文献情報
文献番号
201712006A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病及び慢性腎不全による合併症足潰瘍・壊疽等の重症下肢虚血重症化と予防に関する実態調査
課題番号
H29-免疫-指定-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大浦 武彦(医療法人 社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所 )
研究分担者(所属機関)
- 東 信良(旭川医科大学外科講座・血管外科)
- 上村哲司(佐賀大学医学部附属病院・形成外科)
- 中村正人(東邦大学医療センター大橋病院・循環科内科)
- 大浦紀彦(杏林大学医学部・形成外科)
- 小林修三(湘南鎌倉総合病院)
- 市岡 滋(埼玉医科大学・形成外科)
- 菊地 勘(医療法人社団豊済 会)
- 秋田定伯(福岡大学医学部・形成外科・創傷再生学)
- 田中純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 ・疫学・疾病制御学)
- 安部正敏(医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック )
- 田中康仁(奈良県立医大・整形外科)
- 安藤亮一(武蔵野赤十字病院)
- 谷口雅彦(聖マリア病院)
- 森田隼人(シャボン玉石けん株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成27年度に透析患者の四肢切断回避を提案し、下肢末梢動脈疾患指導管理加算の保険収載を受けることが出来た。欧米では透析に先んじて施行されている腎移植について足病への影響についての研究を行い、下肢・足病重症化予防に繋げた。平成28年度に作製した「医療従事者のための足病治療・ケア小冊子」の成果調査としてアンケート調査と併せて下肢末梢動脈疾患指導管理加算の2年目の成果も調査する
研究方法
課題1. 医療従事者のための足病治療・ケア小冊子」により足病の普及・浸透の調査研究と併せて、下肢末梢動脈疾患指導管理加算の普及度調査を行う。
課題2. A 免荷(TCC)による外来治療 免荷を考えた外来の足病・潰瘍治療法の確立を行う
B 壊死組織を伴う組織の血行再建術後、または感染を伴う創における創傷管理、洗浄を含む治癒促進法の検討を行う。
C 血流評価測定を行う。課題3. 早期リハビリ介入の連携の評価を行う。課題4. 腎移植患者の足・下肢病の状態、重症化状態への進行状態の実態比較を行う。
課題3. 早期リハビリ介入の連携の評価を行う。課題4. 腎移植患者の足・下肢病の状態、重症化状態への進行状態の実態比較を行う。
課題2. A 免荷(TCC)による外来治療 免荷を考えた外来の足病・潰瘍治療法の確立を行う
B 壊死組織を伴う組織の血行再建術後、または感染を伴う創における創傷管理、洗浄を含む治癒促進法の検討を行う。
C 血流評価測定を行う。課題3. 早期リハビリ介入の連携の評価を行う。課題4. 腎移植患者の足・下肢病の状態、重症化状態への進行状態の実態比較を行う。
課題3. 早期リハビリ介入の連携の評価を行う。課題4. 腎移植患者の足・下肢病の状態、重症化状態への進行状態の実態比較を行う。
結果と考察
課題1.大浦研究班が潰瘍の治療の重要性を強調し、歩く・立つを“final gole”とすると働きかけたことが、潰瘍の治療症例が増加した原因である。血管内治療・バイパス手術・創傷治療を受けた人数が2016年に増加している。2015年大浦研究班が活動したことが大きい。また、大浦研究班が出来、下肢温存の重要性が強調されたが、下肢温存の効果が現れるのは、アンケート調査でわかるように4~5年先と思われる。
課題2. 一般的に創傷治癒期間と創傷の大きさは比例するが、今回の検討では有意差はないものの、免荷の影響の創傷治癒期間に与える影響が大きいことが示された。
B)ケアミックス病院での年間慢性創傷の発生数は51件であり、内訳は21件が持ち込みであり、30件が院内発生であった。 転帰は21件が治癒、退院1件、死亡退院6件であり、退院(死亡を含む)を除く治癒率は48.8%であり、期間中の発生率は2.25%であった。
無添加石けん(無添加ボディソープ)を用いてシャワー、温浴、入浴時に洗浄した患者は9件であり、平均年齢78.2歳であり、創傷内訳は大転子部褥瘡4件、下肢創傷3件、大転子褥瘡2件であった。4週までの週3回の洗浄処置により、創状態は5件改善、3件治癒、1件不変であり不変例は下肢と大転子の同時創傷でありそうな状態であった。
