文献情報
文献番号
201717010A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的ケア児に関する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携促進に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター総合周産期母子医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 大塚 晃(上智大学総合人間科学部社会福祉学科)
- 谷口 由紀子(淑徳大学看護栄養学部地域看護学領域)
- 前田浩利(医療法人財団はるたか会)
- 岩崎裕治(東京都立東部療育センター小児科)
- 大田えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院看護研究科国際看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成28年6月の児童福祉法改正において、地方自治体は、医療的ケア児の支援のために医療、福祉、保健、教育等の関係機関が連携するための調整を求められるようになった。しかしその方法は不明確である。そのため本研究は、①地域毎の医療的ケア児数と社会資源を把握し、②都道府県における医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書を作成し、③医療的ケア児コーディネータに助言するスーパーバイザーを育成する研修を確立し、④重症心身障害児施設における短期入所を推進することを目的に、平成28年度から継続している。
研究方法
① 医療的ケア児の実数と社会資源の把握
2016年の全国の在宅の医療的ケア児数及び人工呼吸器児数を、昨年度と同じ手法で算出した。レセプト情報第三者提供制度によるデータを解析し、地域別の医療的ケア児数の算出を試みた。また、医療的ケア児を支援する医療機関、福祉施設、学校等の地域資源を把握するための効率的な調査方法を、班会議で議論した。
② 都道府県における医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書
千葉県松戸市と東京都世田谷区において多部署・多機関の連携を図る協議の場を試験的に立ち上げ、そのプロセスを分析した。また、全国の都道府県47ヵ所及び東京都と千葉県の市町村116ヵ所を対象にアンケート調査をし、協議の場の設置状況を調べた。
③ スーパーバイザー等の育成研修
医療的ケア児等コーディネータに助言するアドバイザー及び地域診断して社会資源を創出するコンサルタントを育成する研修プログラムを完成させ、パイロット的に研修を実施して評価した。
④ 医療型障害児入所施設における短期入所の取り組み
重症児・医療的ケア児の家族に対するニーズ調査を行った。また、東京都で重症心身障害児施設の会議体を立ち上げ、医療的ケア児・重症児の短期入所の取り組みを検証した。
2016年の全国の在宅の医療的ケア児数及び人工呼吸器児数を、昨年度と同じ手法で算出した。レセプト情報第三者提供制度によるデータを解析し、地域別の医療的ケア児数の算出を試みた。また、医療的ケア児を支援する医療機関、福祉施設、学校等の地域資源を把握するための効率的な調査方法を、班会議で議論した。
② 都道府県における医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書
千葉県松戸市と東京都世田谷区において多部署・多機関の連携を図る協議の場を試験的に立ち上げ、そのプロセスを分析した。また、全国の都道府県47ヵ所及び東京都と千葉県の市町村116ヵ所を対象にアンケート調査をし、協議の場の設置状況を調べた。
③ スーパーバイザー等の育成研修
医療的ケア児等コーディネータに助言するアドバイザー及び地域診断して社会資源を創出するコンサルタントを育成する研修プログラムを完成させ、パイロット的に研修を実施して評価した。
④ 医療型障害児入所施設における短期入所の取り組み
重症児・医療的ケア児の家族に対するニーズ調査を行った。また、東京都で重症心身障害児施設の会議体を立ち上げ、医療的ケア児・重症児の短期入所の取り組みを検証した。
結果と考察
① 医療的ケア児数と社会資源の把握
2016年の医療的ケア児数は18272人、人工呼吸器児数は3483人と算出された(2015年はそれぞれ17209人、3233人)。これらの数値は過去3年間で直線的に増加していた。レセプト情報第三者提供制度による都道府県別の医療的ケア児数及び人工呼吸器児数を、20歳未満人口1万人あたりで計算すると、前者は4.9~12.4(平均7.8)、後者は0.58~3.97(集計値が10未満の県を除く)(平均1.54)と地域差が大きかった。また、行政が地域資源を効率的に把握できる方法を整理した。市町村別のデータは最小集計単位の原則により公表できないが、その活用方法を検討中。
