就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラム構築のための調査研究

文献情報

文献番号
201717011A
報告書区分
総括
研究課題名
就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラム構築のための調査研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
梅永 雄二(学校法人早稲田大学 教育・総合科学学術院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特別支援学校卒業生等が就労継続支援B型の利用を希望する場合、就労移行支援事業所(地域に就労移行支援事業所がない場合には就業・生活支援センター)においてアセスメントを実施することとなっている。
 しかしながら、全国に約3,000か所以上も設置されている就労移行支援事業および332箇所設置されている就業・生活支援センターにおいては、アセスメントの期間や内容が統一されているわけではない。
 よって、本研究では平成28年度の全国の就労移行支援事業所および就業・生活支援センターに実施したアンケート調査をもとに、平成29年度には実際に地域の障害者就労移行支援事業所および障害者就業・生活支援センタ―等を訪問し、就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラム構築のための情報収集ヒアリングを実施した。
 また、わが国では就労アセスメントの情報が少ないため、米国で開催されているTASH Conferenceに参加し、最新の就労アセスメントの情報収集を行い、その結果をもとに東京都立小児総合医療センターにおいて、就労アセスメントに関する研修を行い、受講生にアンケートを実施し、今後の就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラムに関してまとめることを目的とした。
研究方法
(1)就労移行支援事業所等へのヒアリング
1)対象:アンケート調査の結果から、先駆的な就労支援を実施していると考えられた就労移行支援事業所および就業・生活支援センター
2)調査期間 平成28年12月~平成30年3月
3)倫理面への配慮
障害者支援事業所等に対する情報収集のため、特に必要なし。
(2)海外情報収集
米国で開催されたTASH Conferenceに参加し、障害者に対する最新の就労支援およびアセスメントに関する情報収集を行った。
1)開催期間:平成29年12月13日(水)~15日(金)
2)会場:アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ
(3)アセスメントに関する研修の実施
1)対象事業所:東京都立小児総合医療センター
2)開催期間(日程):2017年4月~2018年3月
3)内容:就労支援に関する従来の就労アセスメントの課題と直Bの対象者の多くを占める知的障害者のためのアセスメント
結果と考察
 平成28年度のアンケート調査で支援機関によって差があったのは、地域特性(特に就業・生活支援センターと就労移行支援事業所と間の役割分担)、人的配置・活動内容への制度面からの影響、アセスメントそのものについてへの視点(どのような視点で行えばいいか)が混乱していること等が考えられた。
 就労アセスメントをより意義のあるものとするために、アセスメント結果の共有方法など今後の改善の余地が残されていること、統一された専門的アセスメント技法の研修が必要であることが示された。
 平成29年度の事業所ヒアリングでは、就労アセスメントに関して、近年増加している発達障害者、中でも自閉スペクトラム症に特化したアセスメントを活用している事業所が数多くみられた。 
 海外情報においては、TASHconferenceにて、アセスメント実施者には障害のある求職者がどのような仕事ができるかだけでなく、障害のある求職者ができる仕事を探す、なければ作り出すといった新しい専門家としての役割が重要であることが示され、わが国においても就労アセスメント実施者に対する専門性の研修が必要だと指摘された。

