文献情報
文献番号
201717019A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的管理下における介護及び日常的な世話が必要な行動障害を有する者の実態に関する研究
課題番号
H27-身体・知的-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
市川 宏伸(日本発達障害ネットワーク 調査研究委員会)
研究分担者(所属機関)
- 内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部)
- 井上 雅彦(鳥取大学 医学系研究科)
- 志賀 利一(国立重度知的障害者総合施設のぞみの園)
- 高橋 和俊(社会福祉法人侑愛会・おしま地域医療センター)
- 田中 恭子(熊本大学医学部 児童精神医学)
- 堀江 まゆみ(白梅学園大学 こども学部)
- 會田 千重(国立病院機構肥前精神医療センター)
- 小倉 加恵子(森之宮病院)
- 小野 和哉(聖マリアンナ医科大学)
- 田渕 賀裕(関東医療少年院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
知的障害・発達障害を対象とした医療は、長らく量的にも質的にも不十分であった。その背景には、医療関係者の無関心、福祉関係者の無理解、当事者が自ら不調を訴えないことなどがあると推測されていた。これらの現状について研究を行う一環として、保護者を対象に、精神科医療への意識を調べ、今後の改善策を考えることとした。または知的障害・発達障害医療へのプレパレーションの必要性を検討することとした。高齢化および医療の高度化に伴って福祉現場における医療体制の整備を考えた。高齢化に伴い、知的障害者・発達障害者も生活習慣病のリスクが高まるだけでなく、認知機能の衰えもあり、そのような状況での健康診断を考えることとした。平成27年度の英国見学に続き、今年度はデンマークの見学を行い、先進的とされる国の状況を調査する。
研究方法
研究体制は全体の統括を<市川、内山>が行い、①福祉と医療の連携については:精神科医の専門性調査について<市川、今井>が行い、発達障害へのプレパレーションについては<井上>が、渡島コロニーにおける福祉スタッフの医療的ケアに対する意識調査を<高橋>が、強度行動障害者施設における重大な身体症状の発生頻度や内容に関する原因を<田中>が行った。②主として入院施設を有する医療施設については:全児協群、国立機構群、日精協群の3群比較を<田淵>が、③福祉施設利用者の健康度調査については:知的発達・発達障害の人間ドッグは<市川、山脇>が、デンマークにおける先進的な福祉現場の見学は<堀江、山脇>らが赴いた。
結果と考察
福祉施設機関(渡島地域療育センター、望みの園、三気の里など)の調査をさらに継続し、福祉医療施設の意識調査を継続を行った。全国児童青年精神医療施設、国立病院機構、日本精神科病院協会傘下にある病院における、知的障害・発達障害への医療内容の比較を行い、約10年前に行った調査との比較を行い、大きな変化はないことを確認した。精神科医療についての保護者調査からは、「成人を対象にした精神科医の専門性に大きな違いがある」、「児童期の医師から成人期医師への引き継ぎに課題がある」、「精神科医師の役割については、親の期待と医師自身の意識にズレがあった」ことが分かった。今後、知的障害・発達障害者が医療機関を受診することを考慮し、小児期からプレパレーションの導入が必要と考えられた。福祉施設(望みの園、渡島地域療育センターなど)利用者を中心とした健康調査度調査を継続した。また杉並区の病院で行われている“知的障害・発達障害児”を対象とした人間ドックについては、病院のコスト削減の波の中で厳しい状況におかれていた。大牟田で試みられている、“障害者”を対象とした人間ドックの試みもなかなか進行していない現状があった。デンマークの福祉現場では、1970年度から知的障害・発達障害のグループホーム(GM)が出来ており、「障害者への違和感・差別感がほとんどない」ことが目立った。最近は経済的引き締めが強まっているようだが、「政府の福祉重視の政策」などが目立った。当事者団体も、政府と対等の立場で話し合いを持ち、障害者の権利が守られている実感があった。
結論
知的障害・発達障害児者を対象とした医療は量も、質も不足しており、その原因の一つに、医師の役割については、「親の期待と医師自身の意識にズレ」が認められた。医師の専門性については「大きな違いがある」ため、保護者の満足度が低くなる可能性があった。これらの課題が存在する原因については、3年度の調査をもとに検討を加える予定である。
公開日・更新日
公開日
2018-11-21
更新日
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