障害福祉サービスにおける質の確保とキャリア形成に関する研究

文献情報

文献番号
201717003A
報告書区分
総括
研究課題名
障害福祉サービスにおける質の確保とキャリア形成に関する研究
課題番号
H27-身体・知的-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
高木 憲司(和洋女子大学 生活科学系 家政福祉学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 本名 靖(東洋大学 ライフデザイン学部 生活支援学科)
  • 松長麻美(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 社会復帰研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,803,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サービス管理責任者等研修は、サービス管理従事者のキャリア形成が考慮されておらず、本来、サービス提供事業者の質の向上を目指すべきサービス管理責任者等の取得が1回だけの受講要件に留まっていること自体がサービスの質の向上に寄与していないとの批判がある。そこで、本研究は、サービス提供従事者の質の確保を図る観点から、(1)サービス提供従事者のキャリア形成に資する研修体系を構築するとともに、サービスの質の担保にサービス管理責任者等が重要な役割を担うことから、キャリア形成の目標としてサービス管理責任者等を想定し、(2)その研修プログラムを各段階に応じて開発し、(3)モデル研修を通じて検証し研修内容を提案することを目的とする。本年度の研究においては、更新研修のプログラムについてモデル研修を通じて開発する。
研究方法
1.更新研修テキスト作成
 更新研修テキストについては、障害者施策の最新の動向、スーパーバイズ、業務の自己検証、他の事業所の取組み等からヒントを得る内容とするための文献調査を行ったうえテキストを作成する。
2.モデル研修の実施及び受講者へのアンケート調査等
 モデル研修を、東日本(千葉県)・西日本(滋賀県)において実施する。モデル研修実施前後に、試験を実施し、受講者の知識度を確認するとともに、習得度、難易度、時間妥当性等に関するアンケートを実施する。
3.スーパービジョンに関する研修効果の調査
モデル研修参加者に研修後に質問紙調査とヒアリング調査を実施する。
4.精神障害分野別研修カリキュラムの作成
平成27年度に実施した、分野別研修講師を対象とした質問紙調査及び平成28年度に実施した、サービス管理責任者へのインタビュー調査の結果より、カリキュラム案の作成を行う。
結果と考察
「サービス管理責任者等更新研修」のモデル研修について、サービス管理責任者等実務経験者を中心とし、東日本(千葉県)・西日本(滋賀県)において実施した(分担研究1)。これらの研修プログラム及び研修内容の有効性を①研修の事前・事後調査(研修目標の達成度、研修内容の伝達性等を評価)、②講師・ファシリテーターによる振り返りにより検証した。
また、分担研究2において、モデル研修のなかで「サービス提供職員等へのスーパービジョンの講義・演習」を実施、事後課題の分析等を行った結果、スーパーバイズに係る研修が受講者にとって必須であることを明らかにした。
さらに、分担研究3において、過去2年の調査結果を踏まえ、精神障害分野の分野別研修カリキュラム案を作成した。その結果、分野別研修としては到達目標を明示し、経験年数等に関わらず各自のレベルに照らして受講することが適切であると考えられた。
結論
テキストについて、障害福祉施策の最新の動向、サービス管理責任者等としての自己検証、事例検討のスーパービジョン、スーパービジョンの講義・演習を柱として組み立て、モデル研修結果を踏まえ、修正した。モデル研修受講者からのアンケートにより研修内容を検証した。モデル研修の内容は概ね良好であり、理解度、満足度ともに高かった。
更新研修自体は行うべきとの意見が大勢であった。現に実務に就いている者との要件については緩和すべきとの意見もあった。分野については、多分野が一堂に会して行う意義があるという意見の一方で、同一分野の班で内容を深めたかったとの意見もあった。今後、専門コース別研修の充実が求められる。同一分野の小規模な学習の機会については、市町村レベルでの人材育成も、自立支援協議会の機能を発揮し、行っていくべきである。
モデル研修において、「サービス提供職員等へのスーパービジョンの講義・演習」を実施した結果、サービス管理責任者等には必須の研修であること明らかとなった。(厚生労働省の方針により)更新研修が1日で実施されることになったが、モデル研修では2日間で実施した。従って、スーパービジョン研修の時間をある程度確保できたが、実際に1日研修となれば、十分な時間を確保することは難しいと考えられる。しかし、サービス管理責任者等には必要な知識・技術であることから、実践研修内容を精査し、スーパービジョン研修を実施することが適切ではないかと考えられる。
また、過去2年の調査結果を踏まえ、精神障害分野の分野別研修カリキュラム案を作成した。その結果、分野別研修としては到達目標を明示し、経験年数等に関わらず各自のレベルに照らして受講することが適切であると考えられた。また他障害分野においても特別に学習する必要のある項目や他分野に比べて重要性の高い項目が存在することが推測され、障害分野別の研修の整備が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
2018-11-21

