文献情報
文献番号
201718005A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
柳原 克紀(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 展開医療科学講座 病態解析・診断学)
研究分担者(所属機関)
- 大石 和徳(国立感染症研究所感染症疫学センター呼吸器内科学、感染症内科学)
- 賀来 満夫(東北大学大学院医学系研究科総合感染症学分野 感染制御学、感染症内科学、臨床微生物学)
- 三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学 感染症学、感染制御学、臨床微生物学)
- 山本 善裕(富山大学大学院医学薬学研究部感染予防医学講座 呼吸器内科学、感染症内科学、感染制御学)
- 泉川 公一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学講座 臨床感染症学分野 感染症内科学、呼吸器内科学、感染制御学)
- 大曲 貴夫(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 臨床感染症学(国立国際医療研究センター内)、感染症内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や多剤耐性緑膿菌(MDRP)等の多剤耐性菌の感染症は、従来から大きな問題となっており、解決すべき重要な課題である。最近ではESBL産生菌やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)も増加しており、わが国でもアウトブレイク事例が散見される。本研究では、国内医療機関でのそれらの多剤耐性菌の蔓延を防止するために内外の知見を集約し、個々の医療機関がマニュアルなどを作成する際に参考となる資料や指針を提供するものである。加えて、行政機関を含め地域連携ネットワークを通じて医療関連感染対策を実施するための支援ツールや今後のプランを提案する。
研究方法
目的完遂のために、①医療機関における薬剤耐性菌の現状に関する研究、②臨床分離肺炎球菌の疫学解析、③医療機関等における感染制御に関する研究、④医療機関における抗菌薬の使用実態に関する研究。⑤耐性菌に対する感染制御策の実態把握と評価、⑥国民の薬剤耐性に関する意識についての研究を行った。
結果と考察
医療機関における薬剤耐性菌の現状に関する研究では、MRSA343株、肺炎球菌176株、ESBL産生菌180株、CRE95株、耐性緑膿菌15株、アシネトバクター属131株について薬剤感受性試験を行った。MRSAではバンコマイシン耐性は認められなかった。肺炎球菌ではPRSPはなく、PISPが2.3%あった。ESBL産生菌ではキノロン系抗菌薬では80%が耐性であったのに対して、タゾバクタム・ピペラシリンやカルバペネム系抗菌薬、アミカシン(AMK)ではほとんどの菌株が感性であった。CREではEnterobacter属が80%以上を占めていた。キノロン系抗菌薬では20%程度が耐性であったのに対してAMKは全株が感性であった。耐性緑膿菌15株のうち6株が3系統耐性の多剤耐性緑膿菌であり、うち5株がメタロβラクタマーゼ産生であった。アシネトバクター属については、多剤耐性アシネトバクターは1株のみであった。
臨床分離肺炎球菌の疫学解析では、最も頻度が多かった3型は、PCV13含有血清型であるにも関わらず、徐々に増加傾向であった。また、PCV13非含有血清型である11A、33F及び35B型が有意に増加していた。血清型によってペニシリン結合タンパク質(PBP)遺伝子変異およびマクロライド耐性遺伝子の保有に特徴があることも明らかとなった。
医療機関等における感染制御に関する研究では、全国の施設にアンケートを送付し、回答のあった感染対策地域連携加算1の172施設、加算2の76施設について解析をおこなった。日常的な微生物検査を院内で行っている割合やアウトブレイクが起こった時に積極的監視培養を行う施設の割合が加算1の施設の方が高かった。また、全体としてESBL産生菌やCREで積極的に隔離を行う割合がMRSAなどと比較して低い傾向にあることが明らかとなった。
医療機関における抗菌薬の使用実態に関する研究では、抗菌薬使用総量が多い施設で緑膿菌、大腸菌の薬剤耐性化、ESBL産生菌およびCREの検出が多い傾向にあった。しかし、抗菌薬使用総量が少ない施設でMRSAの割合が高いなど、抗菌薬使用と耐性菌の割合が一致しない事例も認められた。
耐性菌に対する感染制御策の実態把握と評価では、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)についてNESIDとJANISという2つのサーベイランスを比較した。NESIDとJANISでは当道府県間で差が認められた。Van遺伝子については、NESIDのみで確認が可能であった。それぞれの特徴
国民の薬剤耐性に関する意識についての研究では、インターネットでアンケートを行い、3390人から回答を得られた。全参加者の11.7%が自分で抗生物質を保有し、うち23.6%が自己判断でこれを使用していた。また、80%が抗生物質はウイルスを殺すことができず風邪やインフルエンザに対して効果がないことを知らなかったことが明らかとなった。また、参加者の一般的な情報源はテレビのニュースや新聞であり、過去1年で参加者の40%以上がこれらの情報源から情報を得ていた。情報を得たあとに抗生物質に関する意見が変わったと回答したのは58.9%であった。
臨床分離肺炎球菌の疫学解析では、最も頻度が多かった3型は、PCV13含有血清型であるにも関わらず、徐々に増加傾向であった。また、PCV13非含有血清型である11A、33F及び35B型が有意に増加していた。血清型によってペニシリン結合タンパク質(PBP)遺伝子変異およびマクロライド耐性遺伝子の保有に特徴があることも明らかとなった。
医療機関等における感染制御に関する研究では、全国の施設にアンケートを送付し、回答のあった感染対策地域連携加算1の172施設、加算2の76施設について解析をおこなった。日常的な微生物検査を院内で行っている割合やアウトブレイクが起こった時に積極的監視培養を行う施設の割合が加算1の施設の方が高かった。また、全体としてESBL産生菌やCREで積極的に隔離を行う割合がMRSAなどと比較して低い傾向にあることが明らかとなった。
医療機関における抗菌薬の使用実態に関する研究では、抗菌薬使用総量が多い施設で緑膿菌、大腸菌の薬剤耐性化、ESBL産生菌およびCREの検出が多い傾向にあった。しかし、抗菌薬使用総量が少ない施設でMRSAの割合が高いなど、抗菌薬使用と耐性菌の割合が一致しない事例も認められた。
耐性菌に対する感染制御策の実態把握と評価では、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)についてNESIDとJANISという2つのサーベイランスを比較した。NESIDとJANISでは当道府県間で差が認められた。Van遺伝子については、NESIDのみで確認が可能であった。それぞれの特徴
国民の薬剤耐性に関する意識についての研究では、インターネットでアンケートを行い、3390人から回答を得られた。全参加者の11.7%が自分で抗生物質を保有し、うち23.6%が自己判断でこれを使用していた。また、80%が抗生物質はウイルスを殺すことができず風邪やインフルエンザに対して効果がないことを知らなかったことが明らかとなった。また、参加者の一般的な情報源はテレビのニュースや新聞であり、過去1年で参加者の40%以上がこれらの情報源から情報を得ていた。情報を得たあとに抗生物質に関する意見が変わったと回答したのは58.9%であった。
結論
今年度実施した研究で我が国における薬剤耐性菌、感染制御、抗菌薬の使用についての現状が明らかとなった。今後は耐性菌の遺伝子解析などさらに詳細な解析を行い、医療機関がマニュアルなどを作成する際に参考となる資料や指針の作成を行う。また、医療従事者以外の国民の認識も明らかとなり、正しい知識を周知する必要性も明らかとなったため、本研究の成果を活用した情報の提供を目指す。
公開日・更新日
公開日
2018-05-21
更新日
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