、2016年度には12Fが成人IPDの原因菌の16%を占め、最も多い血清型となった。12F IPD患者は、非12F IPD患者に比べ、基礎疾患の頻度が有意に低く、PPSV23接種歴も低かった。また、12F IPD 死亡例では非12F IPDの死亡例と比べて、65歳未満の年齢層の割合が有意に多く、菌血症の割合が多いことが示された。
血清型が判明した897例において、PPSV23に含まれる血清型によるIPDに対するワクチン効果(vaccine effectiveness, VE)は45%と算出された。また、追加解析においては、15-64歳のIPDに対するVEは75%で有意、65歳以上のIPDに対するVEについても39%と有意であった。これらの解析から、現行の定期接種ワクチンであるPPSV23の65歳以上のIPDに対する効果が確認された。
2013 年から2017年の間、10道県における成人のIHDは134 例 が報告された。患者年齢は 21―97 歳と幅広く分布し、中央値は76 歳であった。菌血症を伴う肺炎を呈した患者が、半数以上を占め(63/114,55.3%)。症例の約 8 割に何らかの基礎疾患があり、また約 3 割は免疫抑制状態であった。菌血症を伴う肺炎が 55.3% と過半数を占めた。成人IHD原因菌 114 株のうち、109 株 (95.6%) が non-typable Haemophilus influenzae であり、e 型が 3 株、b 型および f 型が各 1 株認められた。薬剤耐性については、β-lactamase negative ampicillin resistant が 35 株 (30.7%) を占めた。
2016年9月~2017年12月の期間で、33例の成人STSS症例が登録された。その致命率は42%であり、大部分の症例で基礎疾患を認めた。推定侵入門戸は、一部の症例では、外傷等の皮膚損傷部位との関連性が示唆された。
2017年1月~12月までの1年間にNESIDへの届出があったIMDは25例であった。そのうち研究班に登録できた症例は19例(回収率76%)であった。血清型については13例について解析が実施でき、うち9例がY群であった。
長崎県の上五島町において、2013年9月から2017年10月末までに855例の市中発症肺炎が登録された。症例の平均年齢は80.1才(16~104才)、男性465例(54.4%)。このうち肺炎球菌性肺炎は126例(14.7%)であった。
血清型が判明した897例において、PPSV23に含まれる血清型によるIPDに対するワクチン効果(vaccine effectiveness, VE)は45%と算出された。また、追加解析においては、15-64歳のIPDに対するVEは75%で有意、65歳以上のIPDに対するVEについても39%と有意であった。これらの解析から、現行の定期接種ワクチンであるPPSV23の65歳以上のIPDに対する効果が確認された。
2013 年から2017年の間、10道県における成人のIHDは134 例 が報告された。患者年齢は 21―97 歳と幅広く分布し、中央値は76 歳であった。菌血症を伴う肺炎を呈した患者が、半数以上を占め(63/114,55.3%)。症例の約 8 割に何らかの基礎疾患があり、また約 3 割は免疫抑制状態であった。菌血症を伴う肺炎が 55.3% と過半数を占めた。成人IHD原因菌 114 株のうち、109 株 (95.6%) が non-typable Haemophilus influenzae であり、e 型が 3 株、b 型および f 型が各 1 株認められた。薬剤耐性については、β-lactamase negative ampicillin resistant が 35 株 (30.7%) を占めた。
2016年9月~2017年12月の期間で、33例の成人STSS症例が登録された。その致命率は42%であり、大部分の症例で基礎疾患を認めた。推定侵入門戸は、一部の症例では、外傷等の皮膚損傷部位との関連性が示唆された。
2017年1月~12月までの1年間にNESIDへの届出があったIMDは25例であった。そのうち研究班に登録できた症例は19例(回収率76%)であった。血清型については13例について解析が実施でき、うち9例がY群であった。
長崎県の上五島町において、2013年9月から2017年10月末までに855例の市中発症肺炎が登録された。症例の平均年齢は80.1才(16~104才)、男性465例(54.4%)。このうち肺炎球菌性肺炎は126例(14.7%)であった。
結論
PPSV23に含まれる血清型によるIPDに対するVEは45%、PCV13に含まれる血清型によるIPDに対するVEは38%、PPSV23に含まれる血清型のうちPCV13に含まれる血清型を除いた血清型によるIPDに対するVEは52%と算出された。65歳以上のIPDに対するVEについても39%と有意であり、現行の定期接種ワクチンであるPPSV23の65歳以上のIPDに対する効果が確認された。成人IHD原因菌 114 株のうち、109 株 (95.6%) が non-typable Haemophilus influenzae であった。加えて、e 型が 3 株、b 型および f 型が各 1 株認められた。
2016年9月~2017年12月の期間で、33例の成人STSS症例が登録された。その致命率は42%であり、推定侵入門戸は、一部の症例では、外傷等の皮膚損傷部位との関連性が示唆された。2017年1月~12月までの1年間に届出があったIMDは25例であり、そのうち19症例が本研究に登録された。
2016年9月~2017年12月の期間で、33例の成人STSS症例が登録された。その致命率は42%であり、推定侵入門戸は、一部の症例では、外傷等の皮膚損傷部位との関連性が示唆された。2017年1月~12月までの1年間に届出があったIMDは25例であり、そのうち19症例が本研究に登録された。
公開日・更新日
公開日
2018-06-15
更新日
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