相談支援従事者研修のプログラム開発と評価に関する研究

文献情報

文献番号
201717008A
報告書区分
総括
研究課題名
相談支援従事者研修のプログラム開発と評価に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 温(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 島村 聡(沖縄大学 人文学部)
  • 沖倉 智美(大正大学 人間学部)
  • 高野 龍昭(東洋大学 ライフデザイン学部)
  • 森地 徹(筑波大学 人間系)
  • 大村 美保(筑波大学 人間系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、社会保障審議会・障害者部会の報告書(2015年)の相談支援の見直しに関する指摘をもとに次の4点の研究目的を設定した。①相談支援専門員研修のカリキュラム、プログラム、教材と教育方法の分析と開発、②主任相談支援専門員に求められているコンピテンシー(専門的能力)の解明、③相談支援専門員と介護支援専門員の視点をふまえた研修のあり方の分析、④、①~③で明らかにされた内容を含んだ研修のモデル実施と全国的な研修への普遍化の検討。28年度は、主に、①、③の目的のもとに研究を行い、29年度は②、④の目的のもとに研究を行った。
研究方法
29年度は、28年度に得られた知見をもとに、次の4点の研究を推進した。1)収集した教材・資料の整理から主任相談支援専門員のコンピテンシーの構成要素の解明、2)相談支援専門員向けの教材・教育方法についての検討、3)モデル研修では、経験のある相談支援専門員にモデル研修への参加を依頼し、各研修20名程度に対して検討したプログラム案による研修の実施、4)教材・教育方法の妥当性、研修の効果を面接調査・質問紙調査による解明。
結果と考察
(1)主任相談支援専門員のコンピテンシーの構成要素:これまでの文献・資料の整理から、相談支援専門員に対してのスーパービジョン、チームアプローチの際のコーディネーター役割、都道府県における相談支援従事者研修(初任研修、現任研修)の指導スキルに整理することができた。
(2)相談支援専門員向けの研修カリキュラム案と教材の開発:初任研修における科目と教材は以下の通りである。事前学習課題(障害特性など)、研修受講ガイダンス説明用資料、相談支援概論、障害者総合支援法、児童福祉法の理念、サービス、障害者総合支援法、児童福祉法の相談支援の基本、相談支援におけるケアマネジメント技法、相談支援における地域への視点、演習で用いたモデル事例。
現任研修における科目と教材は以下の通りである。障害者(児)福祉に関わる制度解説、地域を基盤としてのソーシャルワーク、個別相談支援(意思決定支援を含む)、チームアプローチ、スーパービジョン、個別相談支援演習、チームアプローチ演習、コミュニティワーク演習、演習で用いたモデル事例。
(3)モデル初任研修の効果と内容に関する評価:埼玉県、神奈川県の経験のある相談支援専門員18名に対して、講義部分を除いた演習部分に対して、4回にわたって、モデル研修を実施した。毎回、演習内容の理解度に関わる事前評価と事後評価及び内容及び資料等についての評価を4件法で行った。演習終了後は、モデル研修参加者に対して、その回の演習内容にそって、評価すべき点、改善すべき点についてグループインタビューを実施し、モデル研修の内容を検討した。モデル研修参加者の初期の理解水準の高さにより研修効果をあまり高くしていないことが示唆された。研修内容に関しては次の点が面接調査から示された。①相談支援の基盤としてのソーシャルワークの位置づけを明示する必要があること、②ストレングス視点に加えて相談支援専門員としての見立てについて講義に盛り込むこと、③意思決定支援や地域支援に関する初任者研修から現任者研修に至る連続性や対応関係についての意識の必要性。
(4)モデル現任研修の効果と内容に関する評価:埼玉県、神奈川県の経験のある相談支援専門員18名に対して、作成したカリキュラムにそって講義部分と演習部分に対して、4回にわたりモデル研修を実施し、モデル初任研修と同様に評価とグループインタビューを実施した。モデル初任研修と同様に参加者の初期の理解水準の高さにより研修効果をあまり高くしていないことが示唆された。研修内容に関しては次の点が面接調査から示された。①初任者研修との連動についての必要性、②個別相談支援の用語・概念の整理の必要性、③コミュニティワークの内容の整理の必要性、④グループスーパービジョンの内容の整理の必要性、⑤演習方法の検討、⑥インターバル期間の課題。
結論