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201717003B
報告書区分
総合
研究課題名
障害福祉サービスにおける質の確保とキャリア形成に関する研究
課題番号
H27-身体・知的-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
高木 憲司(和洋女子大学 生活科学系 家政福祉学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 本名 靖(東洋大学 ライフデザイン学部 生活支援学科)
  • 山口創生(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 社会復帰研究部 援助技術研究室)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部 社会福祉学科)
  • 松長麻美(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 社会復帰研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サービス管理責任者等研修に関する現状を概観し、サービス管理責任者等研修の現状と課題を明らかにする。その上で研修体系及び研修プログラム案の開発を行い、モデル研修を通じて検証する。また、サービス管理責任者等養成研修における精神障害分野別研修のカリキュラム案を作成しすることを目的とする。
研究方法
サービス管理責任者等の研修システムに関しては、障害者総合支援法並びに政省令、国が主催するサービス管理責任者等指導者養成研修の研修資料を対象とし、サービス管理責任者等養成における現状と課題を明らかにするとともに、ニーズ分析と設計の作業を行い、研修体系案と研修プログラム案(素案)の作成へつなげる。
サービス管理責任者等及び都道府県担当者に対して、これらの案についてアンケートによる確認作業を2回行い、そのデータを分析して、研修体系及び研修プログラム案の開発を行う。
基礎研修・実践研修を通じ、サービス管理責任者等の業務内容を網羅した研修内容とするための文献調査を行ったうえテキストを作成する。
作成したテキストを用いて、「サービス管理責任者等基礎研修」「サービス管理責任者等実践研修」「サービス管理責任者等更新研修」のモデル研修を、東日本(千葉県)・西日本(滋賀県)において実施する。
モデル研修実施前に、障害福祉の制度等に関する基本的な知識を問うテストを実施し、受講者の知識度を確認するとともに、モデル研修修了後に、受講内容を問うテスト並びに習得度、難易度、時間妥当性等に関するアンケートを実施する。
平成27年度に実施した、サービス管理責任者等指導者養成研修分野別研修講師を対象とした質問紙調査及び、平成28年度に実施した、精神障害を主な支援対象とする事業所のサービス管理責任者へのインタビュー調査の結果より、カリキュラム案の作成を行う。
結果と考察
研修体系案と研修プログラム案を作成した。また、アンケートから、現状の研修体制からの変更点(以下の4点)について概ね賛同が得られた。①「サービス管理責任者等基礎研修」と「サービス管理責任者等実践研修」に分ける、②現行の分野別研修は現行のサービス管理責任者等研修から分離して実施する、③更新研修の新設、④受講者個々の必要性に応じて選択・受講できる「事業分野別、障害分野別等実践研修」の新設
相談支援専門員の業務実態とサービス管理責任者等との連携に関する調査
今回の調査により、以下の結論が得られた。①相談支援専門員とサービス管理責任者等の連携が十分に取れていない。②個別支援計画の作成には時間をかけているが、具体的なサービスの管理に対する研修内容が希薄。③サービス提供者のチーム作りの研修が必要。
サービス管理責任者等基礎研修・実践研修・更新研修のテキストを作成し、千葉県及び滋賀県におけるモデル研修結果を踏まえ修正した。アンケートにより研修内容を検証した。モデル研修の内容は概ね良好であり、理解度、満足度ともに高かった。
更新研修が1日で実施されることになったが、モデル研修では2日間で実施した。実際に1日研修となれば、十分な時間を確保することは難しいと考えられる。しかし、実際にスーパービジョン研修を実施してみるとその反響は大きく、サービス管理責任者等には必要な知識・技術であることが明らかとなった。実践研修の内容を精査し、スーパービジョン研修を実施することが適切ではないのかと考えられる。
