文献情報
文献番号
201713002A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄バンクコーディネート期間の短縮とドナープールの質向上による造血幹細胞移植の最適な機会提供に関する研究
課題番号
H28-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
- 岡本 真一郎(学校法人慶應義塾慶應義塾大学医学部内科学(血液)教室)
- 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院造血細胞移植センター)
- 日野 雅之(大阪市立大学医学部附属病院血液内科・造血細胞移植科)
- 高梨 美乃子(日本赤十字社血液事業本部)
- 加藤 剛二(名古屋第一赤十字病院小児医療センター血液腫瘍科)
- 金森 平和(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター)
- 熱田 由子(一般社団法人 日本造血細胞移植データセンター)
- 吉内 一浩(東京大学医学部附属病院心療内科)
- 黒澤 彩子(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科)
- 山崎 裕介(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
骨髄バンクのコーディネート期間を短縮し、安全性が確立されている非血縁骨髄移植の機会提供を増やすことで造血器疾患の治療成績向上を目指す。コーディネートが順調に進みやすい有効ドナーを確保することによるドナープールの質向上と、コーディネートプロセスの効率化を目指した具体的な施策に取り組む。
研究方法
【1】患者側・ドナー側からみた骨髄バンクコーディネートの実態把握調査
2004年から2013年までに骨髄バンクドナーコーディネートを開始した患者18,487人、ドナーのべ223,842人(ドナー数171,750人)に関する解析を行う。
【2】バンクコーディネート期間短縮を目指した研究
コーディネートに関わる医師と日本骨髄バンク(JMDP)・各施設の移植コーディネーターを対象とした「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査」の解析を行う。また造血幹細胞移植推進拠点病院事業として行われた「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」の解析を行う。
【3】ドナープールの質向上を目的とした取り組み
ソーシャルマーケティング手法を用いて、骨髄バンク登録者18人のインタビュー調査および家族・職場の骨髄提供に対する認識と態度等に関する「小規模アンケート調査」を行う。これらの結果を基にして、2015年~2016年度にコーディネートが行われた40歳未満ドナーの10,000人を対象とした「大規模アンケート調査」を行う。
2004年から2013年までに骨髄バンクドナーコーディネートを開始した患者18,487人、ドナーのべ223,842人(ドナー数171,750人)に関する解析を行う。
【2】バンクコーディネート期間短縮を目指した研究
コーディネートに関わる医師と日本骨髄バンク(JMDP)・各施設の移植コーディネーターを対象とした「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査」の解析を行う。また造血幹細胞移植推進拠点病院事業として行われた「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」の解析を行う。
【3】ドナープールの質向上を目的とした取り組み
ソーシャルマーケティング手法を用いて、骨髄バンク登録者18人のインタビュー調査および家族・職場の骨髄提供に対する認識と態度等に関する「小規模アンケート調査」を行う。これらの結果を基にして、2015年~2016年度にコーディネートが行われた40歳未満ドナーの10,000人を対象とした「大規模アンケート調査」を行う。
結果と考察
【1】患者側・ドナー側からみた骨髄バンクコーディネートの実態把握調査
過去10年間の骨髄バンクコーディネートの実態把握調査を論文化した(臨床血液2018)。前回コーディネート結果から次回の採取到達率が予想可能であったため、日本赤十字社で開発中の「コーディネート登録検索システム」へ反映させる。
【2】バンクコーディネート期間短縮を目指した研究
「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査(回答717人)」の解析結果を班会議と学会で報告した。「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」は登録された18人中17人が移植まで到達しており、既報と比較して移植到達率が高かった(94% vs 60%)。移植へ到達した17人中12人が初回指定ドナー10人から移植しており、患者登録から移植到達までの期間中央値は既報よりも短縮していた(128日 vs 146日)。本結果を基にして、平成30年4月よりコーディネート開始ドナーを10人まで増加可能とするJMDPの施策へ反映することができた。