主任相談支援専門員のコンピテンシーの構成要素を整理し、モデル初任研修、モデル現任研修のカリキュラム案にそって、各科目の教材と教育方法を検討した。モデル初任研修に関しては、相談支援専門員18名に対して講義部分を除いた演習部分を4回にわたって実施した。モデル現任研修に関しては、同様に、相談支援専門員18名に対して講義部分と演習部分を4回にわたって実施した。いずれのモデル研修参加者の初期の理解水準の高さもあり、研修の教育効果に関してはさらなる検討が必要である。研修内容に関してはモデル研修参加者から概ね高い評価を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201717008B
報告書区分
総合
研究課題名
相談支援従事者研修のプログラム開発と評価に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 温(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 島村 聡(沖縄大学 人文学部)
  • 沖倉 智美(大正大学 人間学部)
  • 高野 龍昭(東洋大学 ライフデザイン学部)
  • 森地 徹(筑波大学 人間系)
  • 大村 美保(筑波大学 人間系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、①相談支援専門員研修のカリキュラム、シラバス、プログラム、教材と教育方法の分析と開発、②主任相談支援専門員に求められているコンピテンシー(専門的能力)とスーパーバイズの実践の解明、③相談支援専門員と介護支援専門員、両者の視点をふまえた研修のあり方の分析、④、①で明らかにされた内容を含んだ研修のモデル実施と全国的な研修への普遍化の検討、の4点を目的とした。
研究方法
28年度の研究は次の3点の研究を推進した。1)相談支援専門員の研修教材・資料の収集と分析、2)都道府県で実施されている初任研修・現任研修のカリキュラム・プログラムの収集と分析、カリキュラム案の作成および研修担当者・関係者への調査分析、3)収集した教材・資料分析から主任相談支援専門員のコンピテンシーの構成要素の解明。29年度は、次の4点の研究を推進した。1)収集した教材・資料の整理から主任相談支援専門員のコンピテンシーの構成要素の解明、2)相談支援専門員向けの教材・教育方法についての検討、3)モデル研修では相談支援専門員に参加依頼し各研修18名に対してプログラム案による研修実施、4)教材・教育方法および研修効果の面接調査・質問紙調査による解明
結果と考察
1)先行研究を検討した結果、初任者研修と現任研修では受講者に求められる対応が異なっており、初任者研修では相談支援事業における基本的な対応が、現任研修ではより専門性の高い対応が求められており、そのために必要となる研修内容が示されていた。
2)カリキュラムの改定案は、この研修の目的として、相談支援をソーシャルワークとして位置づけたことの理解を深めることにある。その目的に応じて、①地域を基盤としたソーシャルワーカーとしての確認(相談支援)、②個を地域で支える援助を実施する地域と技術の獲得(チームアプローチ)、③個を支える地域を作る知識と技術の獲得(コミュニティワーク)といった相談支援技術の確認と技術の獲得といった目標を設定した。研修の合間にインターバルを設け、実地研修(OJT)を盛り込みこむことでグループスーパービジョンの体制をも視野に入れた研修体系とした。意見交換会と質問紙調査の結果から、カリキュラム内容に関しては概ね評価する意見が多くみられた
3)主任相談支援専門員のコンピテンシーでは、相談支援専門員の熟達化過程から、現任研修で育成する相談支援よりさらに経験を積んだ、地域の相談支援体制の中核となる主任相談支援専門員の研修要素を検討した。
4)相談支援専門員向けのカリキュラムと教材の開発では、29年度はカリキュラムをさらに詳細に検討し研修シラバスの作成を行った。シラバスを作成するにあたり、28年度は概略的に示した研修実施上の留意点をさらに詳細に明示した。29年度のシラバス検討のポイントとした点と同時に特に留意が必要なのは、本カリキュラムを効果的に実施するためには、研修全体をデザインするチームが必要な点である。
5)モデル研修の効果と内容に関する評価では、初任研修参加者の事前、事後評価の結果から、研修内容に関しては次の点が示された。①相談支援の基盤としてのソーシャルワークの位置づけを明示、②ストレングス視点に加えて相談支援専門員としての見立ての必要性、③意思決定支援や地域支援に関する初任者研修から現任者研修に至る連続性や対応関係の明示
現任研修参加者の事前、事後評価の結果から、研修内容に関しては次の点が示された。①初任者研修との連動についての必要性、②個別相談支援の用語・概念の整理、③コミュニティワークの内容の整理、④グループスーパービジョンの内容の整理、⑤演習方法の検討、⑥インターバル期間の課題
結論
