障害者福祉施設およびグループホーム利用者の実態把握、利用のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201717009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者福祉施設およびグループホーム利用者の実態把握、利用のあり方に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 浩(独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 )
研究分担者(所属機関)
  • 口分田 政夫(びわこ学園医療福祉センター草津)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 谷口 泰司(関西福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の居住支援の現状と、今後必要とされる支援について、明らかにすることを目的とした。具体的には、実際にサービスを受けている人の状態像を把握し、地域で暮らしが可能な障害者の生活を支えるために、個々の意思を受け止めニーズを理解し、障害福祉サービスとそこに求められる機能を考察し、今後の障害福祉サービスに求められる機能を明らかにすることを目的に調査研究を行った。
研究方法
平成30年から新たな事業となる「自立生活援助事業」に関係すると思われる点の実態調査を中心に、平成29年度は以下の4つを実施した。
①重度障害者が入居するグループホームのサービス提供の実態調査
②スプリンクラー設置(予定含む)状況調査(四次調査)
③単身生活している障害者の実態ならびに支援のニーズに関する調査
④グループホームにおける利用者の退所の実態に関する調査
結果と考察
各々の結果として、①については、支援の提供時間では、全事業所で1日あたり80分を超える支援を提供。休日・平日とも1日あたり200分前後、少なくとも3人以上のスタッフにより支援していた。重度障害者を支援する事業所においては、少なくとも2~3名の支援スタッフが必要であった。②については、経過措置が終了する半年前時点で、スプリンクラー設置が行われていないのは、回答ホーム数の19.8%(423棟)、そのうちの2/3は設置予定(284棟)だが、残りの1/3は設置不要の理由ありが125棟、方針未定は14棟(10事業所)であり、その理由は費用負担できない等の経済理由8棟、方針が決まらない5棟、設置基準緩和申請中が1棟という状況であった。③については、対象者全員が、現在の住まい、日中の仕事いずれも安定しており、全員がいまの生活をつづけることを希望していた。日中安定して就労ができ、社会での適応力がある人は、GH等の集団生活にも適応して継続ができていることが推察された。④については、平成28年4月から平成29年3月までの1年間に退所された人は3,782人(グループホーム利用者の6.5%)で、グループホーム退所の理由として、死亡による退所者は295人(7.8%)、転居等による退所者は3,487人(92.2%)であった。死亡による退所者の平均年齢は58.6歳(中央値61.0)と高齢者であることが窺える。年齢の分布をみてみると、40歳代が772人(20.4%)と最も多く、次いで20歳代が669人(17.7%)、50歳代が661人(17.5%)、介護保険の対象となる65歳以上は631人(16.7%)と2割弱であった。また、障害支援区分を見てみると、区分2が823人(21.8%)と最も多く、次いで区分3が801人(21.2%)、区分なしが799人(21.12%)であった。年齢と障害支援区分をクロス集計してみると、20歳代で区分2が183人(4.8%)と最も多く、次いで40歳代で区分3が181人(4.8%)、40歳代で区分なしが178人(4.7%)であった。グループホーム退所者を転居後の居住先に着目して類型化すると、(1)ステップアップ型、(2)身体・医療的ケア型、(3)集団生活不適応型、(4)自宅可逆型が挙げられ、これに死亡退所を加え5類型に分けることができると考えられた。また、転居後の居住先の割合としては、全体では自宅同居、自宅単身、他グループホーム、入所施設、病院等への移行が、ほぼ同率で多くなっていた。
結論
①については、個々の利用者の特性に応じ適切な職種により支援が行われるならば、障害の程度や年齢に関わらずGHを住まいの場とした日中生活及び社会生活は可能である。特に、医療的ケアの機能を備えたGHの展開は、高齢化・重度化への備えとしてより積極的な役割を果たすべきである。 ②については、平成30年3月までの経過措置終了時点に、スプリンクラーの設置の見込みが無いグループホームは非常に少数であることが明らかになった。 ③については、自立度が高いと思われる軽度の知的障害者や精神障害者であっても、単身者、グループホーム入居者ともにいまの生活、将来の生活に不安を抱えており、地域の相談支援事業所や就労先、日中支援事業所、グループホームなど、地域で連携して支援をする体制の構築が重要である。