これまでの研究を踏まえ精神障害分野の分野別研修カリキュラム案を作成した結果、分野別研修としては到達目標を明示し、経験年数等に関わらず各自のレベルに照らして受講することが適切であると考えられた。また他障害分野においても特別に学習する必要のある項目や他分野に比べて重要性の高い項目が存在することが推測され、障害分野別の研修の整備が望まれる。
結論
平成27年度から29年度の3か年の本研究において、サービス管理責任者等の養成を中心に据えつつ、障害福祉分野のサービス提供職員が、キャリア形成を行っていくうえでの研修体系の全体像を明らかにした。すなわち、サービス管理責任者等基礎研修、実践研修、更新研修のプログラム案及びテキスト案を示すことができた。また、基礎研修修了者の取扱いについても、サービス管理責任者等の下で個別支援計画の原案作成に携わることができるような制度改正につなげることができた。分野別研修については、精神障害分野のカリキュラム案を示すことができた。今後、精神障害分野以外の分野別研修についてもカリキュラムの標準化が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201717003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
サービス管理責任者養成研修の問題点を明らかにしたうえで、新たな研修体系案を開発し、これについて全国的なアンケートを実施し、関係者から概ね合意を得られた。
臨床的観点からの成果
障害福祉サービスに従事する職員については、サービス管理責任者を目指してキャリアを積みあげることとなるが、これまで、社会福祉士等の有資格者が5年間の実務経験を経て、一回限りの研修を受講するだけの要件であった。この研修体系を段階的、重層的なものとすることは、サービス提供職員の質の向上を促し、ひいては障害福祉サービスの質の向上に資すると考えられる。
ガイドライン等の開発
サービス管理責任者等研修(基礎研修・実践研修・更新研修)カリキュラム及びテキスト(モデル研修用)、精神障害分野別研修カリキュラム案
その他行政的観点からの成果
サービス管理責任者等研修(基礎・実践・更新)カリキュラム及びテキスト(モデル研修用)、精神障害分野別研修カリキュラム案を完成させ、厚生労働省障害保健福祉部に対して成果を提出した。令和3年度現在、サービス管理責任者等指導者養成研修(基礎・実践・更新)が、本研究を踏まえた形で見直され実施されており、3段階研修について一通り国から都道府県への伝達が終了し、都道府県における研修が開始されている。また、児童・就労分野の研修についても都道府県における研修が開始されようとしている。
その他のインパクト
厚生労働省から、すでに本研究を踏まえた見直しが発表されている。具体的には、サービス管理責任者等研修について基礎研修・実践研修・更新研修の3段階とすること、専門コース別研修(児童、就労)について、標準プログラムが示され、サービス管理責任者等も受講可能とすること、基礎研修修了者に個別支援計画原案作成を可能とすること等である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
東洋大学ライフデザイン学部紀要2017年度
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
なし
詳細情報
分類:

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
なし
-
-

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201717003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,803,000円
(2)補助金確定額
3,803,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 522,702円
人件費・謝金 374,000円
旅費 444,206円
その他 1,822,764円
間接経費 0円
合計 3,163,672円

備考

備考
物品費が多くなったのは、分担研究者の使う消耗品等で、プリンタトナー等が見込まれていなかったため。人件費が少なかったのは、テキスト作成について、分担研究者が一部担ったことや行政説明部分を厚生労働省職員の協力を得たことによるもの。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-