【3】ドナープールの質向上を目的とした取り組み
幹細胞提供者8人、途中終了ドナー5人、未開始ドナー5人、計18人のインタビューを行った。終了ドナーは提供ドナーと同様の高いモチベーションを持つものの、「仕事や生活面における障害のコントロールが出来なかったこと」が終了の理由となっており、企業や家族における理解を高めるための対策が有用となり得ることが示唆された。「小規模アンケート調査(回答385人)」より、幹細胞提供ドナーは「高いモチベーションの維持」、「献血回数の多さ」、「仕事や家庭の生活面での調整が可能」などの要因が行動を規定している可能性が示唆された。一方、終了ドナーは提供ドナーと同様の高いモチベーションを持つものの、「仕事や生活面における障害のコントロールが出来なかったこと」がコーディネート終了の主な理由となっていた。ドナー都合で終了となった315人の主な終了理由は、仕事の都合43%、家庭の都合・反対36%、本人の不安・身体リスク11%であった。「大規模アンケート調査」は倫理審査承認後、10,000人を対象として、平成29年度中にアンケート調査を発送した。
過去10年間の骨髄バンクコーディネートの実態把握調査を論文化した(臨床血液2018)。前回コーディネート結果から次回の採取到達率が予想可能であったため、日本赤十字社で開発中の「コーディネート登録検索システム」へ反映させる。
【2】バンクコーディネート期間短縮を目指した研究
「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査(回答717人)」の解析結果を班会議と学会で報告した。「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」は登録された18人中17人が移植まで到達しており、既報と比較して移植到達率が高かった(94% vs 60%)。移植へ到達した17人中12人が初回指定ドナー10人から移植しており、患者登録から移植到達までの期間中央値は既報よりも短縮していた(128日 vs 146日)。本結果を基にして、平成30年4月よりコーディネート開始ドナーを10人まで増加可能とするJMDPの施策へ反映することができた。
【3】ドナープールの質向上を目的とした取り組み
幹細胞提供者8人、途中終了ドナー5人、未開始ドナー5人、計18人のインタビューを行った。終了ドナーは提供ドナーと同様の高いモチベーションを持つものの、「仕事や生活面における障害のコントロールが出来なかったこと」が終了の理由となっており、企業や家族における理解を高めるための対策が有用となり得ることが示唆された。「小規模アンケート調査(回答385人)」より、幹細胞提供ドナーは「高いモチベーションの維持」、「献血回数の多さ」、「仕事や家庭の生活面での調整が可能」などの要因が行動を規定している可能性が示唆された。一方、終了ドナーは提供ドナーと同様の高いモチベーションを持つものの、「仕事や生活面における障害のコントロールが出来なかったこと」がコーディネート終了の主な理由となっていた。ドナー都合で終了となった315人の主な終了理由は、仕事の都合43%、家庭の都合・反対36%、本人の不安・身体リスク11%であった。「大規模アンケート調査」は倫理審査承認後、10,000人を対象として、平成29年度中にアンケート調査を発送した。
結論
平成29年度は、過去10年間の骨髄バンクコーディネート実態把握調査を論文化し、「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査」の解析結果を班会議と学会で報告した。「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」は18人が登録され、既報と比較して移植到達率が高く(94% vs 60%)、コーディネート期間が短縮していた(128日 vs 146日)。若年ドナーにおける初期コーディネート進行率増加を目指したソーシャルマーケティング研究は、18人のインタビュー調査と385人の郵送アンケート調査より、提供ドナーにおける高いモチベーションの維持、献血回数の多さ、仕事や家庭でのコントロール感などの知見が得られた。一方で、終了ドナーは仕事や生活面における障害を調整することが困難であることがコーディネート断念につながることなど、幹細胞提供ドナーと提供に至らないドナーにおける心理社会的要因に関する仮説を構築した。40歳未満ドナーの10,000人を対象として「大規模アンケート調査」を発送した。
公開日・更新日
公開日
2019-09-10
更新日
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