小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究

文献情報

文献番号
201711106A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-055
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児内科学)
  • 大野 聖子(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
  • 住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター)
  • 岩本 眞理(済生会横浜市東部病院こどもセンター)
  • 野村 裕一(鹿児島市立病院 小児科)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健常小児と遺伝性不整脈患児のホルター心電図、終夜睡眠ポリグラフィー検査を行い、心電図指標(QT時間、心室不整脈出現)と自律神経機能、脳波・睡眠深度の解析から、遺伝性不整脈疾患の睡眠中症状出現予測因子を決定する。遺伝学的検査を含めた患児情報から睡眠中突然死予防のための治療的介入指針を作成する。
研究方法
1. QT延長症候群乳児の夜間睡眠中の自律神経活動とQT時間に関する研究;治療開始前のQT延長症候群(LQTS)乳児 11名 (平均12±3週)、月齢をマッチさせた健常乳児11名 (12±8週) とした。健常児は同一コホートで、乳児期後半 (40±6週) にもデータ収集を行った。夜間睡眠中、昼間睡眠中、昼間活動中のQTc値と自律神経の日内変動を解析した。2. 小児の睡眠深度、脳波、自律神経活動、QT時間に関する研究;患児15名および年齢・性を一致させた健常児15名を目標にする。外来において、睡眠中の心電図と脳波を同時記録する。最終的に、睡眠深度、脳波FFT解析、自律神経活動、QT時間の相互関係を解析し、睡眠中突然死の risk factors を解明する。3. 乳児突然死症候群および早期発症先天性QT延長症候群(LQTS)から検出されるLQTS関連遺伝子変異に関する研究;日本における全国調査と文献上報告された乳児早期発症LQTS群とmolecular autopsyにより診断された乳児突然死症候群(SIDS) 群で遺伝学的変異部位を比較検討した。4. 次世代シークエンサーを活用した特発性遺伝性不整脈症候群患者におけるコピー数多型の同定;遺伝性特発性不整脈症候群の中で、従来法で遺伝子変異が検出されず、家族歴や病態から遺伝子変異が強く疑われる患者63人のコピー数多型(Copy Number variation, CNV)を検討した。5. QT延長症候群の睡眠中のQT-RR関係に関する研究;遺伝学的変異があり、Holter心電図が記録されていた24例について後方視的にQT-RR関係を検討した。6. 小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究;対象は遺伝性不整脈患児(20歳未満)のホルター心電図検査と運動負荷心電図およびアドレナリン負荷テストを施行する。7. 小児期不整脈の予後に関する研究;K市学校心臓検診を受けた小学1年生81,844人と中学1年生88,244人を対象に、後方視的に検診で初めて心室期外収縮を診断された学童の予後の調査を行った。
結果と考察
1. 乳児期早期のLQTS乳児の夜間睡眠中のQT時間は昼間睡眠中および昼間活動中のQT時間より有意に長く、自律神経機能は同時期健常児より夜間睡眠中は副交感神経機能の低下、障害された交感副交感神経バランスを示していた。健常乳児でも、乳児期前半は乳児期後半に比較すると、副交感神経機能低下、自律神経imbalance状態であった。2. 簡易脳波計システムを用いることにより、自宅での睡眠中の睡眠深度、脳波FFT解析、自律神経、QT時間の相互関係解析が可能と考えられた。3. 早期発症LQTS群とSIDS群の間でLQT2、LQT3関連遺伝子の変異部位はオーバーラップが少なかった。原因として、別の集団をみている可能性があること、SIDSの発症には、LQTS関連遺伝子変異に加えて環境因子等、他の因子の役割が重要であることなどが考えられた。4. 63名中4名にCNVを同定した。遺伝性特発性不整脈症候群の原因として、コピー数多型は重要であり、次世代シークエンサーデータでも検出が可能である。5. LQTSに対するホルター心電図でのQT-RR関係を検討することは、LQTSでの夜間心事故発生を予測する一つの因子になることが推測された。6. LQTSでも、チャネル異常の部位によって睡眠中の補正QT時間 (QTc) のパターンは異なることが予測された。7. 学校心臓検診で診断されるVPCの予後は一般的に良好であったが、一部に悪化する例もあった。学校心臓検診心電図でVPC数が多い場合は注意深い経過観察が重要である。
結論
初年度の研究において、LQTS乳児の乳児期前半にQT時間の著明な延長と自律神経imbalanceが同時に存在していることが、LQTS関連症状発生に関係していると考えられた。乳児期早期発症LQTSとLQTS関連遺伝子を持つSIDSでは遺伝学的差が認められた。Holter心電図によるQTRR解析と自律神経機能解析、睡眠中脳波による睡眠深度、睡眠脳波解析、遺伝学的検査により、遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死の危険因子、危険時刻の決定が可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711106Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,897,189円
人件費・謝金 227,630円
旅費 989,472円
その他 487,458円
間接経費 1,400,000円
合計 7,001,749円

備考

備考
自己資金1748円、預金利息1円がある為

公開日・更新日

公開日
2019-02-14
更新日
-