アレルギー疾患における標準治療の普及と均てん化に向けた研修プログラムの開発研究

文献情報

文献番号
201712003A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患における標準治療の普及と均てん化に向けた研修プログラムの開発研究
課題番号
H29-免疫-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部・アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博久(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 研究所)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)
  • 藤澤 隆夫(国立病院機構 三重病院)
  • 赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター アレルギー科小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国を含む先進国では、約半世紀前からアレルギー疾患が急増し、今や国民の半数近くが何らかのアレルギー疾患を経験する時代になっている。なかでも、アトピー性皮膚炎はアトピーマーチの起点に位置する疾患であるが、アレルギー疾患の中では薬剤の貢献度が高いにも関わらず、治療満足度が低い疾患であり(平成27年度国内基盤技術調査報告書「60疾患の医療ニーズ調査と新たな医療ニーズⅡ」分析編2016年)、医師や医療スタッフへの教育による診療水準の向上と患者満足度の改善が期待できる疾患である。食物アレルギーに関しては、根拠のない指導をしている専門医が多いという調査結果が平成25年度のアレルギー疾患対策の均てん化に関する研究(研究代表者:斎藤博久)により明らかとなり、日本アレルギー学会は専門医教育の改善に努力することとなった。そこで、本研究はアレルギーマーチの起点となるアトピー性皮膚炎と問題の多い食物アレルギーの診療の改善を中心にアレルギー疾患診療の水準を向上させ均てん化を推進するための医師および医療スタッフの教育と効果測定を目的とするプログラムを開発する。
研究方法
班員が全国各地方の医師会などで行う講演への参加者を対象に、アレルギー疾患の診療スキルの向上に期待される情報提供の内容についてアンケートを行った。
国立成育医療研究センターでは数年前に開始した全国の小児科専門医向けの2週間短期教育研修プログラムを平成29年度にも施行し10名が参加した。また、多施設共同臨床研究PACI研究の担当医師向けの1日研修コースを開催した。
小児アレルギーエデュケーター(PAE)によるアトピー性皮膚炎患者への治療初期の患者教育の効果に関する研究を行い、3施設において実施する体制を構築した。
アレルギー非専門医でも「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」を簡便かつ的確に作成できる支援プログラムの開発に着手し、管理指導表の問題点について、医師と学校の教師に対して三重県、岡山市、鹿児島県の教育委員会の協力を得てアンケートによる実態調査を行った。
若手小児医師に対する実践的教育セミナーを行った。
結果と考察
班員が全国各地方の医師会などで行う講演への参加者を対象に、アレルギー疾患の診療スキルの向上に期待される情報提供の内容についてアンケートを行った。結果、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の診療については困っているという回答が多く、気管支喘息に関しては特に年長の医師では困っていないとの回答が多かった
国立成育医療研究センターでは数年前に開始した全国の小児科専門医向けの2週間短期教育研修プログラムを平成29年度にも施行した。スキルの向上と高い満足度を実現した。また、多施設共同臨床研究PACI研究の担当医師向けの1日研修コースではプロアクティブ療法や実施方法の理解に向上が認められた。
小児アレルギーエデュケーター(PAE)によるアトピー性皮膚炎患者への治療初期の患者教育の効果に関する研究を行い、3施設において実施する体制を構築し、平成29年度末で51例がエントリーし、終了している。
アレルギー非専門医でも「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」を簡便かつ的確に作成できる支援プログラムの開発に関しては、管理指導表の問題点について、医師と学校の教師に対して三重県、岡山市、鹿児島県の教育委員会の協力を得てアンケートによる実態調査を行い、99名の小児科医師より回答を得、教師については、学校での対応について困っていると答えた割合は食物アレルギーで40%程度、喘息やアトピー性皮膚炎で20%程度みられた。若手小児医師に対する実践的教育プログラムには68名(平均年齢31.6才)が参加した。セミナー終了直後の満足度は高く、学習評価では基本的診療スキルへの理解度が大きく向上した。
実地医家からのWebsiteや動画などによる教育研修プログラムのニーズがあり、複数のSiteにアップされている既存のプログラムの活用や新規作成を検討する必要がある。また、専門施設での短期教育研修や若手向けのセミナーには確実な教育効果が認められており、さらなる普及が望まれる。
また、非専門医向けのアレルギー管理指導票作成プログラムの開発やメディカルスタッフを活用した患者教育の充実も膨大な数の患者の診療における診療水準の均てん化には貢献が期待される。
結論
医師向けに様々なレベルの多様な教育研修ツールの開発と直接的な教育研修の機会を設けること、非専門医やメディカルスタッフの活用などを推進することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2019-05-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201712003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,419,550円
人件費・謝金 2,841,554円
旅費 701,742円
その他 1,160,937円
間接経費 1,846,000円
合計 7,969,783円

備考

備考
研究代表者大矢:余剰金30217円については予定よりも物品を安価にて購入できたため差異が生じた。
研究分担者藤澤:不足金444円については自己負担とした。

公開日・更新日

公開日
2019-05-07
更新日
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