要介護高齢者の生活機能向上に資する効果的な生活期リハビリテーション/リハビリテーションマネジメントのあり方に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201715001A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者の生活機能向上に資する効果的な生活期リハビリテーション/リハビリテーションマネジメントのあり方に関する総合的研究
課題番号
H27-長寿-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
川越 雅弘(埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水間 正澄(医療法人社団輝生会)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 村尾 浩(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)
  • 石川 隆志(秋田大学大学院 医学系研究科保健学専攻)
  • 小林 法一(首都大学東京 荒川キャンパス)
  • 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
  • 植松 光俊(星城大学リハビリテーション学部リハビリテーション学科)
  • 備酒 伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)
  • 篠田 道子(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 田口 孝行(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 臼倉 京子(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 柴山 志穂美(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
10,352,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
要介護高齢者の生活期リハでは、個人の状態や目標に合わせて、心身機能・活動・参加にバランスよくアプローチすることが、また、質の高いリハを提供するためには、多職種協働のもと、リハマネジメントを適切に展開することが求められるが、様々な問題点が指摘されており、リハ及びリハマネジメントの在り方の再構築が必要な状況にある。
本研究は、3つのサブテーマ(研究1:訪問・通所リハマネジメントの現状・課題と改善策の検討、研究2:リハマネジメントデータ収集の仕組みの構築とその活用に関する研究、研究3:教育・研修方法及びツール開発に関する研究)を通じて、生活期リハ/リハマネジメントの改善策を提案することを目的とする。
研究方法
本年度は、3つのサブテーマに関し、以下の方法で研究を実施した。
1)有識者会議やヒアリングを通じて、リハマネジメントのあるべきプロセスの整理とそれを実現するために必要な機能及び機能強化策の検討を行った
2)有識者会議を通じて、通所・訪問リハの質の評価データ収集システム(VISIT)データを用いたデータ分析の基本的視点と分析結果の活用の目的、ならびにVISITデータの分析・活用方法の検討を行った
3)ICFとマネジメントを体系的に学んだ医療・福祉職3名で、事例の整理、多職種が参加するリハカンファレンス(以下、RC)の運営方法の整理及びDVD作成を行った
4)リハ職を中心に関係団体等を通じて参加者を募り、東京都内で合計9回の研修会を定期開催し、研修内容及び資料、運営方法に関するアンケートを実施した。
結果と考察
1) 研修会や事例検討会の内容分析から、①対象者の価値観、関心領域などを理解する力が弱い、②①を引き出す対話力が弱い、③他の職種と協働する経験が少なく、理解も不十分、④対象者の弱み(できないところ)をみる視点が強く、本人の強みや環境の強みを生かす視点が弱いことがわかった
2) 全国・事業所・利用者ベースでのVISITデータ分析により、①効果的なリハマネジメント手法の検証と標準化、②自事業所の特徴やパフォーマンスの認識を通じた事業所の質向上、③利用者とリハ職間の協働プロセスの機能強化、④リハ職の考える力と説明する力の強化が図られると考えた
3) ICFを活用したRCのポイントは、①「している活動」と「できる活動」に分けて分析すること、②1つの「参加」を実現するには多数の「活動」が必要になるため、結果として生活機能の維持・向上が図れること、③ICFは、統合モデルであり目標指向的な活動向上プログラムであること、④RCの中で、リハ職の相談・助言機能を高める役割が重要であることを確認した
などがわかった。
結論
リハ職はケアを必要とする人の全体像を見渡すことできる教育背景をもつことから、多職種連携を中心的に推進するべき職種であるはずであるが、事例検討会や地域ケア会議の場面等でその機能が十分に発揮されていないことも否めない。
このような課題を解決するためには、リハ職への教育プログラムとして、①多職種協働をベースとしたマネジメントの意義とその重要性を十分に伝え、リハ職がその任にあるという動機付け部分と、②それを具体的に実践できる技術論(特に、マネジメント論)の2段階で考える必要があると考える。

