認知症発生リスクの減少および介護者等の負担軽減を目指したAge-Friendly Citiesの創生に関する研究

文献情報

文献番号
201716003A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症発生リスクの減少および介護者等の負担軽減を目指したAge-Friendly Citiesの創生に関する研究
課題番号
H28-認知症-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
  • 堀井 聡子(国立保健医療科学院 生涯健康研究部・国際協力研究部併任)
  • 横山 由香里(日本福祉大学 社会福祉学部社会福祉学科)
  • 近藤 克則(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
3年間の研究計画期間の2年目の研究を実施した。認知症高齢者等にやさしい地域の評価指標を開発し、手引きを作成して試用と評価を行い、認知症高齢者等にやさしいまちづくりに貢献することが目的である。
研究方法
初年度は、概念整理、多地域大規模疫学調査による指標作成のためのデータ収集を中心に実施し、認知症当事者の視点からの検討、自治体への事例調査を行った。2年目には、以下のように研究を進めた。【信頼性・妥当性の検討】信頼性の検討としてCronbach α係数の算定を行った。妥当性の検討としては、個人単位での受援力と抑うつ点数の関連、また市町村単位での認知症サポーター講座開催回数等との関連などによる基準関連妥当性の検討を行った。【多地域大規模疫学調査データによるADFC指標作成】全国の市町村と共同で大規模疫学調査を実施した。このデータを用いて、JAGES HEART(Health Equity Assessment and Response Tool)2017版を開発しADFC指標を閲覧できるようにした。【認知症当事者からみた認知症にやさしい地域】認知症当事者へのインタビューと参与観察を昨年度から継続し、特に都市と農村部の共通点、相違点に焦点をあてて分析した。【手引き作成と教育研修に関する研究】手引きの骨子の作成では、文献レビュー、関係者ワークショップ、ワーキング班会議などを実施した。事例調査では、大規模調査により認知症関連項目の得点が高かった自治体を抽出し(量的調査)、対象自治体でフィールドワーク(インタビュー・参与観察・現地資料収集)を実施した(質的調査)。【自治体による認知症発生の地域差の要因分析】JAGESの2010年から2016年までのコホートデータを用いて、自治体間の認知症発生の地域差の要因について検討を行った。年齢、性別、ベースライン時点での軽度認知障害、社会的要因(つながりや社会経済状態)、健康要因(認知症に関連する疾患や健康状態)、行動要因(保健行動や社会参加行動)について、競合リスクを考慮した生存時間分析で検討を行った。
結果と考察
【信頼性・妥当性の検討】信頼性については全27項目でCronbach α=0.633であった。基準関連妥当性については、個人単位で見た場合、認知機能低下者における抑うつ度の性・年齢を調整した平均値は、受援力がある群では7.7点、非該当の群では6.6点(p=0.008)であり、受援力と抑うつ度には有意な関連がみられた。また、市町村単位で認知症サポーター講座開催回数(人口1万対)と地域で大切にされていると感じている高齢者の関連が見られた。【多地域大規模疫学調査データによるADFC指標作成】「周りの人に助けてもらいながら自宅での生活を続けたいと思う」では、市町村間に54.4~71.0%の差を認めるなど各市町村の状況が明らかになった。あるまちの数値がどれくらいで、39市町村中のどこに位置づくのかがわかるJAGES HEART 2017が開発できた。【認知症当事者からみた認知症にやさしい地域】当事者の声を分析した結果、認知症当事者にとって住みやすいまちや、地域に求める内容は、その地域の特徴に応じて異なるが、「認知症への理解」「共生」「受援力」については共通してみられる要因であることが確認された。農村部では、専門的な医療機関の不足、スティグマ、公共交通機関の不足などが特に深刻である可能性が示唆された。【手引き作成と教育研修に関する研究】WHOの高齢者にやさしいまちのコア指標ガイドをベースに、わが国の地域保健行政関係者にとっての実用度を考慮に入れて手引きの骨子案を作成した。自治体でのフィールド調査の結果、住民へのまちのビジョンの浸透、首長の強いリーダーシップ、まちづくりのための庁内連携体制、行政と住民との顔の見える関係が抽出された。【自治体による認知症発生の地域差の要因分析】最も平均年齢の若い自治体を基準とした多変量調整後の生存時間分析の結果、最も認知症発生が多い自治体のハザード比は1.3(95%信頼区間=1.0;1.6)、最も少ない自治体は0.8(95%信頼区間=0.7;1.0)であった。自治体間の認知症発生の地域差は、年齢や行動、健康状態が原因で生じている部分が存在した。
結論
認知症高齢者等にやさしい地域に関する概念整理、指標の開発を行い、一定の信頼性、妥当性が検証された。大規模疫学調査結果による地域の状況の見える化を実施した。また、認知症当事者等及び自治体へのインタビューにより質的に状況を明確化した。さらに、認知症が多い地域には行動などの特性の他、地域ごとの要因があることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2019-04-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201716003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,099,000円
(2)補助金確定額
5,099,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 308,386円
人件費・謝金 389,287円
旅費 1,410,706円
その他 1,815,436円
間接経費 1,176,000円
合計 5,099,815円

備考

備考
815円の差異について、研究遂行のため必要な経費であり、自己負担とした。
788円は、研究分担者 横山由香里の旅費にかかる研究費不足分を自己資金で補った。
27円は、研究分担者 堀井聡子の旅費その他にかかる研究費不足分を自己資金で補った。

公開日・更新日

公開日
2018-11-22
更新日
-