結論
 就労を目指すには、就労移行支援事業所や就業・生活支援センター内でのアセスメントだけでは十分ではなく、実際の企業における実習においてアセスメントが実施されることが重要であることがわかった。
 それは、対象とする障害者が身体から知的、そして精神障害(発達障害を含む)へと障害種が変化しているため、就労上の課題としての、仕事に対するモチベーション、耐性、コミュニケーション、対人関係、仕事に影響を与えるような家庭生活などを含んだ広範囲のアセスメントが重要となっているからである。 
 支援機関内のアセスメントでは、実際に職業経験がないため、どのような職種を希望しているか自分でも認識できていない。就労に関する職種のニーズがまだ未確定であれば、職場見学などを通して仕事を知ることから支援が始まる。そして、実際の職場でどのような体験することにより、どのような合理的配慮が必要かなどを確認できるようなアセスメントを実施する必要がある。
 支援機関では、できるだけ実習可能な企業との連携を深め、また様々な職種での実習が実施できるような体制を構築し、現場実習によるソフトスキルのアセスメントを導入することにより、適切な職場配置、その後の職場定着へとつながっていくものと考える。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201717011B
報告書区分
総合
研究課題名
就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラム構築のための調査研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
梅永 雄二(学校法人早稲田大学 教育・総合科学学術院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特別支援学校卒業生等が就労継続支援B型の利用を希望する場合、就労移行支援事業所(地域に就労移行支援事業所がない場合には就業・生活支援センター)アセスメントを実施することとなっている。
 しかしながら、全国に約3,000か所以上も設置されている就労移行支援事業および332箇所設置されている就業・生活支援センターにおいては、アセスメントの期間や内容が統一されているわけではない。
 よって、本研究では平成28年度の全国の就労移行支援事業所および就業・生活支援センターに実施したアンケート調査をもとに、平成29年度には実際に地域の障害者就労移行支援事業所および障害者就業・生活支援センタ―等を実際に訪問し、就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラム構築のための情報収集ヒアリングを実施した。
 また、わが国では就労アセスメントの情報が少ないため、米国で開催されているTASH Conferenceに参加し、最新の就労アセスメントの情報収集を行い、その結果をもとに東京都立小児総合医療センターにおいて、就労アセスメントに関する研修を行い、今後の就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラムに関してまとめることを目的とした。
研究方法
(1)就労移行支援事業所等へのヒアリング
1)対象:アンケート調査の結果から、先駆的な就労支援を実施していると考えられた就労移行支援事業所および就業・生活支援センター
2)調査期間 平成28年12月~平成30年3月
3)倫理面への配慮
障害者支援事業所等に対する情報収集のため、特に必要なし。
(2)海外情報収集
米国で開催されたTASH Conferenceに参加し、障害者に対する最新の就労支援およびアセスメントに関する情報収集を行った。
1)開催期間:平成29年12月13日(水)~15日(金)
2)会場:アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ
(3)研修の実施
1)対象事業所:東京都立小児総合医療センター
2)開催期間(日程):2017年4月~2018年3月
3)内容:就労支援に関する従来の就労アセスメントの課題と直Bの対象者の多くを占める知的障害者のためのアセスメント
結果と考察
 就労アセスメント実施者に対する効果的な研修カリキュラムについては、特別支援学校等から就労継続支援事業所B型への移行のためのアセスメント、いわゆる直Bアセスメントでは、内容というよりは形だけで実施している機関が多く、あまり意味をなしていないことがわかった。
 よって、直Bに絞ることなく、移行支援事業所や就労をめざしたアセスメントといった形で実施されることが望ましい。
 また、ヒアリング、米国の実情、および研修を行った際のアンケートでは、就労アセスメントの重要性があるものの福祉機関から就労支援機関となった事業所が多く、支援員に就労アセスメント力が身に着いていない現状であった。
 よって、次に示す①障害特性の理解と就労上の課題、②障害特性に応じたアセスメントの違い、③ハードスキルとソフトスキル、④ソフトスキルのアセスメントとは、⑤支援機関内における利用者情報把握(ニーズアセスメントを含む)、⑥実際の企業実習におけるアセスメント(数か所)、⑦就職後の定着支援のためのアセスメントといった流れを考えたアセスメントを実施することが望ましいことを説明し、そのためには実際の企業での実習体験によるアセスメントを導入することが必要であると考える。
 具体的なアセスメントツールとしては、上記のことが含まれるアセスメントしてTTAPおよび米国で開発されているアセスメントチェックシートなどが有効であり、それらの研修を実施する重要性があることがわかった。
結論
 就労移行支援機関内のアセスメントでは、どのような職種を希望しているかなどのニーズアセスメントが十分ではない。ニーズがまだ未確定であれば、職場見学などを通して仕事を知ることから支援が始まる。
 そのためには、実際の職場体験を行う中でアセスメントを実施する必要性がある。とりわけ、近年増加してきている発達障害者は環境の影響を受けやすいため、物理的環境や人的環境といった外部の環境との相互作用でアセスメントを実施しないと仕事に対するモチベーションなどが把握できない。

 支援機関では、できるだけ実習可能な企業との連携を深め、また様々な職種での実習が実施できるような体制を構築し、現場実習によるソフトスキルのアセスメントを導入することにより、適切な職場配置、その後の職場定着へとつながっていくものと考える。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201717011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
就労移行支援事業所の多くは福祉施設が運営しているところが多く、そのため就労アセスメントについては十分な知識が身についていないだけではなく、アセスメントに対する嫌悪感を持っている職員も多い。よって、就労アセスメントに関する専門的研修の必要性が示された。
臨床的観点からの成果
 職業リハビリテーションの対象者が多様化し、とりわけ近年は発達障害者の増加が著しい。しかしながら、発達障害者に特化した就労アセスメントというものはわが国には存在せず、就労アセスメント実施者は従来の伝統的職業アセスメントを実施していることが多い。よって、発達障害者に特化した就労アセスメントの必要性をアンケート及びヒアリングで把握できたことは、今後の就労アセスメントの研修に大いに有効であった。
ガイドライン等の開発
米国で開発された自閉スペクトラム症に特化したTTAPというアセスメントに対するニーズが高く、そのためのTTAP研修を実施することが必要である。ただ、TTAPは知的障害を伴う自閉スペクトラム症の就労移行のためのアセスメントであるため、知的に高いアスペルガー症候群等の就労アセスメントの開発が望まれる。
その他行政的観点からの成果
 まず、就労移行支援事業所職員の就労アセスメントに対する意識が希薄であり、単純作業の行動観察のみで終了していることが多いため、実際の就労先での合理的配慮等をアドバイスすることができない。よって、就労アセスメントがなぜ必要かから、アセスメントによってこのような就労が可能で、定着支援も必要であるといった一連の流れを説明できるような研修会の実施が望まれる。
その他のインパクト
 アセスメントに関する研修会を実施したところ、多くの支援機関でより専門的な就労アセスメントの研修会を実施してほしいとアンケートで把握できた。

発表件数

原著論文(和文)
4件
「発達障害の人が就労することの意義と課題」(精神科治療学)「高校・大学からの就職に備える」(教育と医学)「発達障害者の就労上の課題と支援―ASDを中心に―」(小児の精神と神経)
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
職業リハビリテーション実践発表会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「発達障害の職場の理解と支援ガイド」(地方公務員安全衛生協会)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
2024-03-29

収支報告書

文献番号
201717011Z