④については、グループホーム利用者には、継続利用が望まれるにもかかわらず、支援が伴わずにグループホームを退所してしまう退所者等が一定数存在することが推測され、多様なニーズに応えられるグループホームの整備を進めていくとともに、退所理由に応じて自立生活援助事業所等との連携した支援を続けることができる環境の整備が、今後のグループホームに求められる機能の重要な課題といえるだろう。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201717009B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者福祉施設およびグループホーム利用者の実態把握、利用のあり方に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 浩(独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 )
研究分担者(所属機関)
  • 口分田 政夫(びわこ学園医療福祉センター草津)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 谷口 泰司(関西福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者福祉施設及びグループホーム利用者で、地域での生活を希望し、それが可能な障害者の状態像を明らかにすると同時に、新たに障害福祉サービスが必要になると想定される対象者像も明らかにし、長期的なケアマネジメントの視点から、必要とされる障害福祉サービスと各障害福祉サービスに求められる機能を明確にし、その結果より、障害者総合支援法附則第3条の見直しにおける「新たな地域生活の展開」へ向けての提言を行うことを目的とした。 1年目となる平成28年度には、障害種別や障害福祉サービス体系別に限定した調査とせず、広範囲な実態調査を行った。平成29年度(2年次目)には、実際にサービスを受けている人の状態像を把握し、地域での暮らしが可能な障害者の生活を支えるために、個々の意思を受け止めニーズを理解する調査を行った。
研究方法
具体的な内容として、①障害者福祉施設利用者やグループホーム利用者が希望する生活の場について、②重度障害者でグループホームを利用している人の状態像について、③一人暮らしを支える新たなサービスの利用対象者の状態像について、④重度障害者等包括支援の対象者像の見直し方策について、⑤障害支援区分4以上の方が8割を超えるグループホームのスプリンクラーの設置状況ならびに設置計画について、⑥グループホームを利用している障害者支援区分5、6の重度障害者を対象に、必要とするサービス量及びニーズについて、⑦平成30年3月末で猶予期間が切れるグループホームにおけるスプリンクラー設置状況(半年前の見込み)について、⑧グループホーム利用者ならびに単身生活者の生活状況や状態像等について、⑨グループホーム退所者を対象に、退所動機、退所理由、退所後の住居等、退所者の実態像について、の9つの調査・研究を行った。
結果と考察
各々の結果として、①については、障害者支援施設に新規に入所する障害者は、45歳以上65歳未満が多く、グループホームから心身機能の低下が顕著、高齢化等により同居家族の介護・支援が受けられなくなる、加齢による病気・疾病における入院後の受け皿として、障害者支援施設が機能していることがうかがわれた。②については、相談支援事業所等が相談を受けた単身生活者の傾向として、障害支援区分は、「不明・非該当」「区分1・2」で7割を占めており、比較的障害の軽い者が多いことが明らかとなった。③については、Ⅰ類型については事業開始当初を除き利用実績はなく、継続的に利用実績があったのはⅡ類型とⅢ類型であったが、一方で、度重なる制度改正に取り残される、煩雑な事務負担が大きいといった事業所の運営上の課題が明確になった。④については、スプリンクラーの設置義務があるものの設置していないグループホーム事業所のうち、明確な方針が定まっていない事業所が17カ所確認され、早急に今後の方針について検討することの必要性が確認された。⑤については、就労移行支援事業所を対象としたパイロット調査を行い、訓練等給付受給者の障害支援区分が明記されていない(非該当・不明・区分なしと記されている)場合、一次判定を実施するとほとんどが区分1~3の結果が出ると推測された。⑥については、支援の提供時間では、全事業所で1日あたり80分を超える支援を提供しており、重度障害者を支援する事業所においては、少なくとも2-3名の支援スタッフが必要と考えられた。⑦については、経過措置が終了する半年前時点で、スプリンクラー設置が行われていないのは、423棟であった。⑧については、対象者全員がいまの生活をつづけることを希望しており、日中安定して就労ができ、社会での適応力がある人は、GH等の集団生活にも適応して継続ができていると推察された。⑨については、グループホーム退所者を類型化すると、(1)ステップアップ型、(2)身体・医療的ケア型、(3)集団生活不適応型、(4)自宅可逆型が挙げられ、これに死亡退所を加え5類型に分けることができる。また、転居者の居住先は、全体では自宅同居、自宅単身、他グループホーム、入所施設、病院等への移行が、ほぼ同率で多くなっているが、類型別に見てみると、類型毎に特化した退所先があると推測された。

