子宮頸がんワクチン接種後に生じた症状に関する治療法の確立と情報提供についての研究

文献情報

文献番号
201718003A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がんワクチン接種後に生じた症状に関する治療法の確立と情報提供についての研究
課題番号
H28-新興行政-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人 信州大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 桑原 聡(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 平井 利明(学校法人帝京大学 医学部)
  • 中島 利博(学校法人東京医科大学 医学部)
  • 太田 正穂(国立大学法人信州大学 医学部)
  • 本田 秀夫(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
  • 楠 進(学校法人近畿大学 医学部)
  • 神田 隆(国立大学法人山口大学 大学院医学系研究科)
  • 高嶋 博(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,804,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
i) 神経内科専門医から成る全国診療ネットワークを形成して、患者登録と詳しい実態調査を行う、ii) 病原性自己抗体と感受性遺伝子を含めた病態解明、特に脳障害とHLA geno-typeとの関連を明らかにする、iii) 血液浄化療法(免疫吸着)、ステロイドパルス療法を含めた新規治療法の開発を行う、iV) 疾患モデルマウスを作成して、その病態解明を行う。
研究方法
HPVワクチン接種後副反応に関しては、診察希望のある患者さんを診察して、個々の症状の発生時期と頻度を検討した(池田、青木、楠、神田)。特に脳症状がある患者では高次脳機能検査(WAIS-III、TMT試験)、脳SPECTを行い、発生機序を検討した(高嶋、桑原、池田)。また、本病態における身体障害と精神障害の鑑別点を列挙した(本田)。新規治療法として、免疫吸着、ステロイドパルス療法を施行して、その効果を客観的指標で評価した。(桑原、高嶋、平井)。成因に関して疾患感受性遺伝子としてHLA geno-typeと臨床像を対比した(高嶋、太田)。本病態の詳細を解析するために疾患モデルを作成して、このマウスの血液、脳脊髄液中の炎症関連物質の測定を計画した(中島)。
結果と考察
研究結果
・研究代表者:池田修一
1)2013年7月~2016年12月までの間にHPVワクチン接種後副反応疑いで当院を受診した162名の女性を改訂診断基準で検討した結果、確実例は30例、疑い例は42例であった。これらにおいてワクチン初回接種は、2010年5月~2013年4月までの期間であり、症状発現は2010年10月~2015年10月までであった。さらに2017年度に本ワクチン接種後の副反応と診断された11名の症状発現時期は2014年2月以前であった。
2)ワクチン接種後副反応患者60名の予後調査では、四肢の疼痛、振るえ、麻痺は半数以上で軽快していたが、疲労感、睡眠異常、月経障害の改善は乏しかった。

各研究分担者の研究結果
高嶋 博:
1)本年度新規受診患者4名。
2)2012~2017年にHPVワクチン接種後神経障害で受診した女性は42名であり、主な症状は頭部・四肢の疼痛、自律神経障害、四肢の運動麻痺、高次脳機能障害であった。
3)免疫吸着を施行したが23名中13名で有意な治療効果があった。
桑原 聡:
1)本年度新規受診患者2名。
2)2015年3月~2017年10月までにHPVワクチン接種後神経障害で受診した女性は16名であり、自律神経機能検査では4名に体位性起立頻脈症候群(POTS)を、脳SPECT画像では10名に血流低下を、7名に高次脳機能検査にて処理速度の低下がみられた。
3)免疫調整療法前後で評価した5名中4名で症状と脳SPECT画像の改善が得られた。
平井利明:
1)本年度新規受診患者1名。
2)HPVワクチン接種後副反応疑いで、2014年3月~2017年10月の間に受診した患者は130名であり、70名が登録され、詳細な検査を受けた。この中の8名は痙攣、激しい不随意運動、呼吸停止などの理由で、24時間家族の監視が必要である。脳SPECTを施行した41名中38名で異常が見られ、特に前部帯状回の血流低下が高頻度に検出された。
神田 隆:
1)本年度新規受診患者0名。
2)2013年10月~2017年10月の間にHPVワクチン接種後副反応疑いで受診した女性は14名(本年度の新規患者は1名)、この中の11名が難治性疼痛を訴え、9名が学校生活に支障があった。
楠 進:
1)本年度新規受診患者3名。いずれの患者も症状発現に心因的要因の関与が疑われた。
青木正志:
1)本年度新規受診患者1名。
本田秀夫:
1)2013年1月~2017年6月の間に国際誌に掲載されたHPVワクチン接種後副反応に関する文献を検討した。
太田正穂:
1)HLA-class II 遺伝子の解析を80名に対して施行した。HPVワクチン接種後副反応を呈した患者群において、HLAの特定のgeno-typeとの相関関係を見出すことができなかった。
中島利博:
1)疾患モデルマウスの作成をして、このマウスの脳脊髄液中の炎症性サイトカインの解析を開始した。

考察
従来の本研究班の調査では子宮頸がんワクチン接種時期と同ワクチンの副反応が疑われている症状の発現時期はかなり重複していた。また直近の1年以上の期間において、新規に副反応症状を呈している女性患者は殆どいないと推測される。HPVワクチン接種後副反応の発現に関与する候補遺伝子としてHLA遺伝子を検索したが、本遺伝子と同症状発現との関連は見出せなかった。
結論
子宮頸がんワクチン接種後の副反応と言われている病態について、本研究班が掌握している実態をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
2018-10-12

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
2018-10-12

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201718003Z