認知症の予防と認知症者のリハビリテーションのガイドライン作成

文献情報

文献番号
201716006A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の予防と認知症者のリハビリテーションのガイドライン作成
課題番号
H29-認知症-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 土井 剛彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部)
  • 牧迫 飛雄馬(鹿児島大学 学術研究院医歯学域・医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,484,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症予防を目指した取り組みとして、非薬物療法による取り組みが検討されてきた。そのなかでも、身体活動の増進や運動の実施が健常高齢者の認知機能の維持・向上にある一定の効果があると報告されてきた。しかし、軽度認知障害(MCI)のように認知機能が低下した高齢者を対象にした研究のメタアナリシスにおいては一貫した結果を得られるには至っていない。さらに、大規模集団に対しても実施可能なプログラム、そしてその効果については未だ検討がなされていない。これらを明らかにするために、プログラムの開発とその効果検証を本研究の目的とし、平成29年度は、スクリーニングに合わせて認知機能低下に関連する因子を検討した。また、システマティックレビューを実施し、認知症予防に資する効果的な介入方法を検討した。介入方法としては、日々の生活における活動に着目し、身体、知的、社会活動を介入内容に取り入れた研究を抽出し、どのようなプログラム構成であれば効果が担保されるかについて、プログラムの構成要素別にメタアナリシスを実施した。一方で、認知症患者を対象とした非薬物による介入の方法と効果については、リハビリテーションの観点から、認知機能の改善に対する効果の現況を整理して、その概要を提示することを目的とした。
研究方法
対象者のスクリーニングとして、認知機能評価は、全般的認知機能検査としてMMSEを実施し、21-23点を全般的な認知機能低下(GCI)とした。MCIは、National Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Toolの結果をもとに判定し、MCIまたはGCIに該当するものを認知機能低下群とした。認知機能正常群と認知機能低下群の2群間で身体機能などの比較を中心に実施した。
身体、知的、社会活動の各活動を介入に用いた研究のシステマティックレビューを実施し、主要アウトカムは認知機能とした。プログラムの構成要素として、サンプルサイズ、平均年齢、介入期間に加え、運動の種類および知的活動の介入方法によるサブグループでの解析を実施した。
 認知症患者に対するリハビリテーションに関するレビューにおいては、非薬物的な介入による認知機能への効果を検証したランダム化比較試験を主とした先行研究の成果を探索的に検証した。
結果と考察
調査の参加人数は3810名、解析対象者は3634名であった。その中で、956名に認知機能低下(MCIまたはGCI)が認められ、認知機能正常な者に比べ認知機能だけでなく、身体機能が低く、身体的不活動やうつ傾向の割合が高かった(all p<0.05)。これらは認知症のリスクでもあるため、介入の必要性が高いことが示唆された。プログラムには認知機能だけでなく、様々な側面にもアプローチできる内容を含め、改善を図っていく必要があると考えられる。
 システマティックレビューによる解析において、認知機能の維持・向上に効果が認められた要素は、身体、知的、社会活動によって異なり、さらには認知機能間においても効果に差がみられたことから、目標とする認知機能によって各設定が必要であると考えられる。また、有酸素運動を中心に、レジスタンストレーニング、および複合的なトレーニングなども取りいれながら実際の実現可能性を踏まえてプログラムの立案をする必要があることが示唆された。知的活動においては、指導者による介入、個人での介入、およびコンピューターを用いた介入でより広範囲な認知機能において有意な改善効果が認められた。社会活動による介入においては、非MCI高齢者の場合には、一部の認知機能において有意な改善効果が認められた。
認知症患者への介入については、身体的活動と認知的活動の組み合わせによる多面的な介入では、認知機能の改善や低下抑制に効果が期待できる可能性が示唆されるものが多かった。身体的活動による介入では、有酸素運動を含む介入方法が効果的である可能性があった。しかし、介入頻度や期間など介入設定方法は多様であり、適切な介入頻度や期間の検証が必要であると思われる。
結論
認知機能低下を有する者は、認知機能だけでなく様々な側面において低い傾向にあった。これらの対象における認知症リスクを軽減するためには、認知機能だけでなく他の認知症リスク因子の改善も目的とするようなプログラムを実施していく必要性が示唆された。認知機能の維持・向上を目的とした介入を実施する際には、システマティックレビューによって明らかとなった点を考慮したプログラムの検討が必要であることが示唆され、認知症患者を対象とした場合には、身体的活動と認知的活動の組み合わせによる多面的な介入によって認知機能に対する効果が期待できるものの、プログラム構成については今後の検証が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-02-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201716006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,529,000円
(2)補助金確定額
4,529,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 268,743円
人件費・謝金 1,885,616円
旅費 132,360円
その他 1,199,141円
間接経費 1,045,000円
合計 4,530,860円

備考

備考
自己資金より1,860円支出したため、補助金確定額と支出合計額に差異がある。

公開日・更新日

公開日
2018-11-20
更新日
-