精神障害にも対応した地域包括ケアシステムのモニタリングに関する政策研究

文献情報

文献番号
201717037A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムのモニタリングに関する政策研究
課題番号
H29-精神-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神保健計画研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山之内 芳雄(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 立森 久照(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 萱間 真美(聖路加国際大学大学院看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
23,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課では、毎年6月30日付で全国の精神科病院、精神科診療所、障害者福祉施設・事業所、および精神保健医療福祉行政の状況について調査を行ってきた。このいわゆる630調査はわが国の精神保健福祉のモニタリングにおいて貴重な資料となってきた。ただ、データを収集してから活用できるようになるまでの期間が長く、「これからの精神保健福祉のあり方に関する検討会」でも迅速化の必要性が指摘されていた。
迅速化を妨げていた要因を検討した結果、ナショナルデータベース(NDB)等の他調査で代表可能な項目の調査項目からの除外や、調査票の形式の統一やICTの活用を進めることで一定の迅速化は可能と考えられた。一方で、精神障害者の地域生活を支える福祉需要の同定や、医療計画、障害福祉計画、介護保険事業計画などの進捗管理のために、630調査でなければ調べることのできない精神医療独自の指標もあり、これらについてはむしろこれまで以上に詳細なデータ収集が必要とも考えられた。
これらを踏まえ、630調査のプロセスを迅速化させたうえでより効果的なモニタリングを行い、厚生労働科学研究班「精神科医療提供体制の機能強化を推進する政策研究」とも密に連携して、医療計画等に資するデータを収集するとともに利用者が分析しやすいデータベースを開発することを本研究の目的とした。
研究方法
迅速化を妨げていた要因として、調査内容が膨大であることによる回答期間延長や回答エラーの多さ、調査票の形式の不統一、回収や確認の経路が非常に長いこと等が考えられた。そのため、調査形式を集計表から個票へ、紙媒体から電子媒体へ変更するとともに、調査内容に関してもNDB等で把握可能な指標については調査項目から割愛し、NDB等で把握できない指標でかつ医療計画、障害福祉計画、介護保険事業計画に資するデータに関して項目を追加するという項目の再選定を行った。また訪問看護に関しては、訪問看護ステーションを対象とした調査を新設した。さらに、このように改善された630調査の結果から参考指標を作成しつつ、重点指標についてはNDBから抽出したデータに基づいて作成し、精神保健医療福祉の現況を一元的に把握できる新しい精神保健福祉資料の作成を目指した。
なお、電子媒体の調査票の設計、医療機関や自治体からの調査票回収に用いたアップロードサイトの作成・運用および結果の粗集計については日本アイ・ビー・エム株式会社に委託した。調査票は巻末資料として掲載した。
(倫理面への配慮)
行政調査であるため倫理委員会には諮らなかったが、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を念頭に置き、個人情報保護等について十分に検討した上で調査を実施した。氏名・年齢は調査項目に含めなかった。
結果と考察
調査形式を大幅に変更し、約3か月間という回答期限を設定したにもかかわらず、病院に関しては全国平均97.6%、新設した訪問看護ステーションについても約77%という高い回収率を得た。集計結果に関しては「精神科医療提供体制の機能強化を推進する政策研究」における「平成29年度精神保健福祉資料」に掲載した。また、630調査の結果の一部を参考指標として含めた「平成29年630調査速報版を用いた都道府県職員向け 精神疾患に係る医療計画等策定の作業マニュアル」を、平成29年12月4日に厚生労働科学研究班「精神科医療提供体制の機能強化を推進する政策研究」から公開した。
考察
集計表から個票への変更、調査票の紙媒体から電子媒体への変更等を通して630調査の調査形式を抜本的に変更し、そのことで調査のフローおよび結果公表までの期間を大幅に短縮することができ、また高い回収率を保つこともできた。さらに、調査項目の再選定により、医療機関の機能や各自治体における精神保健医療福祉の現況についてより適切な把握が可能となった。訪問看護についても、長期入院患者の地域移行、急性期患者の早期退院支援等に必要な地域基盤の状況等についてこれまで以上に詳細なデータが得られた。これらのことから、自治体が630調査の結果を医療計画等に活用する動きがあり、本研究の行政的意義は高いと考えられる。
今後は、退院者の転帰や精神科外来診療の機能、精神医療審査会の機能に関しても630調査で明らかにして、それを新しい精神保健福祉資料に統合していく予定である。
結論
調査形式の大幅な改善により、高い回収率を保ちつつ調査プロセスの迅速化に成功した。また調査項目の再選定により、医療機関の機能や各自治体における精神保健医療福祉の現況についてより適切な把握が可能となり、NDBから得られたデータと合わせて精神保健医療福祉の現況を一元的に把握できる新しい精神保健福祉資料の主要部分を完成した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
2018-11-21

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201717037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
29,891,000円
差引額 [(1)-(2)]
109,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,087,909円
人件費・謝金 8,228,985円
旅費 1,154,577円
その他 12,190,297円
間接経費 6,230,000円
合計 29,891,768円

備考

備考
差額の768円は自己資金です

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
-