結論
障害者支援施設はこれまで以上のペースで定員数の減少が予想され、特定の分野の専門性の高い組織が、地域のネットワークを活用しながら重度障害者に特化したグループホーム運営をはじめている。一方、団塊ジュニアの50・80問題を間近に控え、グループホーム整備のニーズは急激に高まり、そして多様なニーズに応えていく必要が出てくる。人生80年を想定した障害者の様々な住まいの在り方をプランニングする支援体制が必要になってくる。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201717009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果は、まず、高齢・重度化の障害者支援施設では、高齢・重度の障害者に、安全で健康な老後を提供するか機能が求められる。GHの重度障害者対応では、地域に日中活動、医療、移動等の特定の対象者に特化した専門的なチームが必須であり、核となる専門的ノウハウのある組織を中心に連携を推進することが不可欠。多様なニーズに応えるGHでは、入居者は団塊ジュニア世代が多いと推測され、5年後の平成35年には50歳に到達し、GH整備のニーズは急激に高まり、そして多様なニーズに応えていく必要が出てくる。
臨床的観点からの成果
全国の障害者支援施設1,807(障害児施設含む)の回答から、施設の平均年齢が50歳を超えているのは過半数(55%)、標準的な障害支援区分は平均5.5であり、一方、全国の共同生活援助事業所3,509の利用者58,299人のうち、GHの平均年齢が50歳を超えているのは4割強(44.6%)、障害支援区分4~6が39.0%と、かなりの割合を占めており、多くの障害者支援施設及びGHで高齢化・重度化が顕著になっている。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発は本研究では特になされていない。
その他行政的観点からの成果
各調査で得られた結果は、平成30年度厚生労働科学研究費補助金研究「総合支援法の見直しに向けたサービスの実態の把握及びその効果の検証のための研究」に引き継がれる予定である。平成30年度から実施される新サービスである自立生活援助、就労定着支援や対象拡大される重度訪問介護、見直しが検討されている重度障害者等包括支援、重度対応型グループホームについて、その効果や課題について次期報酬改定も踏まえて行う検証の基礎資料として貢献を果たすことが期待される。
その他のインパクト
研究成果のうち、平成28年度に実施した「障害者支援区分における区分『なし』の者に対する一次判定調査結果」、「重度障害者等包括支援事業のサービス利用の実態と運営上の課題」の2つの報告の調査結果が、障害福祉サービス等報酬改定検討チームの第8回、第11回の資料として活用された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
厚生の指標vol.66 No.9
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
9件
国立のぞみの園紀要第10号(5件)、国立のぞみの園紀要第11号(4件)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
日本社会福祉学会第66回秋季大会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201717009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,250,000円
(2)補助金確定額
4,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 16,638円
人件費・謝金 1,522,672円
旅費 656,984円
その他 1,531,977円
間接経費 0円
合計 3,728,271円

備考

備考
1.物品費/申請時の記載において、会議費、印刷費、通信費等の記載を、(4)その他ではなく(1)物品費に2,100,000円を記載してしまった。実際の経費は消耗品費で16,638円であった。
2.人件費・謝金/人件費は、悉皆調査や二次調査の影響等で分析サンプル数が増え、集計担当の人件費の分増加が生じた等の理由により超過となった。また謝金は、2回開催された検討委員会において欠席者が生じた等の理由により執行残となった。
3.旅費/2回開催された検討委員会において欠席者が生じた等の理由により執行残となった。
4.その他/申請時の記載において、会議費、印刷費、通信費等の記載を、(4)その他ではなく(1)物品費に2,100,000円を記載してしまった。アンケート調査の対象が、精査の結果減少した理由により通信費及び印刷費が当初予定より少なくなり、物品費の記載金額から商法品費を引いた金額に対して執行残となった。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-