重度かつ慢性の精神障害者に対する包括的支援に関する政策研究-心理社会的治療/方策研究班

文献情報

文献番号
201717036A
報告書区分
総括
研究課題名
重度かつ慢性の精神障害者に対する包括的支援に関する政策研究-心理社会的治療/方策研究班
課題番号
H29-精神-一般-008
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
井上 新平(社会医療法人北斗会さわ病院 診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 澤 温(社会医療法人北斗会さわ病院 理事長・院長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,845,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、重度かつ慢性の患者の地域移行、地域定着のための包括的支援アプローチの中に組込まれるべき心理社会的治療/方策を明らかにし指針として提示することである。平成25年~27年に行われた「精神障害者の重度判定及び重症患者の治療体制等に関する研究」を受け、長期入院患者の地域移行に取り組んでいる好事例病院を対象に個々の取り組みに加えて治療体制等を調査しようとした。
研究方法
 好事例病院は、1)先の研究で施行したアンケート調査の対象病院から長期入院患者の退院が多かった32病院、2)本研究施行のために設けたアドバイザリーグループメンバーの推薦を受けた32病院に加えて重度かつ慢性の患者の治療でモデル的な活動をしている岡山県立精神科医療センターも対象に含めた。以上の中から病院規模・地域性・保有施設を考慮し16病院を訪問調査の対象とし、それとは別に2病院で治療過程を分析した。
結果と考察
1.退院促進に取り組んだきっかけでは、退院促進事業への対応、病棟のダウンサイジング、管理者の交代などが見られたが、総じて地域移行の流れに対応していた。
2.利用した事業では、地域移行実施加算、精神保健福祉士配置、地域移行機能強化病棟が見られた。
3.退院の発議は様々な段階でなされるが、退院可能な患者の見落としを防ぐために組織的検討・多職種による検討が行われていた。
4.発議後のプロセスでは、計画→実行→評価→改善のPDCAサイクルが見られ、プログラムの内容は随時変更され、病院レベルでの評価も含めて頻回に治療経過がチェックされていた。発議から治療過程のモニターまで組織的な取り組みが重要と思われた。
5.治療を推進する主要なスタッフでは、看護師主体、看護師に加えて作業療法士あるいは精神保健福祉士など病院の状況で様々であったが、集団プログラムは多職種が専門性を越えて関わっていた。多職種協働の重要性が伺われた。
6.医師にはチーム医療の一員としての役割が求められており、急性期に劣らず慢性期でも医師の役割は重要と思われた。
7.利用されるプログラムでは、作業療法などの常設のプログラムを主体とし退院を目指した企画的なプログラムが施行されていた。後者では患者のモチベーション喚起を重視し実習的な内容を取り入れたりピアサポーターの応援を求めたりしているものが多かった。
8.ピアサポーターが参画するプログラムが重視されており、彼らは患者のみならずスタッフの意識改革をももたらすようであった。
9.家族へのアプローチではさまざまの工夫がなされており、個別の病院の取組み方についての情報の共有が重要と思われた。
10.退院後の支援方法では、クライシスプランを作成する、支援するスタッフを決める、特別な支援チームで対応するなどの工夫が見られた。
11.地域との連携では自前の施設をもたない連携型の病院は例外的であった。地域の機関との関係では、病院のプログラムに地域の機関が参加してくるという形が多かった。地域との連携でも病院の特徴がでるようであった。
12.退院先としては、自宅、グループホーム、高齢者施設の3つが主要な退院先であった。
13.多飲水、嚥下困難、衝動性などの症状・問題行動に対して、看護師の対応に工夫が見られるケースがあった。
14.症例分析からは、多職種カンファレンスと評価尺度を用いることの重要性や個別の工夫の重要性が示唆された。
15.分担研究では、少数の「重度かつ慢性」基準を満たす入院患者を対象にパイロット的試行を行い、地域移行させるには入院費と同等あるいはそれ以上の経費が掛かることが分かった。
結論
 本研究は好事例病院における治療過程を項目ごとに整理したが、所見は定性的なものである。今後は得られた所見が一般化されるかどうかの調査が必要と思われた。また重度かつ慢性に相当する患者の地域移行には入院と同等の経費を要することが判明した。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
2018-11-21

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
2018-11-21

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201717036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,998,000円
(2)補助金確定額
6,998,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 290,415円
人件費・謝金 3,036,514円
旅費 1,169,913円
その他 1,348,192円
間接経費 1,153,000円
合計 6,998,034円

備考

備考
普通預金利息

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
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