こころの健康づくりを推進する地域連携のリモデリングとその効果に関する政策研究

文献情報

文献番号
201717024A
報告書区分
総括
研究課題名
こころの健康づくりを推進する地域連携のリモデリングとその効果に関する政策研究
課題番号
H28-精神-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター 成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山之内  芳雄(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康日本 21(第二次)では「休養・心の健康づくり」が重視されたことを受け、地域住民の精神疾患の発症を予防し、早期対応・治療につなげ、精神疾患による生活への悪影響を最小化への寄与を目的とする。行政相談機関において①相談、初期対応、トリアージ②プライマリケア、専門精神医療、教育、警察等との地域連携支援③地域住民の啓発等のパブリックメンタルヘルス活動を促進する。モデル地域に地域精神保健医療支援ネットワークそれ自体を調査、効果検証の対象としていること、相談対応における国レベルで標準化された評価、早期対応のプログラム、研修が提供され、その効果検証が行われることが特徴である。
研究方法
1.地域の保健師に日頃の精神保健相談に関する業務についてヒヤリングを行い、相談事例と支援上の課題を整理した。2.厚生労働省により3年ごとに行われる国民生活基礎調査におけるこころの健康の指標であるK6について、今年度は統計法(平成19年法律第53号)第33条の規定に基づき、重症の精神障害に相当する者の割合と精神医療機関への受療状況について、性別・年齢階級別で集計した。松山市保健所の母子保健領域の事業で、妊産婦に対するエジンバラ抑うつ尺度を用いたスクリーニングと、そこでの抑うつ傾向にあるものに対する産後の認知行動療法(CBT)技法を用いたフォローアップ訪問事業について助言を続けた。3.睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)に基づく主治医の確定診断別に、8項目に分類し、それぞれのAIS得点とCES-D得点を算出し、疾患別に比較した。有意水準は.05と定めた。4.保健師を対象に質問紙調査を実施した。調査材料として,フェイス項目で性別,年齢,保健師経験年数,精神保健相談・こころの健康づくりに関わる業務の経験の有無(2件法),子どもや子育てに関わる業務の経験の有無(2件法),これまでの業務の内容や支援の対象者(自由記述)を尋ねた
結果と考察
1. 精神保健福祉の現場において精神保健相談のニーズは高く、発達障害、家庭内暴力、性犯罪被害、人格障害、長年に及ぶひきこもり等が絡む複雑かつ困難な事例が多いことが示された。現場の保健師らと関連職員らは限られたリソース内でそれらのケースを抱え、長期にわたり追跡しているが、その対処法については統一された明確な指針・尺度・マニュアル等が存在せず、精神保健相談支援モジュールへの期待は大きい。2. K6が13点以上の者の割合については、性別では女性の方が高く、年齢階級別では男女とも25-29歳において最も割合が高く、30-34歳、35-39歳の年齢階級がこれに続いた。強い心理的苦痛を抱えながらも精神医療機関を受診していない者が男女ともに非常に多いことが示された。受診につながるような保健活動が必要であると考えられる。松山市の事業では要フォロー者に対するCBT技法を用いた面談訪問の継続が難しくなっていることがわかった3.地域住民における良眠群との比較から、AISは不眠症状のスクリーニングに有効であることが示唆された。また、不眠症患者はCES-D得点で評価される抑うつ度もカットオフ値を超えており(20.9点)、不眠症状に加えて抑うつ状態の評価も重要であると考えられる。4. 保健師のMHL得点を調べ,関連要因を探索し,教員,臨床心理学大学院生,学部生のMHL得点と比較検討を行った結果,合計得点と関連する要因は特定できなかったが,保健師の年齢が高いほど,保健師経験年数が長いほど,MHLの対処法因子得点は高いことが示された。このことからこどもを含む家庭全体の精神保健の課題を抱える地域住民の相談に携わる保健師には,プライマリイケアにおけるメンタルヘルス専門家として早期対応や予防において果たす役割が期待されている。
結論
精神保健福祉の現場において精神保健相談のニーズは高く、発達障害、家庭内暴力、性犯罪被害、人格障害、長年に及ぶひきこもり等が絡む複雑かつ困難な事例が多いことが示された。対処法については統一された明確な指針・尺度・マニュアル等が存在せず、精神保健相談支援モジュールへの期待は大きい。また、重篤な心理的苦痛を感じる者が、受診につながるような保健活動が必要であると考えられる一方で、保健活動において、それほどの苦痛がない者が過度に医療化されないような、重症者に対する妥当性をもったトリアージが必要であると考える。不眠対策リーフレットは、相談者の不眠のセルフチェック、自宅での予防対策および受診行動につながることが期待される。保健師の有するMHLは精神保健相談業務経験にある程度依存しており,経験によらず専門家として高いMHLを獲得するために,今後の人材養成の見直しが強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-10-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-10-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201717024Z