精神科救急および急性期医療の質向上に関する政策研究

文献情報

文献番号
201717030A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科救急および急性期医療の質向上に関する政策研究
課題番号
H29-精神-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医療センター)
  • 八田 耕太郎(順天堂大学医学部附属練馬病院)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 塚本 哲司(埼玉県立精神保健福祉センター)
  • 橋本 聡(国立病院機構熊本医療センター救命救急・集中治療部(精神科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
16,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各自治体における精神科救急医療体制整備事業(以下「事業」)の整備・構築は、包括的ケア体制の構築を目指す我が国の精神保健医療福祉政策における重要課題である。精神科救急及び急性期医療の任務は、迅速な危機介入と長期在院者の発生抑止による地域ケアの推進にあるが、逆に地域ケア推進のためには危急なニーズに即応できる包括的なサービス体制が欠かせない。本研究の目的は、現在運用に大きな地域差がある事業の実態と、医療機関間で多様性がある精神科救急及び急性期の医療内容を把握し、課題の抽出を行って標準化を推進するための諸策を指針等に取りまとめ、提言することである。また、近年多様化する精神疾患の医療ニーズに対しても、その応急的対処に必要な専門知識やスキルの向上、体制の更なる整備、連携の工夫や促進などの進化が求められる。
以上をふまえ、本政策研究では精神科救急及び急性期医療における①医療判断やプロセスの標準化と質の向上(杉山分担班)、②体制に関する実態と課題(平田分担班)③薬物療法標準化(八田分担班)④薬物乱用および依存症診療の標準化と専門医療連携(松本分担班)⑤自治体および医療機関の連携等の地域体制の在り方(塚本分担班)、⑥一般救急医療との連携の構築(橋本分担班)についての分担班を設置し、それぞれの課題に取り組んだ。
研究方法
①事業実績の経年変化分析、実際の判断場面における調査、自治体調査などによって医療判断プロセスの実態や影響要因を探る。②事業実績の解析、精神保健福祉資、レセプト情報・特定健診等情報データベース等による医療実態や資源把を行う。③精神科救急医療現場の多施設共同研究ネットワーク(JAST)における観察研究によって、急性期の2次的治療方策の詳細を3つの臨床疑問から解き明かす。④規制薬物使用の医療現場における司法的対応のあり方および薬物乱用・依存への介入のあり方に関して専門家会議で意見交換を行い、論点を整理する。⑤事業における地域体制や医療機関の連携等について、自治体アンケートを通じ既存の基準を用いて評価し、トリアージにおける課題を探る。⑥一般救急との並列型連携の好事例調査を通じ共通事項を抽出して地域連携に資する要因を探るとともに、搬送困難事例を調査し実態把握に努める。
結果と考察
①入院要否、非自発入院要否等の医療判断における種々の要因や課題が確認された。入院医療必要との専門医学的判断にもかかわらず、制度上の理由により導入できないケースが1.2%程度発生することが確認された。精神科時間外受診ニーズは16の代表的状況に集約された。地域指標としての「人口対時間外入院件数」の有用性が示された。初期救急医療体制について好事例をまとめた。②複数のデータソースを用いて事業実態や医療資源の把握に取り組み、確認手法における課題を確認するとともに新たな実態把握方策開発に着手した。③順調に症例集積中。④司法対応について一定の見解と課題が示され、精神科救急における簡易ツールを開発した。⑤事業における受診前相談の自治体間の不均一が観察されたほか、基準を用いた体制評価により事業の課題や整備状況が自治体ごと焦点的に明確化された。⑥好事例調査から身体合併症や自殺対策等への積極的対応、自治体支援、上層部理解、多職種協働などが連携に重要な要因であったほか、搬送困難例の調査を開始した。
結論
研究年度途中であるが、各分担班の研究的取り組みにより、精神科救急および急性期医療における標準化や質向上に資する観察所見、提言が集積されており、最終的に包括的ガイドラインを改訂するための根拠が整いつつある。今後、体制の均霑(てん)化および診療現場での標準化がはかられ、入院医療の適正化や、入院長期化のさらなる防止が全国規模で推進されれば、全体システムとしての「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の完備にも寄与が大きい。

公開日・更新日

公開日
2019-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201717030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
15,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,591,692円
人件費・謝金 3,438,423円
旅費 793,148円
その他 5,484,706円
間接経費 3,692,000円
合計 15,999,969円

備考

備考
自己資金:969円

公開日・更新日

公開日
2019-06-28
更新日
-