C)LSFGにおいて、虚血の指標となる値はBSSPであることが単施設研究で明らかにされ、多施設研究によりバイパス及び血管内治療でも術直後から有意にBSSPが上昇していることを確認できた(バイパスについては単施設研究でも実証済)。バイパスでは術直後から再建部位に関わらず足背と足底の双方を改善させる結果であったが、血管内治療では足底中心に血流改善が認められた。アンジオソームに基づいた解析では、必ずしもアンジオソームが適応されるとは言えず、足部動脈開存状態や透析などの背景因子の介入の可能性が考えられる。
課題3.研究登録完了者は60名(介入群 32名、対照群28名)であり、群間に有意差を認める項目はなかった。対照群に割り付けられた28名中、4名は本人の希望または下肢機能の低下により創傷治癒前にリハ開始となった。
入院日数(中央値)は介入群39.4日、対照群38.5日と群間に有意差はみられなかった。医療費(中央値)についても介入群111,583円、対照群105,222円と群間に有意差はみられなかった。
課題4.今回、生体腎移植症例における足病の実態調査を行った。その結果、足病の発生、増悪の頻度は5.1%、足病の治療介入の頻度は3.8%の結果を得た。透析患者約1100肢のデータから、糖尿病透析患者(約400肢)における治療介入が必要な足病の頻度は8%との報告があることから、腎移植患者において足病の発生頻度が低い可能性がある。すなわち透析より腎移植を行うことで足病の発生が改善される可能性は十分高い。
課題2. 一般的に創傷治癒期間と創傷の大きさは比例するが、今回の検討では有意差はないものの、免荷の影響の創傷治癒期間に与える影響が大きいことが示された。
B)ケアミックス病院での年間慢性創傷の発生数は51件であり、内訳は21件が持ち込みであり、30件が院内発生であった。 転帰は21件が治癒、退院1件、死亡退院6件であり、退院(死亡を含む)を除く治癒率は48.8%であり、期間中の発生率は2.25%であった。
無添加石けん(無添加ボディソープ)を用いてシャワー、温浴、入浴時に洗浄した患者は9件であり、平均年齢78.2歳であり、創傷内訳は大転子部褥瘡4件、下肢創傷3件、大転子褥瘡2件であった。4週までの週3回の洗浄処置により、創状態は5件改善、3件治癒、1件不変であり不変例は下肢と大転子の同時創傷でありそうな状態であった。
C)LSFGにおいて、虚血の指標となる値はBSSPであることが単施設研究で明らかにされ、多施設研究によりバイパス及び血管内治療でも術直後から有意にBSSPが上昇していることを確認できた(バイパスについては単施設研究でも実証済)。バイパスでは術直後から再建部位に関わらず足背と足底の双方を改善させる結果であったが、血管内治療では足底中心に血流改善が認められた。アンジオソームに基づいた解析では、必ずしもアンジオソームが適応されるとは言えず、足部動脈開存状態や透析などの背景因子の介入の可能性が考えられる。
課題3.研究登録完了者は60名(介入群 32名、対照群28名)であり、群間に有意差を認める項目はなかった。対照群に割り付けられた28名中、4名は本人の希望または下肢機能の低下により創傷治癒前にリハ開始となった。
入院日数(中央値)は介入群39.4日、対照群38.5日と群間に有意差はみられなかった。医療費(中央値)についても介入群111,583円、対照群105,222円と群間に有意差はみられなかった。
課題4.今回、生体腎移植症例における足病の実態調査を行った。その結果、足病の発生、増悪の頻度は5.1%、足病の治療介入の頻度は3.8%の結果を得た。透析患者約1100肢のデータから、糖尿病透析患者(約400肢)における治療介入が必要な足病の頻度は8%との報告があることから、腎移植患者において足病の発生頻度が低い可能性がある。すなわち透析より腎移植を行うことで足病の発生が改善される可能性は十分高い。
結論
日本の医療は足病医がいなく100年前より足病医がいて足病の治療を積極的に行っていた諸外国に比べると、足病周辺の環境整備については100年の遅れがみられていた。足病の血行再建の医療技術は日本においても遅れは取っていないが義肢、義足や靴などは遅れていた。大浦研究班の活躍により、前記の“今後の展望”に記した様に6つの学会の合意を取り付けたことは大きくこれを持って足病治療の普及・発展は大きく前進した。
公開日・更新日
公開日
2019-05-16
更新日
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