② 連携の手引書
千葉県松戸市、東京都世田谷区、京都府山城北圏域において、障害福祉担当課、医療機関、医師会、福祉施設などが協議する場を立ち上げた。そのプロセスをまとめ、「医療・福祉等の連携体制のための手引書(案)」を作成した。また、都道府県アンケートでは(44ヵ所、94%から回答)、協議の場を既に設置したのは18カ所(41%)、設置を検討中なのは24カ所(54%)であった。千葉県と東京都の市町村アンケートでは(81ヵ所、70%から回答)、既に設置7ヵ所(9%)、検討中41ヵ所(51%)であった。設置に必要な支援として、手引き、通知、研修があげられた。今後、手引書案を各方面の関係者に諮り、その内容をブラッシュアップさせる予定。
③ スーパーバイザー等の育成研修
研修プログラム検討委員会を3回開催し、コンサルタント、アドバイザー研修のプログラム、地域診断シート及び福祉事業所のアセスメントシートを作成した。コンサルタント研修を34人に、アドバイザー研修を22人に施行し、良好な反応を得た。今後、これらをもとに「福祉機能充実のための手引書」を作成する予定。
④ 医療型障害児入所施設の取り組み
東京都のほとんどの短期入所実施施設では、人工呼吸器児の受け入れが可能であった。ベッドの短期入所事業活用率は3.1~49.3%と差があった。利用家族のニーズ調査では急な受け入れのニーズが高かったが、多くの施設では急な受け入れは難しかった。
2016年の医療的ケア児数は18272人、人工呼吸器児数は3483人と算出された(2015年はそれぞれ17209人、3233人)。これらの数値は過去3年間で直線的に増加していた。レセプト情報第三者提供制度による都道府県別の医療的ケア児数及び人工呼吸器児数を、20歳未満人口1万人あたりで計算すると、前者は4.9~12.4(平均7.8)、後者は0.58~3.97(集計値が10未満の県を除く)(平均1.54)と地域差が大きかった。また、行政が地域資源を効率的に把握できる方法を整理した。市町村別のデータは最小集計単位の原則により公表できないが、その活用方法を検討中。
② 連携の手引書
千葉県松戸市、東京都世田谷区、京都府山城北圏域において、障害福祉担当課、医療機関、医師会、福祉施設などが協議する場を立ち上げた。そのプロセスをまとめ、「医療・福祉等の連携体制のための手引書(案)」を作成した。また、都道府県アンケートでは(44ヵ所、94%から回答)、協議の場を既に設置したのは18カ所(41%)、設置を検討中なのは24カ所(54%)であった。千葉県と東京都の市町村アンケートでは(81ヵ所、70%から回答)、既に設置7ヵ所(9%)、検討中41ヵ所(51%)であった。設置に必要な支援として、手引き、通知、研修があげられた。今後、手引書案を各方面の関係者に諮り、その内容をブラッシュアップさせる予定。
③ スーパーバイザー等の育成研修
研修プログラム検討委員会を3回開催し、コンサルタント、アドバイザー研修のプログラム、地域診断シート及び福祉事業所のアセスメントシートを作成した。コンサルタント研修を34人に、アドバイザー研修を22人に施行し、良好な反応を得た。今後、これらをもとに「福祉機能充実のための手引書」を作成する予定。
④ 医療型障害児入所施設の取り組み
東京都のほとんどの短期入所実施施設では、人工呼吸器児の受け入れが可能であった。ベッドの短期入所事業活用率は3.1~49.3%と差があった。利用家族のニーズ調査では急な受け入れのニーズが高かったが、多くの施設では急な受け入れは難しかった。
結論
医療的ケア児を地域で支援するためには、まず地方自治体が地域別の医療的ケア児数をもとに医療機関を通じて患者アンケートを行い、医療的ケア児の住所地と病像やニーズを把握するとともに、効率的な調査方法で地域資源を把握することが望ましい。そして関係機関が連携する協議の場を都道府県及び市町村ごとに設置し、調査したデータをもとに、地域の課題を抽出して解決のための協議を行う必要がある。その際、医療的ケア児コーディネータのアドバイザー、コンサルタントを育成し、地域の福祉機能を充実させる取り組みが効果的である。また、ニーズが高い短期入所は重症心身障害児施設で積極的に受け入れることが求められる。
公開日・更新日
公開日
2018-11-21
更新日
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