前向きコホート調査に基づく認知症高齢者の徘徊に関する研究

文献情報

文献番号
201716002A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート調査に基づく認知症高齢者の徘徊に関する研究
課題番号
H28-認知症-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 孝(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター )
  • 斎藤 民(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
  • 村田 千代栄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
  • 鄭 丞媛(ジョン スンウォン)(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,181,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症に関連する徘徊は、最も深刻な行動・心理症状(BPSD)の1つである。徘徊・行方不明の実態はこれまでほとんど把握されておらず、その実態解明が待たれる。本研究の目的は、軽度認知障害を含む認知症を対象としたコホートを設定し、前向き追跡調査を行い、行方不明の実態(頻度と予測因子)を明らかにするすることである。従来の徘徊についての報告では、「警察に届けられた行方不明」が対象となっていた。本研究では、さらにその背景にある「家族からみた行方不明」を調査する。
研究方法
徘徊に関する研究の難しさは、徘徊の定義が定まっておらず、家族により受け止め方も異なり、調査方法により結果が異なることである。本研究では認知症による行方不明を、「屋外で患者さんの居場所が分からなくなって捜したことがある」、「家から外出して、想定した時間内に帰ってこなかったので捜したことがある」、「夜間、就寝中に患者さんが家から出ていって捜したことがある」、「興奮して、家を出ていって捜したことがある」、「迷子になることがあり捜したことがある」を一つ以上満たせば行方不明と定義した(調査票1)。 
患者の基本情報(年齢、生年月日、性別、教育歴、既往歴、身長・体重、居住地・場所、居住地・年、職歴、介護サービスの利用。服薬状況)、介護者情報(年齢、生年月日、性別、教育歴、既往歴、居住地・場所、居住地・年、社会的背景・役割(家族構成、就労状況)、認知機能、健康状態、介護状況)、高齢者総合機能評価(老年症候群、転倒歴、転倒スコア、抑うつ症状、食欲、日常生活自立度、基本的日常生活活動能力、手段的日常生活活動能力、認知症行動障害尺度、意欲、介護負担、社会的背景、睡眠時間、既往歴、喫煙歴、飲酒歴、服薬、身体機能検査、神経心理学的検査(MMSE、ADAS-cog、FAB、RCPM、WMS-R)、脳画像検査(MRI、脳血流シンチ)、血液検査、質問票Ⅱ(介護者包括的調査)、質問票Ⅲ(徘徊アセスメント調査)を調査する。
本研究はヘルシンキ宣言および文部科学省・厚生労働省「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に示される倫理規範に則り計画され、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た。
結果と考察
対象は、国立長寿医療研究センター・もの忘れセンターに通院し、患者(被験者)と介護者のペアで登録可能な者で、2018年度に490名を登録した。登録時データで、質問票Ⅰで「行方不明で捜した」が13.3%、「行方不明に気付いて心配した」が15.7%でみられた。登録時に「捜した群」の特徴は、患者はより高齢、介護保険の利用がない、認知障害が強い(MMSE 18.7±5.2)、BPSDが強い、意欲以下、介護者でうつ傾向が強い、介護負担感が強いことであった。さらに、登録時の自記式アンケート調査と聞き取りによる回答の違いを検討した。自記式における判定の18.7%が聞き取りを含む最終判定で異なり、確定件数は、「該当なし」64.9%、「心配した」13.7%、「捜した」21.4%であった。しかし、「行方不明の該当なし」または「捜した」と答えた者においては、自記式と聞き取りにおいて、約9割の一致していた。現在、全例を前向きに追跡調査しており、6か月での縦断調査も298例(60.8%)、12か月後のフォロー10件(2%)まで進んだ。
結論
「認知症による行方不明」の頻度、危険因子を前向き包括的に調査する。本研究のような研究は過去にはなく、「認知症による行方不明」に関して重要なデータと示唆を与えるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201716002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,435,000円
(2)補助金確定額
5,426,000円
差引額 [(1)-(2)]
9,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 507,389円
人件費・謝金 3,561,696円
旅費 2,300円
その他 101,490円
間接経費 1,254,000円
合計 5,426,875円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-