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201715001B
報告書区分
総合
研究課題名
要介護高齢者の生活機能向上に資する効果的な生活期リハビリテーション/リハビリテーションマネジメントのあり方に関する総合的研究
課題番号
H27-長寿-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
川越 雅弘(埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水間 正澄(医療法人社団輝生会)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 村尾 浩(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)
  • 石川 隆志(秋田大学大学院 医学系研究科保健学専攻)
  • 小林 法一(首都大学東京 荒川キャンパス)
  • 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
  • 植松 光俊(星城大学リハビリテーション学部)
  • 備酒 伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)
  • 篠田 道子(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 田口 孝行(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 臼倉 京子(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
  • 柴山 志穂美(埼玉県立大学 保健医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
要介護高齢者の生活期リハでは、個人の状態や目標に合わせて、心身機能・活動・参加にバランスよくアプローチすることが、また、質の高いリハを提供するためには、多職種協働のもと、リハマネジメントを適切に展開することが求められるが、様々な問題点が指摘されており、リハ及びリハマネジメントの在り方の再構築が必要な状況にある。生活期リハマネジメントの再構築に関しては、短期目標の設定状況など、部分的な実態把握は行われているものの、マネジメントプロセス全体の実態さえ明らかに出来ていない。
そこで、本研究では、リハの効果分析を通じて、活動・参加レベル向上に資するリハの方法論の確立を図るとともに、これら技術を効果的に機能させるための一連のマネジメントプロセスの手法を開発する。さらに、これら手法をリハ職(学生・社会人)に定着させるための教育・研修方法及びテキストの開発も併せて行うことを目的とする。
研究方法
本研究は3つのサブテーマ(研究1:訪問・通所リハマネジメントの現状・課題と改善策の検討、研究2:リハマネジメントデータ収集の仕組みの構築とその活用に関する研究、研究3:教育・研修方法及びツール開発に関する研究)で構成される。各テーマに関し、以下の方法で研究を進めた。研究1に関しては、①アンケート、②リハ計画書等データ、③認定・給付データをもとにした量的分析及び事例検討会を通じた質的分析を、研究2に関しては、「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業(VISIT)」の展開支援のため、①現在テキスト記入となっているリハ提供内容/利用者の生活課題領域のコード化、②プロトタイプの開発及びデータ収集、③VISITデータを用いたデータ分析方法、ならびにリハ事業者及び利用者へのフィードバック方法の検討などを、研究3に関しては、①ヒアリングを通じたリハ教育内容の現状把握、②リハマネジメント力強化のための研修カリキュラムの検討及びテキスト案の開発と多職種研修の試行、③リハ会議展開支援のためのDVD作成などを実施した。
結果と考察
本研究を通じて、
1) 通所リハ利用者の課題をみると、「歩行・移動」「筋力向上」「関節可動域」が多く、リハ内容も「筋力向上」「歩行・移動練習」「関節可動域訓練」が多かった
2) 事例分析から、①対象者の価値観、関心領域などを理解する力が弱い、②①を引き出す対話力が弱い、③他の職種と協働する経験が少なく、理解も不十分、④対象者の弱み(できないところ)をみる視点が強く、本人の強みや環境の強みを生かす視点が弱い、⑤社会資源に対する知識やネットワークが弱いなどがわかった
3) 臨床において多職種のアセスメントの視点の認知度は十分ではないが、今回の多職種研修を通して、多職種がどのような理由でどんなアセスメントをしているのか、また何の情報に強く何の情報に弱いのか、その弱い部分についてはどの職種と連携するとよいのか等、具体的な連携のイメージにつながったと考えられた
などがわかった。

結論
リハ職はケアを必要とする人の全体像を見渡すことできる教育背景をもつことから、多職種連携を中心的に推進するべき職種であるはずであるが、事例検討会や地域ケア会議の場面等でその機能が十分に発揮されていないことも否めない。また、利用者が抱える様々な生活課題のうち、歩行・移動を中心とした領域に限定的に関与しているリハ職がまだまだ多いといった状況にあることもわかった(部分的関与に留まっている)。
こうした課題を解決していくためには、リハ職への教育プログラムとして、①多職種協働をベースとしたマネジメントの意義とその重要性を十分に伝え、リハ職がその任にあるという動機付け部分と、②それを具体的に実践するためのマインドと技術を高める方法論の教育強化の2段階で考える必要があると考える。

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201715001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成27年度改定で、通所・訪問リハマネジメントの機能強化が打ち出されたが、その実態は明らかとされていなかった。本研究では、①通所・訪問リハ事業所を対象としたアンケート、②業務で使用しているアセスメント票及び計画書などの多事業所から縦断的データ収集を通じて、リハマネジメントの現状と課題を明らかにすることができた。本研究で開発したVISITは、2018年にリハマネジメント加算として算定可能になった。さらに、2021年改定でLIFEとして統合された。
臨床的観点からの成果
多職種による事例検討会を複数地域で実施し、リハマネジメントにおける諸課題(①アセスメントが機能・活動面中心で、健康状態などの評価が不十分など)、②思考プロセス上の課題(課題抽出と優先順位付け、対策の一貫性がない場合がある)、③他の職種に対する理解及び連携上の課題、④介入に関する課題(地域資源とその機能に対する把握が不十分など)などを明らかにすることができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究では、厚生労働省の「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業(VISIT)」に併せ、①リハ目標及びリハ内容のコード化、②プロトタイプ作成などを実施し、VISITの本格的運用に貢献してきた。さらに、老人保健健康増進等事業として、収集したデータの利活用に関する検討を、本研究の研究分担者を中心に実施し、厚生労働省に対し提案を行った。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
35件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
2018年9月8日に開催された第52回日本作業療法学会ナイトセミナーにて、「リハビリテーション計画における支援計画での 活用方法や考え方 ~VISITの考え方と紹介~」を発表した。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
本研究で開発したVISITは、2018年にリハマネジメント加算として算定可能になった。さらに、2021年介護報酬改定でLIFEとして統合された。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
川越 雅弘
マネジメントとは
作業療法ジャーナル , 50 (8) , 732-736  (2016)
原著論文2
石川 隆志
アセスメントの視点
作業療法ジャーナル , 50 (8) , 760-765  (2016)
原著論文3
石川 隆志
生活行為向上マネジメント総論
新潟県作業療法士会学術誌 ,  (10) , 12-27  (2016)
原著論文4
曽根稔雅、中谷直樹、辻一郎、他
訪問・通所リハビリテーション利用者の特性と課題に関する実態調査
厚生の指標 , 65 (3) , 1-8  (2018)
原著論文5
川越 雅弘
VISITとは何か,またそのデータはどのように活用されていくのか
作業療法ジャーナル , 53 (2) , 158-163  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
2023-05-01

収支報告書

文献番号
201715001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,352,000円
(2)補助金確定額
10,352,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 957,475円
人件費・謝金 3,663,967円
旅費 121,296円
その他 5,611,494円
間接経費 0円
合計 10,354,232円

備考

備考
自己資金2,186円, その他(預金利息)46円

公開日・更新日

公開日
2019-03-18
更新日
2019-03-22