非血縁者間臍帯血移植における移植造血幹細胞数と移植成績の相関-移植用臍帯血有効利用への応用-

文献情報

文献番号
201713001A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間臍帯血移植における移植造血幹細胞数と移植成績の相関-移植用臍帯血有効利用への応用-
課題番号
H27-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
薗田 精昭(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤岡 龍哉(関西医科大学 医学部)
  • 松岡 由和(関西医科大学 医学部)
  • 野村 昌作(関西医科大学 医学部)
  • 藤田 真也(関西医科大学 医学部)
  • 藤村 吉博(日本赤十字社 近畿ブロック血液センター)
  • 木村 貴文(日本赤十字社 近畿ブロック血液センター)
  • 小川 啓恭(兵庫医科大学 医学部)
  • 井上 雅美(大阪母子医療センター 血液腫瘍科)
  • 中前 博久(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 畑中 一生(大阪赤十字病院 血液内科)
  • 中村 文明(国立循環器病研究センター 循環器病総合情報センターデータ統合室)
  • 浅野 弘明(京都府立医科大学 大学院保健看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,737,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 非血縁者間臍帯血移植(UCBT)は、重要な移植法として確立されている。しかし、その根幹をなす臍帯血(CB)に含まれる造血幹細胞(HSC)の本体は、十分に明らかにされていない。本研究の目的は、移植用CBに含まれているCD34抗原陽性(CD34+)HSC数を独自に開発した方法により正確に測定し、移植成績との関連を明らかにすることにより、安全で効率的なUCBTを確立することである。
研究方法
 日本赤十字社近畿さい帯血バンク(以下、近畿バンク)より提供された残余濃縮CBより有核細胞(NC)を分離、回収する。次いで、回収したNCより免疫磁気ビーズを用いて11種類の分化抗原陰性(11 Lin-)細胞を単離する。得られた11Lin-細胞は、7-AAD、18種類の分化抗原に対する抗体、CD34およびCD133抗原に対する抗体を用いて多重染色し、FACSを用いて18Lin-CD34+CD133+細胞の割合を測定する。その後、総有核細胞(TNC)数と18Lin-CD34+CD133+細胞の割合より、移植用CB中に含まれる18Lin-CD34+CD133+細胞数を算定する。最終的に、限界希釈実験の結果(頻度 1/142)に基づいて、移植用CB中に含まれるCD34+CD133+ HSC数を算出する 。
結果と考察
 平成27年6月~平成29年9月に近畿バンクが移植用に保存したCBから、残余濃縮CBの提供を受け、個々のCBに含まれるCD34+CD133+HSC数を測定した。評価可能な835本のCBにおけるTNC数とCD34+細胞数 は、中央値で各々14.8x10e8個、4.2x10e6個であった。一方、CD34+CD133+HSC数は、146~49,450(中央値3,227)個と幅広く分布し、最大値/最小値比は339とTNC数やCD34+細胞数のの4.0~8.8と大きくかい離していた。
 統計学的な解析を行ったところ、TNC数とCD34+CD133+HSC数、CD34+細胞数とCD34+CD133+HSC数との間に有意な相関は認められなかった。次に、CBに含まれているCD34+CD133+HSC数を四分位により下位、中間、上位の3群に分けて解析した(以下に中央値で記載する)。下位群では、TNC数は14.4x10e8個、CD34+細胞数 は3.8)x10e6個、CD34+CD133+HSC数 は1,122個であった。中間群では、TNC数は14.6x10e8個、CD34+細胞数 は4.0x10e6個、CD34+CD133+HSC数 は、3,215個であった。上位群では、TNC数は15.7x10e8個、CD34+細胞数 は5.2x10e6個、CD34+CD133+HSC数 は、8,588個であった。以上の3群間の差異について統計学的な解析を行った。その結果、下位群、中間群においては、TNC数とCD34+CD133+HSC数、CD34+細胞数とCD34+CD133+HSC数に全く相関を認めなかった。上位群においては、TNC数とCD34+CD133+HSC数には相関は認められなかった。一方、CD34+細胞数とCD34+CD133+HSC数間には弱い相関傾向が認められた。しかしながら、両者間における順位相関係数は0.087であることから、明確な関連性は示唆されなかった。 次に、前向き臨床観察研究についてまとめる。平成29年11月30日現在で、CD34+CD133+HSC数を測定した475本のCBが公開され、平成29年11月30日の時点で247本が移植用に提供されている。移植100日後のTRUMPデータの報告は、平成29年12月4日までに134症例分を回収した。対象者の年齢の中央値は、53.0歳、対象疾患はAMLが51.5%で最も多かった。移植細胞数の中央値は、TNC数が3.0×10e7個/kg、CD34+細胞数が0.9×10e5個/kg、CD34+CD133+ HSC数が中央値51.3個/kgであった。移植例数134例での予備的解析の結果では、四分位の解析で好中球生着までの期間がCD34+CD133+HSC数の多い群で有意に早かった(P<0.002)。
結論
 従来、UCBTにおけるHSC活性の指標であったTNC数, CD34+細胞数は、個々の臍帯血ユニットに含まれているCD34+HSC数を正確に反映していないことが明らかにされた。今後、移植CD34+CD133+HSC数と移植後の造血回復、生着不全との相関を明らかにする前向き臨床研究が極めて重要になると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201713001B