2年間にわたる研究から以下の知見を得た。1)相談支援専門員には、アセスメントおよびプラン作成能力に加えて、他職種との連携・調整する力、チームアプローチのためのネットワーク形成力、利用者の主体性を引き出す力が必要なことが示された。2)カリキュラム内容に関しては評価する意見が多かったが、実際の研修の運営、指導者の確保等の課題が指摘された。3)相談支援の専門性的な能力は、個別ケースに対応する相談支援スキル(主に、初任研修レベル)、地域デザインにおける相談支援スキル(主に、現任研修レベル)、地域の人材育成における相談支援スキル(主に、主任相談支援専門員レベル)の3点から整理することができた。4)主任相談支援専門員のコンピテンシーの構成要素を整理した。5)モデル研修に関しては、相談支援専門員18名に対して講義部分と演習部分を初任、現任各4回にわたって実施した。いずれも参加者の初期の理解水準の高さもあり、研修の教育効果に関してはさらなる検討が必要である。研修内容に関してはモデル研修参加者から概ね高い評価を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201717008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで相談支援専門員に対してどのような専門性が必要なのか、その専門性を習得するためにはどのような研修カリキュラムが必要なのかについて、学術的に明らかにされてこなかった。本研究は、初任研修、現任研修で習得すべき専門性の検討と主任相談支援専門員に求められている専門的能力(コンピテンシー)を整理し、それをもとにモデル研修を実施した点で学術的に意義のあるものと考える。
臨床的観点からの成果
本研究はこれまで未解明であった障害者ケアマネジメントの専門職である相談支援専門員の研修について、相談支援専門員研修のカリキュラムの分析、主任相談支援専門員に求められているコンピテンシー(専門的能力)の解明、相談支援専門員と介護支援専門員の視点をふまえた研修のあり方の分析を行い、相談支援専門員に求められているケアマネジメント能力を明らかにし、その能力の習得にふさわしいカリキュラムを開発した点で臨床的に意義深いと考える。
ガイドライン等の開発
初任研修、現任研修で習得すべき専門性の検討と主任相談支援専門員に求められている専門的能力(コンピテンシー)を整理することにより、すでに都道府県で取り組まれている法定研修における人材育成目標を明確にすることができた。これらの成果をもとに、研修用の教材を開発し、31年度からの初任・現任研修の標準的なテキストの開発に向けての基礎的な作業を行った。
その他行政的観点からの成果
本研究は、社会保障審議会・障害者部会の障害者総合支援法改正の議論にともなう相談支援の見直し事項(計画相談支援の質の向上に向けての研修制度の見直し、指導的な役割を担う主任相談支援専門員の制度化など)をふまえた研究課題である。この研究によって得られた知見は今後の相談支援従事者に関わる法定研修の内容に大きな影響を与えることが予想され行政的に意義のあるものと考える。
その他のインパクト
本研究の成果は、日本相談支援専門員協会、日本知的障害者福祉協会などの相談支援に関わる関係団体主催の研修において研究代表者、分担研究者、共同研究者により積極的に報告がなされており、31年度からの新しい研修の取り組みに関しての理解を広めてきた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
小澤温「計画相談の質を考える」、発達教育、36巻7号、p.1、2017年.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
大村美保・森地徹・小澤温「相談支援従事者研修のプログラム開発と評価に関する研究」日本発達障害学会第52回大会、2017その後、2018年、2019年に、各1回発表。
学会発表(国際学会等)
2件
Pacific Rim International Conference, 2017The world congress of IASSIDD(国際知的・発達障害学会), 2019
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
2020年度から実査された相談支援従事者養成研修の教材開発の原案となった。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
障害者相談支援従事者研修テキスト(初任者研修編)、相談支援従事者研修テキスト(現任研修編)、相談支援従事者研修テキスト(主任研修編)の3点を監修し、中央法規出版等から発行した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小澤温、菊本圭一、角田純一郎 他
相談支援の地域における人材育成の取り組みを考えるー相談支援専門員研修の新たなねらいと展望
発達障害研究 , 43 (1) , 68-71  (2021)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
2023-05-30

収支報告書

文献番号
201717008Z