報告書区分
総合
研究課題名
非血縁者間臍帯血移植における移植造血幹細胞数と移植成績の相関-移植用臍帯血有効利用への応用-
課題番号
H27-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
薗田 精昭(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤岡 龍哉(関西医科大学 医学部 )
  • 松岡 由和(関西医科大学 医学部 )
  • 野村 昌作(関西医科大学 医学部 )
  • 藤田 真也(関西医科大学 医学部 )
  • 藤村 吉博(日本赤十字社 近畿ブロック血液センター)
  • 木村 貴文(日本赤十字社 近畿ブロック血液センター)
  • 小川 啓恭(兵庫医科大学 医学部)
  • 井上 雅美(大阪母子医療センター 血液腫瘍科)
  • 中前 博久(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 畑中 一生(大阪赤十字病院 血液内科)
  • 中村 文明(国立循環器病研究センター 循環器病総合情報センターデータ)
  • 浅野 弘明(京都府立医科大学 大学院保健看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 非血縁者間臍帯血移植(UCBT)は、本邦における造血幹細胞移植の中で重要な移植法として確立されている。しかし、その根幹をなす臍帯血(CB)に含まれる造血幹細胞(HSC)の本体は、十分に明らかにされていない。本研究の目的は、移植用CBに含まれるHSC数を正確に測定し、移植成績との関連を明らかにすることにより、安全で効率的なUCBTを確立することである。
研究方法
 日本赤十字社近畿さい帯血バンク(以下、近畿バンク)より提供された残余濃縮CBより有核細胞(NC)を分離、回収する。次いで、回収したNCより免疫磁気ビーズを用いて11種類の分化抗原陰性(11 Lin-)細胞を単離する。得られた11Lin-細胞は、7-AAD、18種類の分化抗原に対する抗体、CD34およびCD133抗原に対する抗体を用いて多重染色し、FACSを用いて18Lin-CD34+CD133+細胞の割合を測定する。その後、総有核細胞(TNC)数と18Lin-CD34+CD133+細胞の割合より、移植用CB中に含まれる18Lin-CD34+CD133+細胞数を算定する。最終的に、限界希釈実験の結果(頻度 1/142)に基づいて、移植用CB中に含まれるCD34+CD133+ HSC数を算出する 。
結果と考察
 平成27年度は、近畿バンクで移植用に保存された361本の臍帯血に含まれているCD34+CD133+HSC数を測定した。平成28年度は519本、平成29年度は106本の臍帯血でCD34+CD133+HSC数を測定した。評価可能な835本(平成27年6月~平成29年9月)のCBにおけるTNC数とCD34+細胞数 は、中央値で各々14.8x10e8個、4.2x10e6個であった。一方、CD34+CD133+HSC数は、146~49,450(中央値3,227)個と幅広く分布し、最大値/最小値比は339とTNC数やCD34+細胞数のの4.0~8.8と大きくかい離していた。
 統計学的な解析を行ったところ、TNC数とCD34+CD133+HSC数、CD34+細胞数とCD34+CD133+HSC数との間に有意な相関は認められなかった。次に、CBに含まれているCD34+CD133+HSC数を四分位により下位、中間、上位の3群に分けて解析した(以下に中央値で記載する)。下位群では、TNC数は14.4x10e8個、CD34+細胞数 は3.8)x10e6個、CD34+CD133+HSC数 は1,122個であった。中間群では、TNC数は14.6x10e8個、CD34+細胞数 は4.0x10e6個、CD34+CD133+HSC数 は、3,215個であった。上位群では、TNC数は15.7x10e8個、CD34+細胞数 は5.2x10e6個、CD34+CD133+HSC数 は、8,588個であった。以上の3群間の差異について統計学的な解析を行った。その結果、下位群、中間群においては、TNC数とCD34+CD133+HSC数、CD34+細胞数とCD34+CD133+HSC数に全く相関を認めなかった。上位群においては、TNC数とCD34+CD133+HSC数には相関は認められなかった。一方、CD34+細胞数とCD34+CD133+HSC数間には弱い相関傾向が認められた。しかしながら、両者間における順位相関係数は0.087であることから、明確な関連性は示唆されなかった。 次に、前向き臨床観察研究についてまとめる。平成29年11月30日現在で、CD34+CD133+HSC数を測定した475本のCBが公開され、平成29年11月30日の時点で247本が移植用に提供されている。移植100日後のTRUMPデータの報告は、平成29年12月4日までに134症例分を回収した。対象者の年齢の中央値は、53.0歳、対象疾患はAMLが51.5%で最も多かった。移植細胞数の中央値は、TNC数が3.0×10e7個/kg、CD34+細胞数が0.9×10e5個/kg、CD34+CD133+ HSC数が中央値51.3個/kgであった。移植例数134例での予備的解析の結果では、四分位の解析で好中球生着までの期間がCD34+CD133+HSC数の多い群で有意に早かった(P<0.002)。
結論
 従来、UCBTにおけるHSC活性の指標であったTNC数, CD34+細胞数は、個々の臍帯血ユニットに含まれているCD34+CD133+HSC数を正確に反映していないことが明らかにされた。今後、移植CD34+CD133+HSC数と移植後の造血回復(好中球、血小板)、生着不全との相関を明らかにする前向き臨床研究が極めて重要になると考えられ、500~600例で最終解析を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201713001C

収支報告書

文献番号
201713001Z